親子間で車を譲渡する際の名義変更は何をすればいい?
親から子どもに自動車を譲渡する際は、「車をあげるよ」と口頭で伝えるだけでは完了しません。自動車の名義を親の名義から子どもの名義に変更する手続きを行う必要があり、手続きを通じて、ようやく自動車が譲渡されたことになります。
主な手続きには、自動車の名義変更、自賠責保険の名義変更、任意保険の名義変更があります。以下で詳しく解説します。
①車の名義変更
親から子どもに自動車を譲渡するということは、その自動車が親の所有物から子どもの所有物に変わることを意味します。この所有者情報は車検証に記載されています。
車検証には自動車の所有者と使用者の名前が記載されており、親の名前になっている部分を子どもの名前に書き換えなければなりません。この手続きを「自動車の名義変更」といいます。
②自賠責保険の名義変更
自動車を運転するためには、自賠責保険に加入していることが義務付けられています。自賠責保険は強制保険とも呼ばれており、未加入や保険の期限切れの状態で公道を運転することは法律違反です。
そのため、親から子どもへ自動車を譲渡した場合、同時に自賠責保険の名義変更も行う必要があります。自賠責保険の名義変更は、契約している保険会社に自動車の譲渡を伝え、契約者を親から子どもに変更します。
③任意保険の名義変更
自動車の任意保険は、強制保険である自賠責保険に加えて、追加で加入する保険です。任意保険は、事故によるケガの治療費や、物に接触して破損してしまった物損事故などの補償を提供します。
親が任意保険に加入していて、親から子どもへ自動車を譲渡したときは、任意保険の名義変更も行う必要があります。任意保険を契約している保険会社に連絡し、親から子どもに名義変更をします。
親子間で車を譲渡する際の車検証の名義変更手続き
親から子どもに車を譲渡する場合は、車検証の名義変更(移転登録)の手続きが必要です。普通自動車の名義変更は、車に関するさまざまな手続きを行っている運輸支局で行います。
以下では、車検証の名義変更手続きをスムーズに行うための名義変更のポイントや名義変更に必要な書類をお伝えします。
車検証の名義変更を行う際のポイント
車検証の名義変更は、普通自動車と軽自動車で手続き方法が異なります。普通自動車の場合、運輸支局で手続きを行いますが、軽自動車の場合は軽自動車検査協会で手続きを進めます。
また、住んでいる地域によって管轄が異なるため、どの支局で手続きができるのか、必要な書類や手続き日時について事前に調べておくことが重要です。
参考::自動車検査登録総合ポータルサイト「全国運輸支局等のご案内」
参考:軽自動車検査協会「全国の事務所・支所一覧」
名義変更に必要なもの
親の名義から子どもの名義に変更する場合は、一般的に以下の書類等が必要です。
《 普通車の名義変更に旧所有者の親が必要なもの 》
・自動車検査証(車検証)
・譲渡証明書
・印鑑登録証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
・車庫証明(同居の親族の場合等使用の本拠地が変わらなければ不要)
・本人申請の場合は実印、代理申請の場合は実印の押された委任状
・現在のナンバープレート(親と子どもの住所地で運輸支局が異なる場合)
《 普通車の名義変更に新所有者の子が必要なもの 》
・印鑑登録証明書(発行日から3か月以内のもの)
・本人申請の場合は実印、代理申請の場合は実印を押印した委任状
・警察署発行の自動車保管場所証明書(車庫証明書)(管轄する警察署に申請・証明の日から40日以内のもの)
親から子どもに自動車を譲渡し、所有者が変わったときには、15日以内に名義変更を行う必要があります。
参考:自動車検査登録総合ポータルサイト「必要書類」
参考:軽自動車検査協会「名義変更」
参考:道路運送車両法 「第12条 変更登録」
親子間で車を譲渡する際の自賠責保険の名義変更手続き
親子間で車を譲渡する際は、車検証の名義変更に加えて、自賠責保険の名義変更(権利譲渡)も必要です。自賠責保険は、加入している保険会社に連絡をして、親から子どもへ車を譲渡したことを伝え、契約者変更の手続きを行います。
自賠責保険の名義変更を行う際のポイント
自賠責保険は、自動車を運転するために必ず加入しなければならない保険であり、親から子どもに自動車を譲渡する際には、自賠責保険の契約者名義も変更する必要があります。
自賠責保険の名義変更は、現在契約している保険会社で手続きを行います。保険会社に「自動車を子どもに譲渡したので名義変更をしたい」と伝えることが重要です。
名義変更が完了すると、子どもの名前が記載された新しい自賠責保険証明書が発行されます。証明書を受け取った際には、契約者名に誤りがないかを確認することも大切です。
名義変更に必要なもの
自賠責保険の名義を親から子どもに変更するには、必要な書類を準備して、自賠責保険を契約している保険会社やその代理店などで手続きを行います。
以下は自賠責保険の名義変更に必要となる主な書類ですが、契約している保険会社により異なる場合があります。
《 自賠責保険の名義変更に旧所有者の親が必要なもの 》
・本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
・自賠責保険証明書
・譲渡証明書
《 自賠責保険の名義変更に新所有者の子が必要なもの 》
