車の水没はどこまで大丈夫?走行できる程度の見極め方とは

車が水没した際、車高や水深によって車の状態は変わります。目安として、水深がタイヤの半分を超えた場合に走行できなくなると言われています。

水深がタイヤの半分以下の場合も電気系統にダメージを受けている場合があるため、早めに専門業者へ連絡しましょう。

タイヤの半分以下の水深が目安

アウトドアやオフロードでも走りやすいとされるSUVのようにタイヤが大きく車高の高い車や、走行速度が速い場合には大きな水しぶきが上がるため「タイヤの半分以下」という基準を一概に適用できない場合があります。

しかし、一般的には「水面がタイヤの半分以下」までならエンジンや電気系統への影響を比較的回避できるとされます。それ以上の水深で車が水没した場合、エンジンや排気系統に水が入り込みやすくなるため注意が必要です。もしマフラーから水が侵入し、エンジン内部で「ウォーターハンマー」と呼ばれる現象が起きると、ピストンやコンロッドが曲がるなど、深刻な損傷に至る恐れがあります。

万が一、冠水した道路に遭遇した場合は無理に進まず、迂回やUターンを検討しましょう。

ただし、水深がタイヤの半分以下でも注意が必要

タイヤの半分程度の水没なら大きな不具合を回避しやすいとされるものの、海水を含んでいる場合はサビや腐食が急速に進む場合があります。もし海水に浸かった場合は、真水で洗い流したうえで部品交換を検討しましょう。

特にブレーキや車両下部の金属部品は塩分に弱く、腐食が進むと車の安全面を大きく損ないます。また、車には多くの電子制御部品が使われており、たとえ浅い水没でも誤作動や故障を引き起こす場合があります。電気系統に浸水した際には、一見異常がなくても後から不具合が表面化する場合があるため、自己判断で走り続けるのは危険です。

まずは、保険会社や整備工場に連絡してレッカー移動や点検を依頼し、電気系統やエンジン周辺を総合的にチェックしましょう。水没がタイヤの半分以下でも「車高の低いセダン」や「電気系統が低い位置にある車種」は思いがけないダメージが生じている場合があるため油断禁物です。

水没した車に乗るリスク

水没した車はエンジンやブレーキなど主要部品への損傷リスクが高く、安全走行を維持するには十分な点検と修理が不可欠です。

もし故障を見落として運転を続けた場合、走行中にエンジンが止まったり、ブレーキが効かなかったりと、重大事故を引き起こす恐れがあります。また、高額な修理費用を負担する事態を引き起こしかねません。

ここでは、水没した車に乗り続ける3つのリスクについて解説します。

ブレーキや電気系統の機能不全リスク

一度水没した車は、ブレーキ内部に水や泥が入ることで、ブレーキの機能を左右する摩擦力が著しく低下する場合があります。仮にブレーキ操作で十分な減速ができなければ、事故を起こしてしまう危険性が格段に高まるでしょう。

また、電気系統が故障した場合にはエンジンストール(走行中のエンジン停止)やライト類の点灯不良などを引き起こし、夜間や悪天候時は特に危険です。ライトが点灯していなければ、整備不良で道路交通法違反となります。

エンジンへの深刻なダメージ

車両のエンジン内部に水が侵入すると、ウォーターハンマー現象によってエンジンが動かなくなる危険性が高まります。

点火プラグや燃料系統に不具合が生じ、エンジンに深刻な状態を抱えてしまった際には、高額な修理費用を要する場合があります。車両の心臓といえるエンジンの不調であるため、修理費用が車両の時価を上回るケースもあるでしょう。

その結果、廃車および車の買い替えを検討せざるを得ない場合も考えられます。

車内のカビや腐食・悪臭の発生

車のドアの下部やシートの下部、フロア部分などに侵入した水が残ってしまうと、水に含まれていた汚れや菌によりカビや腐食が発生し、衛生面でも大きな問題を引き起こす危険性があります。

湿気が抜け切らない状態が続くと、カビなどの影響により車内で悪臭が漂うようになり、車内での快適性が著しく損なわれます。水没した際には放置せず、早めの対処が必要です。

車が水没してしまった場合の対処法

万が一車が水没してしまった場合は、事故やトラブルを避けるためにも冷静な判断と適切な手順が必要です。

車の安全を確保しながら、被害を最小限に抑えるための具体的な対処法を理解しておきましょう。

無理にエンジンをかけず専門業者へ連絡する

水没直後にエンジンが止まった際に、焦ってエンジンをかけることはやめましょう。エンジン内部に水が入っている状態で再始動を試みると、深刻な損傷を招きかねません。

まずは車から降りて安全な場所に移動し、ロードサービスや整備工場などの専門業者に連絡して、レッカー移動や修理の見積りを依頼しましょう。

自己判断で走行し続けると、さらに修理費用を要する場合があるため、慎重な対処が求められます。

保険会社に相談する

車が水没した際には、保険会社への連絡も優先しましょう。自動車保険にロードサービスがセットされていれば、レッカー移動などのサポートが利用できる場合があります。

また、自然災害が原因となる水没被害を受けた場合、車両保険で補償されることもあるため、事前に契約内容を確認しておきましょう。

保険会社に保険金を請求する場合は、次の手順で進めてください。

【保険金請求の流れ】
1. 保険会社へ連絡(車両保険、特約の有無を確認)
2. 修理見積りを取得
3. 保険会社による損害査定
4. 修理工場に車両を入庫・修理実施
5. 保険金の支払い(自己負担分がある場合は差引)

