ロマンチックに感動!心が動いた、その衝撃をビジネスへとつなげてゆく。

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森本萌乃さんは、「Chapters bookstore」を2021年にグランドオープンされました。お一人で立ち上げられて、起業準備が大変だったのでは?

森本 萌乃さんのサムネイル

「起業は難しそう」というイメージがありますが、やってみると超簡単なんですよ。お金もそんなにかからないですし。“ブランド品のバッグを1個買う”くらいの心持ちでできると思います(笑)。私は28歳の時に起業したのですが、当時、「何かに挑戦してから30代を迎えたい」という思いがありました。
会社でのキャリアアップ、転職、個人事業主などの選択肢の中で、大変そうだけれどいちばん面白そうな“起業”というカードを切って挑戦しようと決めました。

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すごい!もともとチャレンジ精神が豊富なのですね。

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幼い頃から思い付いたらすぐ動き出すタイプで、大学時代も入学早々チアダンスのサークルを立ち上げたりしました。私は「誰かをまきこんで一緒に行動する」というよりは、「一人で行けるところまで行く」タイプ。起業は元々の自分の性分に合っていたなと、振り返ると改めて感じます。

起業は元々の自分の性分に合っていたと話す森本 萌乃さん
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「うまくいかなかったらどうしよう」などと考えませんでしたか?

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多くの皆さんは、「成功したい」という気持ちを抱きながら自分の人生を描くと思うのですが、私は「早めに難しそうなことに挑戦して、早めに失敗したい」と思って生きているんですよ。挑戦や失敗って、自分の糧になるじゃないですか。「まずはできそうなことから始める」のではなく、「最初に高い所に目標を設定して挑戦する」思考が根底にあるから、失敗は怖くなかったですね。

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新卒で電通に入社されたのも、広告業界で最大手だったからですか?

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そうですね。就職活動中に広告業界に興味を抱き、「いちばん高い山をめざそう」と。当時は就活生が「入りたい会社NO.1」で、入社が決まるまではすごく大変でした。

会社に入り、志がめちゃくちゃ高い先輩や同僚に囲まれプランナーとして充実した日々を送っていたのですが、とにかくすごく忙しくて。でも、「イベントのたびに、お客さまの反響はすべてクライアントに返ってくるけど、自分には返ってこない。お客さまの反応が直接届く『to C』の仕事がしたい」という気持ちが芽生え始め、この刺激的な職場を思い切って手放すことを決めました。

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すごい決断ですね。大きなものを手放したと思ってしまいますが…。

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会社を辞める時も、周りの人が「もったいない」と言っていましたが、大きなことに挑戦しない方が「もったいない」と思ったんですよね。大きなものを手放したので、転職も起業するカードを切ることも楽になっていったんです。チャレンジって一度にいっぱいあると散らばっちゃうと思うんです。何かを手放してまでもやりたいことかと、自分に問うていくとシンプルに考えられると思います。

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そこから「本を通じたマッチングサービス」のアイデアは、どのように生まれたのですか?

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もともと「本が好だったから、本屋さんをやりたい」と始めたわけではないんです。当時、恋愛がしたくてマッチングアプリを使っていたのですが、そのアプリに自分のことを「ちょっとかわいいけど抜けてるところもあります!」とか、モテるための好印象な自己紹介をしていくうちに心がぎすぎすしてきてしまって、頑張れなくなってしまったんです。

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自分をマーケティングするのが恥ずかしい感覚ですね。

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そうですね。この経験から、人は、いわゆる“スペック”では出会えないなと確信しました。だったら何で出会いたいのかなと思った時、私の場合は読書が趣味なので、「同じ本を読んでいる人と出会いたいな」と。マッチングサービスに本を掛け合わせたらどうなるのだろうと、事業化を意識しながらプロトタイプを紙に書き、資料をつくり始めました。

