「楽しむ」ことを第一に進み続けたヴァイオリン人生。

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ヴァイオリンはいつから始めたのですか?

甚目 和夏さんサムネイル

6歳の頃です。3歳くらいから始める方も多いので比較的遅いスタートでした。

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6歳でも遅いスタートなんですか!ヴァイオリンを始めたのはどのようなきっかけだったのでしょうか?

甚目 和夏さんサムネイル

ピアニストである両親の影響もあって、3歳の頃からピアノを習っていました。同時に、両親の出演するコンサートによくついて行っていました。5歳の時、母がヴァイオリンのピアノ伴奏をするコンサートがあって。初めてヴァイオリンの演奏を聴き、一瞬で好きになりました。すぐに「ヴァイオリンをやりたい!」と両親に伝えていましたね。ヴァイオリンにハマってしまい、ピアノはまもなく辞めてしまいました(笑)。

ヴァイオリンにハマったことを話す甚目 和夏さん
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音楽家であるご両親からは、「将来は音楽の道に」と勧められたことはありましたか?

甚目 和夏さんサムネイル

それが全くなくて。むしろ、「無理に音楽大学(以下、音大)を目指さなくていいんだからね」と言われて育ちました。両親とも、音楽で仕事をしていくことの大変さも身を持って知っていたからだと思います。一方の私といえば、ヴァイオリンを習い始めてから、毎日弾くのが本当に楽しくて。学校の授業中も「家に帰ったらヴァイオリンが弾ける!」と家に帰るのが待ち遠しくて、帰宅後は毎日2時間くらい弾いていました。

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ヴァイオリンは「習い事」というよりも、楽しくてやっているという感覚だったのですね。

甚目 和夏さんサムネイル

はい。私の通っていた教室にはたくさんの生徒がいて。月に1度のグループレッスンや、年1度の合宿や発表会で、年上の綺麗なお姉さんたちが難しい曲を弾いているのを見ては憧れていました。お姉さんたちが弾いている曲を早く弾きたくて、レッスンで習っている曲よりもさらに先の曲をどんどん練習していました(笑)。

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高校は、音楽科のある学校には進まず、普通科に通われたんですよね。

甚目 和夏さんサムネイル

はい。高校の音楽科に入ることを考えたこともありました。ただ、その道を選ぶということは、将来的に音楽を仕事にすることだと思っていて、「好きなことを仕事にしたら嫌いになってしまうかも。その覚悟をしないと」と10代の自分なりに感じていました。中学卒業を目の前に今後の進路を考えた時は、まだその決心がつかなかったんです。楽しい一心で取り組んできたことが壊れてしまうかもしれないという不安もありました。

両親や学校・レッスンの先生に相談したら、「音楽科に進まなかったとしても、大学から音楽を学ぶこともできる。今、決断を焦らなくてもいいんじゃない?」と言ってくれて。高校は、音楽科こそないものの、学内オーケストラがあったり、音楽の授業も充実している学校を選び、この先どんな道にも進める可能性を残しました。

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大学で音楽を学ぶという決心をしたのはいつ頃でしたか?

甚目 和夏さんサムネイル

高校3年生の時です。2年の頃から、音大受験のためのレッスンに通って準備は始めていたのですが、その頃はまだ、一般大学に進む道も考えていました。

転機が訪れたのは、高校3年生で音大のオープンキャンパスに行った時。公開レッスンを見て、「この先生に習いたい!」と思う方に出会いました。その先生はヴァイオリンの細かい技法だけにこだわらず、音楽全体の表現や魅せ方を熱心に指導されていて。音楽のスケールの大きさを感じられるレッスンにとても惹かれました。

「音楽を仕事にする将来」についても決心がついたのは、その時だったと思います。音楽が嫌になる時もあるかもしれないけれど、とにかく挑戦してみたいというワクワクした気持ちが勝っていました。それからは、とにかく受験のことだけを考えて、課題曲を何時間も練習する毎日でした。

「あの先生から学びたい!」という一心だったので、その大学だけしか受験しませんでした。

大学受験について話す甚目 和夏さん
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それは思い切った決断ですね!晴れて念願の大学に現役入学してからはどうでしたか?