車内清掃と水分除去の徹底

車内まで水没した場合には、早めに車内を清掃しましょう。カビや腐食を防ぐためにも、シートやカーペットを外して泥や水をできるかぎり拭き取り、徹底的に乾燥させることが大切です。

特にシート下やトランク内などの見落としやすい場所も入念に確認し、悪臭や電気系統への影響を最小限に抑えます。ただし、電気系統を自力で触るのは非常にリスクが高いため、配線やヒューズボックスなどのチェックは整備工場に任せましょう。

水没車は再利用前に点検が必要?

水没した車にそのまま乗り続けることは危険性の高い行為です。まずは専門業者による点検を受け、走行可能かどうかを判断してもらう必要があります。また、点検時には修理費用の見積りを出してもらうことがポイントです。

乗り続けることができるかどうか点検する

水没した車を再利用する際は、安全性を最優先に考えて専門業者で点検を行いましょう。

具体的には、ブレーキやエンジン、電気系統などが浸水や汚泥により損傷していないか、専門的な計測機器を用いて確認します。特にブレーキ内部やECU、配線など腐食やショートが起こりやすい箇所は入念なチェックが必要です。

もし主要部品の故障や劣化が見つかった場合は、修理費用と車両価値のバランスを慎重に検討し、修理か廃車を最終的に判断することになります。

点検時は修理費用の見積りを出してもらう

水没した車を点検に出す際は、できるだけ早めに修理費用の見積りを依頼しましょう。

特にエンジンや電気系統の修理は高額になりがちで、交換ともなると数十万円単位の出費を要する場合があります。年式、走行距離、状態による車の価値を総合的に考慮したうえで、修理か廃車かを判断してください。

また、車は複雑な配線で制御されているため、一度水没した部分が時間の経過とともに腐食し漏電を起こす危険性があります。修理後にトラブルが再発した場合、さらに出費が増えることにもなりかねません。

専門業者のアドバイスを受けながら、安全の確保を念頭において検討しましょう。

車が水没した場合の修理費用は保険適用外?

近年、豪雨や台風による冠水被害が増加しています。車が水没してしまった際に保険で修理費用がカバーされるのかは、気になるポイントです。

冠水による損害時に自動車保険の対象範囲かどうかは、契約内容や加入状況により異なるため、基本的な知識を理解しておきましょう。

水没車は車両保険の対象?

台風や豪雨などの自然災害が原因で車が水没した場合でも、車両保険に加入していれば損害がカバーされる場合があります。

たとえば、河川の氾濫や道路の冠水で車が水没し、エンジンや内装などに被害を受けても、車両保険に加入していれば修理費用をまかなえるでしょう。ただし、保険会社によって細かい契約条件や適用範囲が異なるため、まずは加入している保険プランを把握しておきます。

冠水による損害で車両保険を使用した場合、翌年は保険等級が下がり「事故有係数適用期間」が加算されます。また、保険適用の際に免責金額(自己負担額)が設定されている場合は、修理費用の一部が自己負担となる点にも注意が必要です。

出費が重なると想像以上に費用がかさむ可能性もあるため、あらかじめ保険の契約内容を見直し、水没リスクを考慮した保険を選びましょう。近年はゲリラ豪雨など、予測しにくい冠水被害も増えています。車の使用環境や駐車場所の状況を考慮したプランに加入すると安心です。

ロードサービスの有効活用がおすすめ

車が水没しエンジンが起動しない、または安全に走行できない場合は、保険にセットしているレッカー移動や応急修理サービスを活用することで、車両をスムーズに整備工場に運べるため、二次被害を抑えられるでしょう。

自力で業者を手配すると費用が高額になる場合があるため、ロードサービスがセットしている保険に加入しておくと安心です。ロードサービスは利用しても等級が下がらない点もメリットの一つです。保険会社によっては一定距離までの無料けん引や、代車手配などのサポート体制を整えている場合もあります。

冠水などの不測の事態に備えて、ロードサービスの具体的な内容や連絡先を事前に把握しておくと、有事にも落ち着いて対応できるでしょう。

水没した車に乗り続けることができない場合はどうすればいい?