・名義変更済みの車検証のコピー
・本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
手続きに時間がかかることもあるので、自動車の名義変更と同時に手続きをするなど早めのタイミングがおすすめです。名義変更の際には、自賠責保険の有効期限も確認しておくと、いつ頃更新が必要になるかもわかります。
参考:日本損害保険協会「自賠責保険」
親子間で車を譲渡する際の任意保険の名義変更手続き
自賠責保険に加えて、加入している任意保険も、親から子どもに名義変更をする必要があります。任意保険の名義を親から子どもに変更するには、必要な書類を準備して、契約している保険会社やその代理店などで手続きを行います。
任意保険の名義変更を行う際のポイント
任意保険は、対人・対物補償や車両保険などがあり、人それぞれで補償内容はさまざまです。
任意保険の名義変更は、保険会社に連絡して、任意保険の記名保険者を変更する手続きが必要です。
単に名義を変えるだけでなく、年齢要件が子どもの年齢に合っているか、譲渡した自動車を誰が運転するかにより運転者限定とするかどうかなど、子どもの運転スタイルや生活スタイルに合わせて補償内容を見直し、適切な補償がされているかを確認することが重要です。
また、任意保険には「等級」という仕組みがあります。親から子どもに名義変更を行う場合、等級継承できる場合もありますが、継承できないこともあるため、等級継承について保険会社に確認しておくことも大切です。
名義変更に必要なもの
任意保険の契約者を親から子に変更する場合は、速やかに保険会社や代理店へ連絡し、変更手続きを行う必要があります。
以下は任意保険の名義変更に必要となる主な書類ですが、各保険会社により異なります。
《 任意保険の名義変更に旧所有者の親が必要なもの》
・現在の任意保険の証券
・本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
・等級引き継ぎができる場合は、引継ぎ関連の書類
《 任意保険の名義変更に新所有者の子が必要なもの 》
・名義変更済みの車検証のコピー
・本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
・保険料を支払う銀行口座やクレジットカードなどの情報
名義変更の手続きは、契約している保険会社によりますが、オンラインや郵送で行えることもあります。
親子間の車の名義変更では車庫証明は必要?
自動車の名義変更を行うときは、「自動車保管場所証明書(以下「車庫証明」)の提出が求められるのが一般的です。しかし、親から子どもへの譲渡では、一定の条件を満たせば車庫証明の取得が省略できる場合があります。
以下では、車庫証明が不要なケースと、必要なケースについて解説します。
車庫証明を省略できるケース
自動車を譲渡する際、通常は車庫証明が必要ですが、いくつかのケースでは省略することができます。そのひとつが、親子が同一世帯に住んでおり、名義変更後も自動車の保管場所が変わらない場合です。この場合、子どもの名義に変更しても自動車が今までと同じ場所に置かれるため、新たに車庫証明を提出する必要はありません。
また、譲渡する自動車が軽自動車の場合も、車庫証明を省略できることがあります。地域によって異なりますが、軽自動車は基本的に車庫証明を必要としないことが多いです。
参考:自動車検査登録総合ポータルサイト「必要書類」
車庫証明が必要なケース
親子間での名義変更でも、車庫証明が必要な場合があります。そのひとつは、親と子が別々の住所に住んでいる場合です。自動車の所有者を親から子どもに変更するだけでなく、住所も変更する場合は、譲渡した自動車を新しい場所に置くための車庫証明が必要です。親子が同一世帯でも、自動車の保管場所が変わる場合は車庫証明が必要となります。
また、自治体によって異なりますが、住所変更がない名義変更でも、車庫証明の再提出を求められることがあります。
親子間の車の名義変更における注意点
親から子どもに車を譲渡して、名義変更を行う場合、一般的に必要な自動車保険などの名義変更に加えて、車庫証明の要否や、贈与に関する注意点もあります。スムーズに譲渡の手続き進めるために、注意しておくポイントがあります。
注意点①保険の名義変更
親から子どもに自動車を譲渡した場合、車検証の名義変更には特に期限は設けられていませんが、後回しにしてしまうことは避けるべきです。名義変更を先延ばしにすると、自賠責保険や任意保険の名義変更も後回しにしがちですが、そのままにしておくと、万が一自動車事故が発生した際に補償を受けられない可能性があります。
特に、任意保険が「家族限定」の場合、同居していない子どもの配偶者や友人が運転して事故を起こした場合は補償が適用されません。また、運転者年齢条件が設定されている任意保険では、子どもが年齢条件に合わない場合、子どもが起こした事故には補償されないので、名義変更と合わせて保険内容の確認を行うことが重要です。
注意点②車庫証明の取得
親が新車を購入して、同居している子どもに以前の自動車を譲渡することがあります。親子が同じ住所に住んでおり、車の保管場所が変わらない場合、車庫証明の取得は不要であることもあります。しかし、自動車が1台増えた場合に、保管場所が変わらないとして車庫証明を取得せずに名義変更を行うと、車庫法違反になりますので、注意が必要です。