甚目 和夏さんサムネイル

とにかく夢のようでした!好きなことを毎日できることや、自分と同じく音楽が好きな人が周りにたくさんいる環境が本当に楽しかったです。
学内には附属高校から進級してきた人や、高校の頃からすでにコンクールで有名になっている人も沢山いました。楽しい一方で、才能に満ち溢れた先輩・同級生・後輩に囲まれて、自分との技術や経験の差、大きな焦りを感じました。

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周囲との差に焦りを感じた時、甚目さんはどのように行動しましたか?

甚目 和夏さんサムネイル

周りが自分よりも上手い人ばかりということは、裏を返せば、お手本になる人が周りに沢山いるということ。とにかくその人たちのことをよく見て、学ばせていただきました。
あとは、卒業後の自分の仕事につながるかもしれないと考え、高校の頃は一切やってこなかったオーディションやコンクールへ参加しました。とにかく、挑戦できるものは全てがむしゃらに取り組みました。

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コンクールでも優秀な成績を修められましたね。

甚目 和夏さんサムネイル

コンクールで受賞したとしても、自分が納得できる演奏でなければ意味がないと思っていて。なので、私は賞をいただくことにこだわりすぎず、自分も納得できる演奏を常に目指していました。それゆえコンクールで自分の力を発揮できず落ち込むことも多々ありました。

ですが、音楽の世界は技術だけでなくつながりを大切にすることも重要で、出会い1つで転機に発展することもあります。「失敗してもいい、それが何かにつながるかもれない」という気持ちで、とにかく次から次へと取り組んでいきました。

甚目 和夏さんの演奏の様子 甚目さんの演奏の様子
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プロのヴァイオリニストを目指す中で大変だったことは何ですか?

甚目 和夏さんサムネイル

大学の頃は、とにかく周りの人の背中を追うことに必死で、辛いと思ったことはありませんでした。大学卒業後、フランスに留学し就職が目前になると、今度はそれまで感じたことのないプレッシャーを感じ、失敗を恐れ、人前で演奏することが怖くなってしまいました。

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壁にぶつかった時、どのように乗り越えたのでしょうか。

甚目 和夏さんサムネイル

救ってくれたのは、フランスでずっと私の演奏を見てくださっていた先生の一言でした。

「お客さまは音楽を楽しみにしている。それなのに舞台に立つ人間が楽しんでいなかったらどうするの?」

先生は、自分がどうすれば演奏を楽しめるかをまず考えるようにしなさい、とアドバイスくださいました。そもそも、私がそれまで音楽を続けてこられたのも、楽しかったから。ただこの一点に尽きます。先生の一言で私は初心にかえり、気持ちがスッと楽になりました。この時の先生の言葉は、今でも私の原動力になっています。

失敗してもいい。それが転機につながることもある。

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フランス留学から日本に戻ってからはどのように活動を始められたのですか?

甚目 和夏さんサムネイル

フランスにいた時も、戻ってからすぐに活動ができるよう、一時帰国の際に色々な方に会ったり、オーディションを受けるなどしていました。帰国後は、先輩からお仕事を紹介していただいたり、ソロでコンサートを開催してみたり。在学中同様、とにかくやれることは全てやりました。
帰国して半年ほど経った頃、「12人のヴァイオリニスト」のオーディションに挑戦する機会をいただきました。

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動き続けたことが縁を生み、ご自身の活動につながったのですね。

甚目 和夏さんサムネイル

とにかく行動していると、そこで出会う方と共通点が見つかったり、新しい活動に結びつくことが多いなと実感しています。

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12人のヴァイオリニストの活動を通して、実現したいことは何ですか?

甚目 和夏さんサムネイル

12人のヴァイオリニストでは、ヴァイオリンのコンサートに初めていらっしゃる方にも音楽を身近に感じていただき、楽しんでいただけるようなステージ作りを行っています。私たちのコンサートが「次はこんな曲を聞いてみたい」「こんなコンサートに行ってみたい」と、音楽に触れるきっかけとなれば嬉しいです。音楽の楽しさや価値を伝えていきたいと思っています。

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演奏の様子を拝見しましたが、本当に楽しそうな様子が印象的でした。

甚目 和夏さんサムネイル

曲の練習はもちろんなのですが、笑顔で弾く練習をしたり、自分の演奏中の動画を見て、楽しんでいただけるような魅せ方ができているか、常に研究しています。

演奏を楽しんでもらえるように魅せることができるか話す甚目 和夏さん
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プロのヴァイオリニストとして活動するための自信はどのようにしてつきましたか?

