5月1日には幸せを呼ぶスズランを
5月1日はフランスで「労働祭」(Fête du Travail:フェット・デュ・トラヴァイ)と呼ばれ、英語圏でいうメーデー(労働者の日)と同じもので、この日は祭日になりますわ。別名は、スズランの日(Jour du Muguet ジュール・デュ・ミュゲ)。幸運をもたらす花「スズラン:Muguet」を大切な人にプレゼントする習慣がありますの。
この日は、森で摘んだスズランの販売が特別に認められる日でもありますわ。街頭には「1日スズラン屋さん」が並び、小さな子どもたちも大人たちと一緒になってうれしそうにスズランを売っていますわよ。「キレイなおねえさん、1本買ってくだしゃいな」なんてちびっこ店長から甘い言葉をかけられてはたまりませんわね。つい口元と財布の紐が緩んで大量のスズランを仕入れた私は、友人や家族にそれを配りまくるわけですの…。
ところで、キレイな花には毒があるのがお決まりですわよね。スズランの花と茎にも毒があり、スズランを生けたお水を誤って飲んで中毒死に至ったケースもあるとか…。スズランを手に入れたときはどうぞご用心を。
フランスの母の日はカーネーションではない!
日本では、母の日に赤いカーネーションを贈るのが一般的ですわよね。世界にはさまざまな母の日がありますが、日本はアメリカに習って5月の第2日曜日を母の日にしています。アメリカの母の日「Mother’s Day」の起源は、戦場の負傷兵の衛生改善活動を行ったアン・ジャービスの娘が、1907年5月12日、亡き母をしのんでゆかりのある教会の祭壇に母が好きだった白いカーネーションを飾ったことがきっかけらしいですの。母親の生死に応じて色を区別していた時代もありましたが、現在では赤やピンクなどのカーネーションが定着していますわ。
フランスの母の日は、日本やアメリカとは違うところも多いようですの。たとえば、日にちですわね。フランスでは母の日は5月最後の日曜日ですが、キリスト教の精霊降臨の主日であるPentecôte(ポントゥコット 復活祭から50日目にあたる日)と重なった場合には、6月の第1日曜日に変更されますの。とっても柔軟ですわね!
また、「カーネーションを贈るべき」という考えもなく、世代を問わず幅広く人気のあるバラや旬のスズランのほか、Mère(メール:お母さん)の好きな花を自由に選ぶ人も多いようですわ。
マッチ売りの少女ならぬ「バラ売りのおじさま」も
フランス人は、散歩ついでにふらっと花を買って帰ることも多いものですわ。街には驚くほどたくさんの花屋さんが並んでいますが、きっとそれだけ気軽にお花を贈る文化が根付いているのでしょうね。人生の記念日、バレンタインデー、食事に招かれた日、ときには恋人との仲直りに──フランス人の人生にとってお花は力強い味方ですの。実際に、フランスのレストランで食事をしているとマッチ売りの少女……ではなく、“バラ売りのおじさま”がやってまいりますのよ。
「お呼ばれされたら花束」を習慣に
いろいろとお話ししてきた私ですが、実は「サボテンを枯らした女」と揶揄されるほど植物の栽培が苦手ですの…。そんなわけで、長らく花を贈られることがなかったのですが、2021年のクリスマスにとてもキレイな胡蝶蘭の鉢をいただきましたわ。それを見たダーリンは、「君に植木をあげるなんて勇気のある方だな」とぽつり。なんと失礼な!とインターネットで胡蝶蘭の育て方を研究した結果、2022年には2度咲きに成功し、現在まで美しく咲き誇っていますのよ。
とある研究によると、花のある部屋とない部屋では、花のある部屋の方がストレス時に高まる交感神経の活動が抑えられ、リラックス状態になるのだそう。正直医学的なことはわかりませんが、ご自宅にお呼ばれされたときには相手をイメージした花束を持参するのがマダム・ジャンビエ流ですの。ぜひみなさまも、ケーキやお菓子の代わりにお花をお持ちしてみてはいかがでしょう?
今宵はこれでおしまい。
Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。
写真提供:Mme.JM