メトロはオーディションに受かった芸人の宝庫

地下鉄で演奏をするミュージシャン

1日1,000万人もの人が利用するパリのメトロ。乗客数もとんでもないのですが、その膨大な数の観客を魅了しようと地下鉄で演奏をするミュージシャンも約1,000人いるそうですわ!そして、その半数がRATP(パリ市交通公団)公認のミュージシャンですの。

日本では想像できませんが、「メトロ」や「RER(エール・ウ・エール:高速鉄道)」に乗っていると車内で歌を歌ったり、アコーディオンを弾いたり、ダンスを踊ったりとさまざまなパフォーマンスに出くわします。驚くことに、みなさま大変お上手なんですの!そういえば同僚と喧嘩別れしてメトロに乗ったときに、アコーディオンの音色に心をほぐしてもらったこともありましたわ。ムッとした気持ちを忘れて鼻歌を歌っている自分に気付き、思わずいつもより多めにチップを渡したのでございます…!

日本にはチップの習慣がないので少しドキドキするかと思いますが、良いなと思った瞬間があればぜひ渡してみてくださいませ。もちろん強制ではありませんし、金額も決められていないのでご安心を!

パリのメトロで夢への切符を手にいれる人も

車内だけではなく、駅構内や乗り換えの廊下などでも、木琴やアコーディオン、バイオリン、フルート、チェロ、コーラス、オーケストラ、カラオケなど、さまざまなパフォーマンスが披露されていますわ。ソロもグループも、そしてプロ顔負けの才能を持つ方もいれば「どうぞマイクをお貸しなさい、代わって私が十八番を披露いたしますわ!」と思ってしまうようなレベルの方も……(ごめんあそばせ!)。でもやっぱり、思わず立ち止まってしまうほど上手な方の胸元にはバッジが提示されていますの。

このバッジはメトロ公認のオーディションに合格している証拠で、彼らはメトロから正式に演奏の許可を得ている芸術家なのです。許可証を持たない不法演奏者もいますが(実際に捕まっている場面にもよく遭遇します)、大抵の人たちはちゃんと取得した許可証を掲げてパフォーマンスしていますわ。

毎日定期的に演奏をして生活の糧にしている人、コンサートのオフの日を利用してたまに来る人、定年退職後の趣味としている人──目的や想いもいろいろですの。中にはメトロで演奏中にレコード会社の人にスカウトされてデビューした音楽家や、オランピア劇場を借り切って一大コンサートを企画したミュージシャンも!パリのメトロからはじめるビッグドリームもあるのかもしれませんわね。

危ない!痛い!メロディが鳴ったら絶対に電車にかけこむなかれ

パリ地下鉄の扉部分にある黄色い注意書き

日本と同じく、最近はパリのメトロでも線路への落下や侵入を防ぐために「二重扉」が採用されていますわ。安全性には一役買っていますが、注意しなければならないポイントも…。とにかく扉が瞬時に閉まるのです!駅に電車が到着すると数秒後には自動で電車の扉が閉まり、わずか1〜2秒の差でホームの扉が閉まりますわ。混雑していたり、荷物が多くてモタついていてもおかまいなし。乗り遅れるとあっという間に電車の扉にぶつかって挟まれ、その後ホームの扉にふたたび挟まりますのよ…!

日本では発車メロディが鳴ったあとに駅員さんが複数回アナウンスまでしてくれますが、パリのメトロでは発車メロディが鳴っているときにはもう扉が閉まりはじめていますの。この違いを認識していない観光客は、間に合うだろうと飛び乗ってしまうのです…。自動で閉まると知らない方も多く、「え、なんで閉まったの!?痛い!いったーーーーい!」なんて驚いている日本人の方もよくお見かけしますわ。かくいう私も数年前に挟まれたひとりですの…。痛いですよわね。わかります、わかりますとも。

とあるスペインからの観光客の方は、強引に突っ込んで流血騒ぎになっていましたわ…!いくらラテンのアツ~い血が流れてても、サッカー選手でも、猪突猛進タイプでも、突っ込んじゃダ・メ・ダ・メ!ですわ!本当に危険なので、日本でもフランスでも電車へのかけこみ乗車はおやめになってくださいね。

ちなみに、パリ地下鉄の扉部分には黄色い注意書きが貼られていて、「Ne monte pas après le signal sonore, tu risques de te faire très mal!(出発のアラームが鳴ったら乗車しないでください。そうでないと、とても痛い目にあう可能性がありますよ) 」と警告されていますわ。アラームがなったら無理に乗車はせず、次の電車をお待ちくださいね。

ドアに挟まれたりスリにあったりしなければ、パリの地下鉄もRERも便利で面白いですわよ。ちなみに前編でご紹介した「Navigo(ナヴィゴ)」はパリ近辺のバスでも使えますわ。バスのほうが複雑で難しいのですけれど、目的地に近い場合もあるので乗ってみてもいいでしょう。パリの綺麗な景色を見ながら、移動もできますしネ。メトロやバスをうまく利用して、充実したパリ旅になさってくださいませ。

今宵はこれでおしまい。
次回は甘~くて見た目もとってもかわいらしい、フランスのお菓子のお話でもさせていただこうかしら?
Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。

写真提供:Mme.JM