2月2日はフランス人にとって「クレープの日」

2月2日のChandeleur(シャンドルール)は、日本語で「聖燭祭(せいしょくさい)」という、神殿奉献を記念するキリスト教の祝日です。フランスでは“クリスマスから計算して何日”というお祝いや祭日が多く、シャンドルールはちょうど40日後にあたります。フランスに来たばかりの頃は日本とちがう祭日の数え方に慣れず、何度も指折り数えたものでした。そんな2月2日、フランスでは家族や友人たちとクレープを食べてお祝いをする伝統がございますの。

起源はローマ時代にまで遡ります。当時のローマ人には2月に羊の神さま(パン神)を祭る伝統があり、信者たちはろうそくやたいまつを片手に一晩中街を歩いてお祝いをしたのだとか。その後キリスト教がローマに広まったことで、キリスト教の伝統行事として引き継がれたようです。まぁ、なんて歴史深いのでしょう。ちなみに、シャンドルールという名前は、ローマ人が持っていた「chandelle(シャンデル):ろうそく」が由来だといわれていますわよ。

シャンドルールになぜクレープを食べるのかというと、教皇ゲラシウス1世が巡礼者にクレープを振る舞った説や、黄金色で丸い形をしたクレープがキリストの戒厳を象徴する光や太陽を連想させる説などいろいろありますわ。なにはともあれ、フランス人の脳裏には「2月2日だ、クレープ食べなきゃ」が刻み込まれているのですね。

フランスのクレープといえば、そば粉を使ったブルターニュ地方の郷土料理「ガレット」がお馴染みですわ。日本でよく見かける生クリーム盛り盛りのクレープとは異なり、卵やハムを入れたり、チョコレートやはちみつ、お砂糖などをかけたりしていただきますの。シャンドルールに家族や友人と食べるガレットはなによりのご馳走ですのよ。

イースター(復活祭)には街中にチョコレートが並ぶ

キリスト教徒にとってクリスマスと同じくらい大切な日である「復活祭(イースター)」が近づくと、パン屋さんやお菓子屋さんなどに卵、ウサギ、雌鶏、鐘をかたどったチョコレートや砂糖菓子が並びますわ。

キリスト教徒だけでなく、多くのフランス国民が大切にしているこの日。大人も子どもも「卵探し」に熱中しますの。卵探しとは、庭やベランダ、リビングに卵型チョコレートを隠して子どもたちに探させるイベントのこと。「なんだ子どもの遊びか」なんて侮るなかれ!大人はより見つからない場所に隠し、子どもはより多く食べられるように真剣に宝探しを楽しみますのよ。

2023年の復活祭は4月9日で、翌10日の月曜日も祭日(Lundi de Pâques:ランディ ドゥ パーク)でしたわ。もちろん食いしん坊で甘党な私は、今からチョコレートをいくつ食べられるのか、待ち遠しくてたまりませんの。カロリーが気になるですって?国中がチョコレートに囲まれるイースターにカロリーを気にするなんて、ナンセンスでございますわ!

幸運を呼ぶ「ブッシュ・ド・ノエル」

日本ではショートケーキが主流ですが、フランスのクリスマスには伝統菓子である「Bûche de Noël(ブッシュ・ド・ノエル)」を食べますの。Bûche(ブッシュ)=薪、Noël(ノエル)=クリスマスという名のとおり、雪が積もるクリスマスの薪のイメージですわ。味はもちろん、見た目も大変かわいくてロマンチックですわよね。

ブッシュ・ド・ノエルの由来についても諸説ありますのよ。クリスマス時期にイエス・キリストの誕生を祝して夜通し暖炉に薪を焚べると、その灰が魔除けになるという北欧の言い伝えが由来とする説。また、昔々に貧しい青年が恋人のために薪を贈ったことが由来とする説……などなど。いずれにせよ幸運がキーワードになっているようですわ。こんな風にケーキに込められた願いや起源を調べると、今まで以上にケーキ選びが楽しくなりそうですわね。

‘Faire un gâteau, c'est un jeu d'enfant et un plaisir d'adulte’ -De Craig Claiborne
お菓子を作ろう。子どもには一種の楽しい遊びのひとときでもあり、大人には喜びでもある。
クレイグ・クレイボーン


フランスには、人々の心と体を甘く満たしてくれる伝統菓子がたくさんあります。フランス旅行に訪れた際はもちろん、日本でも今日のお話を少し思い出しながら、楽しく召し上がってくださいませ!

今宵はこれでおしまい。
Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。