在仏25年でも迷う、フランス流の数の数え方

数字をモチーフにしたキャンドル

アン・ドゥ・トロワ〜♪踊りましょうか〜♪
そう、あの伝説のアイドルグループ、キャンディーズの人気曲『アン・ドゥ・トロワ』でございます。皆さま、3人のうちどなたがお好きでしたか?ええっ…?キャンディーズをご存じない、ですって!?──失礼、話が逸れてしまいましたわ。昭和の時代、この曲をきっかけに、フランス語の「1、2、3」を覚えた方も多かったのですわよ。
さて、まずは下の表をご覧くださいませ。

フランス語の1〜20の数え方と読み
0:zéro(ゼロ)
1:un/une(アン/ユヌ)
2:deux(ドゥー)
3:trois(トロワ)
4:quatre(カトル)
5:cinq(サーンク)
6:six(スィス)
7:sept(セット)
8:huit(ユイット)
9:neuf(ヌフ)
10:dix(ディス)
11:onze(オーンズ)
12:douze(ドゥーズ)
13:treize(トレーズ)
14:quatorze(カトルズ)
15:quinze(カーンズ)
16:seize(セーズ)
17:dix-sept(ディセット)
18:dix-huit(ディズュイット)
19:dix-neuf(ディズヌフ)
20:vingt(ヴァン)

このようにフランス語では1〜16、20は独立していて、17〜19は「10-7」「10-8」「10-9」といったように数字を組み合わせています。そのあとは、vingt(20:ヴァン)trente(30:トラーント)quarante(40:カラーント)cinquante(50:サンカーント)soixante(60:ソワサーント)のあとに、1の位の数字を読めばOK。1の位が1になるときだけ「+ et un(エアン)」が使われますが、そのほかは規則性があるためすぐに覚えられます。

なぁにカンタンじゃない!とおっしゃる方、マカロンのごとく甘いですわよ。70以降の数字はかなりややこしくなるのです。

数字の考え方 例)
70〜79 60+○(60にいくつ足せばいいか)
※60=sonixante・ソワサーント
70:soixante-dix(ソワサーントディス 60+10)
71:soixante-et-onze(ソワサーントオーンズ 60+11)
80〜99 4×20+○(4×20にいくつ足せばいいか)
※4=quatre・カトル
20=vingt(s)・ヴァン
80:quatre-vingts(カトルヴァン 4×20)
81:quatre-vingt-un(カトルヴァンアン 4×20+1)
83:quatre-vingt-trois(カトルヴァントロワ 4×20+3)
91:quatre-vingt-onze(カトルヴァンオーンズ 4×20+11)

え?quatre-vingt-un(81:カトルヴァンアン)だけ un の前に et がないですって?さすが!鋭いですわね。そう、これだけは例外ですの。ちなみに、最後の s についてはquatre-vingts に他の数字が続かないときだけあてはまります。あーややこしいったら!理論がわかってしまえばさほど難しくはないのですが、どうしてこうも複雑に考えるのでしょう。

フランスで小切手を切るときには数字とアルファベットを記載するのですが、在仏25年が経った今でも「sがつくのかしら?」「スペルは間違っていない?」と不安になります。そんなときに役立つのが、ジャンビエ特製参考書でございます(下写真)。間違えると大変ですから、パラパラとめくりながら数字とアルファベットを確認するのがお決まりですの(もうボロボロなんですけどね)。

ジャンビエ特製参考書 小切手のために最低限必要な数字

同じフランス語でも使う国によって数え方が異なる

不思議なことに、同じフランス語であってもベルギーやスイスでは一般的な10進法が用いられます。

フランスでのフランス語 ベルギーやスイスでのフランス語
70 60 + 10:soixante-dix(ソワサーントディス) septante(セットントゥ)
80 4 ×20:quatre-vingts(カトルヴァン) ベルギー:octante(オクトントゥ)
スイス:huitante(ユイトントゥ)
90 4×20 + 10:quatre-vingt-dix(カトルヴァンディス) nonante(ノノントゥ)

ベルギーやスイス在住のお友達には「こっちの数え方の方が使いやすいわよ」と言われますが、一度フランス流の数え方に慣れてしまうと、フツーの数え方に違和感を感じてしまうものですわね。だって、huitante(ユイトントゥ)はトントントン~、nonante(ノノントゥ)はノンノンノン~ってまるで音楽みたいに聞こえるじゃありませんか。……え、そう感じるの、私だけ?

おつりのもらい忘れに注意

ある日のお買い物中、30€のパンを購入して100€を出しましたの。70€のおつりだとすぐに計算できたのですが、問題はおつりの出し方ですわ。店主は最初に10€を3枚、その後20€を1枚、そして最後に残った20€をゆっくりと1枚渡してくれましたの。このように、フランスではおつりを一度に手渡すのではなく、1枚1枚順々に出されるケースが多く、慣れていないために途中で去ってしまう旅行客もちらほらいますわ。

日本人は引き算でおつりを計算しますが、フランス人は30€にいくら足したら100€になるかと考えているから、このような渡し方なんですの。フランスに来たばかりのころは「フランス人って算数が苦手なのね」なんて思っていましたが、どうやら根本的な計算の仕方がちがうようですわ。

たとえ最後の1枚がなかなか出てこなくても、「ああ、これで終わりか。私の計算違い?」とカンタンにその場を去ってはいけませんわ。なかには故意にゆっくり出して客が去っていくのを待つ店員もいるので、「わたくし、計算が得意ですの。ほら残りを出してちょーだい」と眼を光らせておきましょう。

日本式の暗算はフランス人にとっては難しい

数の数え方だけでなく、買い物中によく使う「○パーセント引き」の考え方もフランスと日本では大きく異なります。小学生で九九をマスターする私たち日本人にとっては「20%引き=0.8をかける」になりますが、フランス人は最初に20%分を計算したあと、100%の値段から引き算をします。もちろん理論は同じですが、日本式の方がパッと計算できますわよね。

日本式の計算法を教えてあげたこともあるのですが、同僚は「素晴らしい!でもこっちの方が難しい考え方だね」と困惑した表情を浮かべていました。結局のところ、慣れた方法でやるのがイチバンなのでしょうね。

数字の数え方もおつりの出し方も日本とはずいぶん異なるフランス。わざとおつりを渡さない不届きものもいるので、店員の言動を鵜呑みにしてはいけません。お会計中は眼をキリッと開いて、賢い数学博士のような表情を作りましょう。そうそうお上手ですわよ。くれぐれもおつりのもらい忘れにはお気をつけくださいませ。

今宵はこれでおしまい。
Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。

写真提供:Mme.JM