大規模な水没の際は修理費用が高額となり、廃車や下取りを検討する場合もあります。買取りや廃車の専門業者、ディーラーによる下取りなどを活用し、損失をなるべく抑えながら車を手放す方法を解説します。

買取り専門業者や廃車専門業者を活用する

水没によって車両の状態が思わしくなく、修理しても安全が確保できない、または修理可能でも今後の故障リスクや維持コストが見合わないと想定される場合、廃車を選択することもあるでしょう。

しかし、廃車には各種手続きや費用がかかるうえ、もし車が動かなくなってしまった場合に、部品取りや再販用のパーツとして利用できる部分など、廃車の際に受け取れる「還元価値」を逃してしまいかねません。

その点、車両の買取り専門業者や廃車専門業者に依頼し、部品の再利用やリサイクルが可能な箇所を評価してもらうことで、思わぬ査定額が提示される場合もあります。

故障車両のレッカー移動や廃車時に必要な書類手続きを一括で請け負う専門業者もいるため、複数社から見積りを取って最も有利な条件の業者を選ぶことがポイントです。

ディーラー下取りや買い替えサポートを検討する

車種やメーカーによっては、ディーラーによる下取りや買い替えサポートが利用できる場合があります。たとえ水没した車でも、利用できる部品がある場合には価値があり、車両のリサイクルに必要な費用を相殺する形で、下取りできる場合があります。

ただし、水没によるダメージが甚大な場合は、下取り価格はほぼ値段がつかないでしょう。廃車に要する各種手数料を請求される場合もあります。複数のディーラーや専門業者から見積りを取り、比較・検討しましょう。

また、メーカーにより残価設定型プランなどの買い替えしやすいプランを導入している場合があります。

その他、車両保険で「車両新価特約」に加入している場合、大雨による洪水や台風による高潮によって車が水没した際に、新車に買い替えることが可能です(保険会社により特約名称や特約のセット条件が異なりますので、事前に確認しましょう)。

車の水没(浸水)に関するよくあるQ&A

最後に、水没した車にまつわる疑問点をまとめました。万が一、水没(浸水)した車に関するトラブルや、廃車の判断時など悩んだ際の参考にしてください。

水没(浸水)した車は廃車になりますか?

必ずしも廃車になるわけではありません。浸水の深さやエンジン・電気系統へのダメージによっては修理が可能な場合もあります。

しかし、水がエンジン内部まで侵入してウォーターハンマーを起こしたり、電子制御部品の交換が必要になったりすると、修理費用が車両の時価を上回る場合もあるでしょう。

専門業者による点検や見積りをもとに、廃車か修理かを総合的に判断する必要があります。

車両保険には必ず加入しておくべきですか?

洪水や台風など自然災害による水没リスクが高い地域では、車両保険の加入を検討しましょう。台風や豪雨による水没被害も補償の対象となる場合が多いため、いざというときの負担を軽減できます。

保険の種類やプラン(特約など)により補償範囲が異なるため、契約前に必ず内容を確認し検討しましょう。

水没後、エンジンが動いた場合でも修理した方が良いですか?

たとえエンジンが起動したとしても、ブレーキや電気系統など走行の要となる部品に潜在的なダメージを負っていると考えられます。

また、車内に残った水分がカビや悪臭の原因となる場合もあるため、エンジンが動いても「大丈夫」とは言い切れません。安全面・衛生面を考慮し、必ず専門業者による点検を受けてください。

冠水路を無理やり走行しても大丈夫?

非常に危険です。一見水深が浅そうに見えても実際には深かったり、道路が陥没していたりと、水没する恐れがあります。マフラーが水没すれば排気不良やエンジンストールを起こし、さらに大きなトラブルに直面する可能性もあります。

冠水した道路は無理をせず迂回しましょう。迂回する際には周囲を確認しながら、ゆっくり進むなど慎重に対応してください。

修理するか買い替えるか、どのように判断すればいい?

修理費用と車の時価や今後の維持費を比較し、総合的に判断しましょう。まずは専門業者での点検を受け、修理の見積りが車の価値を大きく上回る場合や、修理後も再び故障が起こりそうな場合は、買い替えの検討も選択肢の一つです。

車両保険が適用されるかどうか、保険を利用した際の等級ダウンによる保険料アップなども含め、トータルで車の維持コストを見極めましょう。

まとめ

水没した車に乗り続けられるかどうかは、冠水の深さやエンジン・電気系統の損傷状況、車種や年式など多岐にわたる要素によって決まります。万が一水没してしまった場合は、修理か廃車かを冷静に見極め、保険適用やロードサービスを活用するなどして負担を軽減しましょう。

水没は一度起きるとさまざまなトラブルを誘発しやすいため、日頃から駐車場所の検討や保険プランの見直しを行い、いざというときの備えを万全に整えておくことが重要です。

車両保険に加入していれば、水没による損害をカバーできる場合があります。安全と経済性を両立させるためにも、現在加入している自動車保険の契約内容を再チェックし、台風や集中豪雨に備えた補償を確保しておきましょう。


※本コラムでご案内した商品に関する内容は概要を説明したものです。詳しい内容については取扱代理店または損保ジャパンまでお問い合わせください。

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