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今の事業の“原型”が誕生したのですね。

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周りの友人に「私が本を無料で届けるので、本を読んだうえで食事会に参加してください」と声をかけ、そこでどんな話が出るのか、どんな風に出会うのかを教えてもらうなど市場調査をしました。お店の予約、招待状づくりなど全部自分でやって。“合コンの幹事役”ですね(笑)。そこでまずまずの手応えを感じていた時に、たまたま金曜ロードショーでジブリ映画の『耳をすませば』を観たんです。

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読書好きの女の子の甘酸っぱい話ですよね。

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そうです!観た瞬間、「あ!これだ!」と、稲妻に打たれたような衝撃でしたね。瞬時に、「図書館の本を通じて出会った二人のように、本棚の上で偶然手と手が重なるようなロマンチックな出会いのきっかけを自然につくれるマッチングサービス」を始めようと。マッチングアプリはもともと西洋からきた文化で、外国人は「I love you」とか自然に口にしますけど、日本人ってそうじゃないですよね。“余白”や“行間”を察するカルチャーというか。
本を通じた“ロマンチック”を提供するマッチングサービスなら日本人に受け入れられやすいし、「絶対行ける!」と思いました。

本を通じた“ロマンチック”を提供するマッチングサービスに確信を持つ森本 萌乃さん
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映画から「ロマンチック」な出会いのヒントが生まれたんですね。社名の「ロマンチック」に込めた思いとは?

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人は、感動すると心が動きますよね。私は映画を観て「なにこれ!ロマンチック!」と感動したんです。まさに言葉がふってくる感覚というか。その感動をそこで終わらせてしまうのではなく、さらに研ぎ澄ましてビジネスにつなげるその先に“答え”があるかもしれないと思ったんです。
会社をおこす準備をしている時、親友が、お祝いの花束を持ってかけつけてくれたんです。まるで自分のことのように喜んでくれる彼女の笑顔を見ながら、そこでも「ロマンチックに生きたいよね」って話をしていて。会社名も「MISSION ROMANTIC」としました。

 

「手を伸ばしたらそこに誰かがいる」。ワクワクする出会いで、本は楽しくなる。

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「活字離れ、本離れが加速している」といわれていますが、利用者の反応は?

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うちのお客さまは、7割が「月に1冊しか本を読まない」というライトユーザーさんなんです。「本はあまり読まないけれど、『出会いがついてくるから』『選書がいいから』」などのきっかけで始めてくれるのは、本当に嬉しいですね。

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毎月4冊選ぶのに、何冊くらいの本をチェックするのですか?

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選書が一番時間がかかるところです。だいたい30冊ぐらい読むので経営に手をかけられないという現実もありますが、選書を楽しみにしてくれるお客さまのためにも、これからも労をいとわず続けてきたいですね。

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どんなところを大切に選書されていますか?

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本屋さんが舞台で、お客さまが「本に手を伸ばしたらそこに誰かがいる」という物語の入口まで導いていくのが、私のビジネスの最大のミッションなんです
本屋さんに行ったら「出会っちゃった」という動機を大事にしています。Chaptersでは、本の啓蒙ではなく、本が楽しいと思ってもらえるような選書のテーマを毎月決めています。たとえば2023年2月のテーマは「月光読書」ですが、テーマに添ったまとまりのいい4冊よりも、いびつだけれど絶妙なアンバランスさがあるほうが、お客さまからすると選びがいがありますよね。テーマも大切ですが、一冊一冊の面白さにもこだわっています。

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お客さまが、毎月の選書を楽しみに待っているのは励みになりますね。

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サイトオープン日が毎月3日なんですけど、3日にサイトアクセスがバーッと集中して、全国の800人ぐらいのお客さまが一斉に本を買うんですよ。すごくないですか?この“読みたくてたまらない感じ”をつくりたかったんだなと思って。本屋さんが近くにない方の中には、4冊まとめ買いする方もいるんですよ。毎日3日は、スタッフみんなで事務所のパソコンに張り付いています(笑)。

オリジナルのブックカバーとリボンのしおり 「Chapters bookstore(チャプターズブックストア)」は月額サブスクリプション制。季節やトレンドを反映し、毎月異なるテーマを設定して4冊選書されている。毎回、オリジナルのブックカバーとリボンのしおりが同封される。
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出版社や書店とは、どのようなコラボを展開しているのですか?

