ビキニは夏のバカンスを楽しむ必須アイテム

年に5週間程度の有給休暇が法律で保障されるなど、フランス人にとってバカンス(長期休暇)はカルチャーのひとつ。特に夏のバカンスでは、多くの人が長期の休暇をとり、太陽が燦々と照りつけるビーチやプールのあるリゾート地で過ごします。なかでもモロッコ、スペイン、イタリア、ポルトガルなどの海外リゾート地が人気ですが、ここ数年はコロナ禍の影響やエコツーリズムの人気もあり、国内旅行の需要も伸びつつあるようです。そんな夏のバカンスの計画を考えはじめる頃、デパートやショップなどには、毎年“あるもの”が店頭を華やかに彩ります。紳士も淑女も思わず目がいってしまう“ビキニ”でございます!

私はフランスに来る前までは、ビキニを着るなんて想像したこともありませんでした。でもこの25年の間に10着以上のビキニを購入して使用しておりますの。ビキニを着る自信がついた?Non non……実はフランスでは夏のバカンスを楽しむ上でビキニはマストアイテム。最初の頃は戸惑いながら購入していましたが、今では自分が気に入るビキニを買うようになり、ビキニを楽しむようになったのございます。

ドクターから「ビキニ着られるからよかったね!」

実は私はこれまで3回も手術を受けておりますの。それぞれ事情は異なりますが、最初の手術は子宮筋腫の手術。あまりに大きい筋腫だったため、お腹を開かなくてはいけない手術となりました。その手術の執刀をしてくれた産婦人科のイケメンドクターが、最初の検診のときにこんな言葉をかけていただきました。

「おお、私はなんて素晴らしいクチュリエなのだ!これでビキニを着られますよ。ぜひその姿を見せてくださいね」

最初は「なに?誘われているの?クチュリエ?貴殿の裁縫のご趣味なんて興味などございませんわ。それにビキニなんて、おいやらしい…」と思いました。でもとんだ勘違い。クチュリエとはフランス語で「縫い職人」のこと。ドクターはご自身の腕の良さを称賛すると同時に、傷跡を気にする私の心をさりげなく気遣ってくれたのです。なんて小粋な。そして傷口を見るとビキニラインより下だったこともあり、それまでビキニなんて恥ずかしくて着たことがなかったけれど、ちょっとビキニを着てみようかなという気持ちになったのでございます。

もう術後何年も経っていますが、今では傷跡はほぼ見えません。すごい!私のドクターはたしかに素晴らしいクチュリエだったのです!!

タラソテラピーでビキニ初体験

私のビキニ初体験は、テラピーでした。

フランスは、タラソテラピー(海洋療法)大国でもあります。ぶどうやその皮などを利用したビニョテラピーなども有名ですが、旅行代理店やテラピーセンターでは「必ずビキニを持参するように」と指示があります。海草パックやぶどうの搾りかすのパックなどはそれらを使用して施術してもらいますが、ジェットシャワーやぶどうのお風呂、ジャグジーのようなテラピーでは直接肌に刺激を与えたほうが効果的なため、ワンピースよりビキニのほうがよいとのこと。

かくして、イケメンドクターのお言葉も手伝って、人生初のビキニを買うことになりました。

最初は紳士の目を気にしてドギマギしておりましたが、たしかに施術を受けると、ビキニのほうが楽だし、何より周囲を見渡すと体形や年齢など関係なく、マドモアゼルもマダムもおばあちゃまも、さらにお子さままでみんなビキニを着てバカンスを楽しんでおります。

そう、フランスはビキニ王国。ビキニは日常的な光景で、夏のバカンスには欠かせないアイテムなのでございます。

初夏の街に出かけると、老夫婦で旦那様が奥様のビキニを選んでいらっしゃる姿をお見かけします。ビキニは、老夫婦にとってもふたりの時間を楽しむための、大切なものなのでしょう。こんな愛おしい光景が日常にあるフランスって、ステキでしょ?

ビキニが人生を豊かにする!

私の3度目の手術は皮膚移植をしなければならない大きなものでした。執刀医は美人ドクターでしたが、ここでも丁度ビキニラインの下のお肉がありそうなところの皮膚をとって移植してくれました。そのときも、先生はこんな言葉をかけてくれました。

「よかったですね、今年も何も気にせずビキニを着てバカンスを楽しめますよ」

もちろん個人差はありますが、フランス人にとってビキニは人生を豊かにする大切なエッセンスなのです。もしショップでビキニを見かけたら、購入されてみてはいかが?種類も豊富で、派手かなと思うかもしれませんが、ご自分が気に入ったものがあれば、ぜひ遠慮なく、試着室(Cabine d’essayage)でトライしてみてください!

« Le moi est une cabine d'essayage, on s'y enferme avec son miroir pour y choisir son image. »
Jean-François Comte


自己というのは一種の試着室のようであり、自分のイメージ(例えば、こういうところが良いところとかこうありたいとか)を選択するために、自分自身を自分のなかの鏡で映しだそうとします。
ジャン・フランソワ・コンテ


今宵はこれでおしまい。
Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。