甚目 和夏さんサムネイル

とにかくできることを一生懸命やったことが良かったと思います。大学入学当初は落ちこぼれだと思っていた自分でも、フランス留学のご縁をいただくことができました。また、大学最後の試験では自身も納得できる演奏ができ、演奏会に出演する機会をいただけたことで、自信につながりました。今は、お客さまからの声にも本当に支えられています。

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印象に残っているお客さまの声はありますか?

甚目 和夏さんサムネイル

初めてクラシックのコンサートに来てくださったお客さまが、毎回楽しみに来てくださるようになって、「今日はここが良かった」と教えてくださるのは本当に嬉しいです。もちろん毎回完璧ではなくて、自分の中で「もっとこうすればよかったな」と思ったコンサートでも、お客さまの喜んでいる様子や声を聞けると立ち直ることができます。

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上手くいかない時もモチベーションを保つ方法はありますか?

甚目 和夏さんサムネイル

1つ目は、常に憧れの存在を持つこと。私の周りにはいつも素晴らしい先生や先輩、同級生、後輩がいて、いつも「この人みたいになりたい!」という気持ちが原動力になっています。
2つ目は、無理をしないこと。私は、上手くいかないなと思ったらヴァイオリン弾かない日もあります。

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プロの方は1日も欠かさず練習しているイメージがありました!意外です。

甚目 和夏さんサムネイル

確かにそういう意味では不安です(笑)。でも、一度楽器から離れてみると、モチベーションを取り戻して、それ以前よりも上回ることが結構あるので、少々時間がかかっても私には必要なことだと捉えています。

20年もヴァイオリンをやっていると、例えば歯を磨く行為のように、ヴァイオリンが生活の一部になっていて、離れてみると何かが欠けている感覚になるんです。それでまた弾きたいと思えることもありますね。

あとは、昔から落ち込んだ時にヴァイオリンをよく弾いていました。ストレスや負の感情を音楽にぶつけていける清々しさもあって。だから、離れていると自然と「楽器を弾きたい!」という気持ちが湧き上がってくるんですよね。結局自分はヴァイオリンに支えられていることに気づいて、戻ってくるんです。

甚目さん愛用のヴァイオリン 甚目さん愛用のヴァイオリン。
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日常で得た感情が音楽に還元されていくこともあるのですね。そのほか、音楽のインスピレーションを得るために心がけていることはありますか?

甚目 和夏さんサムネイル

私は特別に何かをやるということはなくて、日常生活の中からインスピレーションを得ることが多いです。外の景色、アート作品、本、映画、歴史、ドラマ…それらに触れて感じたことが全部そのまま音楽につながっていますね。

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好きだったことを仕事にして、改めてどう感じていますか?

甚目 和夏さんサムネイル

自分のスキルが試される職業なので辛いことも沢山ある一方で、毎日沢山の音楽や人々に出会うことができて、本当にワクワクする毎日です。苦しいことがあっても、音楽が好きだから努力できるし、何度でも這い上がれる。仕事にしてよかったなと思います。

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甚目さんが、今後やってみたいことはなんですか?

甚目 和夏さんサムネイル

クラシックにとどまらないあらゆるジャンルの音楽に携わって行けたらと思っています。お店の中、映画やドラマ、テーマパークなど、音楽は沢山のシーンで日常を支えている身近な存在です。そのことを、演奏を通して伝えられたら嬉しいです。あとは、子どもたちへのヴァイオリンレッスンにもさらに力を入れて、ヴァイオリンに触れる子どもがもっと増えたらいいですね。

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ありがとうございます。最後に、これから新しい挑戦をする若い世代に向けてメッセージをお願いします!

甚目 和夏さんサムネイル

少しでも興味を持ったことにどんどんチャレンジして、たくさんの経験をしてください!例えその道に進まなかったり、辞めてしまったことでも、予期せぬところで自分の助けになるときが来るはずです。
また、人と人とのつながりは予想もしない転機を与えてくれます。出会った人とのつながりを大切に、「これだ!」と思うものを見つけて欲しいと思います。