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ドアノックで「一緒にやりませんか?」と声をかけています。皆さんとても協力的で、出版社さんとのコラボの時は、選書に半年くらいかかります。たくさんの作品の中から4冊にしぼりこむので、議論が白熱することもしばしば。そのぶん、決まった瞬間は、めちゃくちゃ喜んでくれます。

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本を読んだあとのビデオチャット「アペロ」の反響は?

※同じ本を読んだユーザー同士で1対1のマッチングした後、ビデオチャット(=アペロ)をすることができる

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マッチングのプロセスに関してはテクノロジーに任せているのですが、月に数件、お客さまから「Chaptersをきっかけに付き合い始めました」「Chapters、神サービス!ありがとうございます」などの連絡もいただくんですよ!それも嬉しいですね。

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継続してサービスを利用してもらうために工夫していることはありますか?

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選書が決まり、たとえば「この本はお風呂でゆっくり読んでほしい」と思ったら、本を送る時にバスソルトをギフトにつけたりなどプラスαのサービスをお届けしています。お客さまの手元に届いた時に、より楽しい気持ちになるじゃないですか。サービスを通して、お客さま一人ひとりに“体験”も楽しんでほしいと思っています。

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すごくいいですね!そのギフトはどのように用意されているのですか?

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その時々で違いますが、ご紹介して頂いたり、自分から企業のお問い合わせフォームに連絡したりしています。お客様の喜ぶ顔が見たい一心で、「どうしたらご一緒できますか?」と追いかけるんです、気分はもう物乞いに近いですね(笑)。自分の会社で事業を始めてからというもの、毎日必死なのでプライドや恥はどんどんなくなっていきます。

春仕様のブックカバーとしおりにギフトが添えられた写真 写真は、2022年3月のもの。春仕様のブックカバーとしおりにギフトが添えられた。書籍と一緒に、春の訪れを感じられる嬉しいサプライズ。
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「Chapters」の今後の展開や、チャレンジしていきたいことは?

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準備期間も含め、この事業を始めて5年目。おかげ様で少しずつ経営も安定してきています。「明日生きていくお金がない!」って全速力で走る感じではなくなってきたというか。だからこそ、始めた時のフレッシュな気持ちを忘れず、「楽しく飽きずに事業を続けながらこのサービスの魅力を真摯に伝えること」が目標です。

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起業当初のテンションをずっと維持し続けるのも難しいですよね。

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そうなんです。仕事って、どこかの時点で飽きるじゃないですか。でも、今日初めてうちのサービスを知ってくださる方もたくさんいるわけですから。とてもシンプルですが、毎日気持ちを込めて仕事する、これにつきると思います。一方で、「今ここにないものをつくる」というのが、経営者としての私の役割だと思っています。詳しいことはまだお知らせできないのですが、新しいプロジェクトも準備中です。

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ありがとうございます。最後に若い世代の読者に向けてのメッセージをお願いします。

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若い世代は「いまどきの子は・・・」などと揶揄(やゆ)されることも少なくないですが、皆さんいろんなことを真剣に考えていると思います。SNS上には「〇〇すべき」という言葉があふれていますが、その「すべき」に振り回されず、とことん自分と向き合って、「出たこと勝負」でいいからやりたいことをやってみてほしいですね。

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森本さんがおっしゃると、説得力がありますね。

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もうひとつ、「起業していい家に住みたい」とか、「素敵なパートナーと出会って幸せな結婚をしたい」とか、夢はたくさんあっていいと思うのですが、一度に実現させることはできません。「夢はひとつずつかなえる」「かなえるためには何かを手放す」ことも、とても大切だと思います。それから、周りの人と一緒に何かを楽しむだけでなく、映画でも音楽でも本でも、自分一人で楽しめるエンタメがひとつでもあるといいですね。エンタメを楽しむ“余力”をもつことで毎日が豊かになるし、へこんだ時も立ち直れるパワーになると思います。