車庫証明は後回しにせず、自動車の保管場所が変更された場合には必ず車庫証明を取得しましょう。もし自動車の置き場が決まらず、家の前の道路に駐車した場合、車庫法違反だけでなく、道路交通法違反にもなり得るため、必ず適切な保管場所を確保し、車庫証明を取ることが大切です。
参考:法令検索「自動車の保管場所の確保等に関する法律」
注意点③自動車税の支払い
自動車税および軽自動車税は、毎年4月1日時点で自動車を所有している人に課される税金です。親子間で自動車の名義変更を行う場合、税金の負担についてあらかじめどちらがいつまで支払うかを決めておくことが重要です。
例えば、5月に自動車を譲渡した場合、4月1日時点では親が所有者となるため、親がその年の税金を支払うことになります。しかし、親が5月以降の11か月分の税金は子どもが負担するべきだと考えていた場合、金銭トラブルに発展することもあります。家族間であっても、税金の支払い方法について事前に確認し、トラブルを避けることが大切です。
注意点④贈与税がかかる場合
親から子どもに自動車を無償または安価で譲渡する場合、贈与税が発生する可能性があります。1年間に110万円を超える財産を贈与した場合、贈与税の申告と納税が必要となります。
例えば、300万円の自動車を無償で譲渡した場合、300万円から110万円を引いた190万円に対して贈与税がかかります。もし無償ではなく100万円で譲渡した場合でも、300万円から支払った100万円を差し引いた後、残りの金額から110万円を超える90万円に対して贈与税がかかります。自動車の価値にもよりますが、贈与税が発生する場合は、税理士などの専門家に相談することが重要です。
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
親子以外で車の名義変更が必要なケース
自動車を譲渡して名義変更するケースは、親子間だけに限られません。結婚や離婚、相続などで名義変更する場合、知人や友人に譲渡して名義変更する場合、会社名義の自動車を個人名義に変更する場合など、代表的なケースについて解説します。
ケース①結婚や離婚したとき
結婚や離婚をきっかけに、自動車の名義を自分から配偶者へ変更することがあります。例えば、結婚した際に妻が所有していた車を夫名義に変更する場合や、離婚時に財産分与として夫名義の自動車を妻が引き取る場合などです。このように、夫婦間で自動車の名義が変わる場合は、必ず名義変更を行う必要があります。
離婚後に財産分与した自動車の任意保険を更新しようとしたとき、すでに記名被保険者の配偶者ではないために任意保険の等級が引き継げなくなります。離婚により自動車の所有者が変わる場合は、離婚成立前に名義変更を済ませておくことが重要です。
ケース②相続のとき
親族が亡くなった際、故人が所有していた自動車を形見分けとして受け取ることがあります。この場合、自動車の譲渡ではなく相続となり、車検証に記載された所有者が亡くなった場合には、自動車の名義を相続人の名義に変更しないと、車を売却したり廃車にしたりすることができません。遺産分割が決まったら、速やかに名義変更を行いましょう。
相続の場合、名義変更に必要な書類は、売買や譲渡時の手続きとは異なり、戸籍謄本や遺産分割協議書などの追加書類が必要となるため、これらを準備して手続きを進めることが重要です。
ケース③知人などへの直接譲渡したとき
友人や知人に個人的に自動車を売ったり、譲ったりすることもあります。オークションサイトやフリマアプリなどで、自動車を個人売買することもできるようになりました。個人売買のメリットは、仲介業者がいないため、業者に支払う手数料を節約できる点です。
しかし、個人売買の場合は、売主と買主が自分たちで名義変更の手続きを行わなければなりません。売買後、速やかに名義変更を行うことが重要です。名義変更を忘れると、翌年の自動車税の請求が旧所有者に届いてしまうため、早急に手続きを進めるようにしましょう。
ケース④社用車を個人使用に変えるとき
会社で使用していた社用車を経営者個人や従業員に譲る場合、名義変更が必要です。社長個人の自家用車に変更する場合は、会社がその譲渡を認めたことが確認できる資料が求められます。具体的には、取締役会の議事録や株主総会の議事録などを準備して、名義変更手続きを行います。
また、社用車にローンが残っていたり、リース契約中であったりする場合は、金融機関に確認が必要です。さらに、無償や低価格で譲渡する場合は、税務処理が発生する可能性があるため、税理士に相談することをおすすめします。
親子間での車の名義変更に関するQ&A
親から子どもに自動車を譲り、名義変更をするときには、さまざまな疑問が出てくることもあるでしょう。ここでは、よくある代表的な質問に回答します。
名義変更しないと困るのは誰?
親子間でも車を譲ったら名義変更は行う必要があります。名義変更をせずに、所有者を親名義のままにしておくと、自動車税の通知が親に届き、親子のどちらが支払うか揉めたり、子どもがオービスによる速度超過違反をしたときの通知が親に届き、罰金を誰が払うのか揉めたりすることにもなります。
名義変更にお金はかかる?
自動車や軽自動車の名義変更をするときは、車庫証明書の取得費用や、移転登録の手数料、ナンバープレート代などの手数料がかかります。
行政書士などに依頼して名義変更を行う方法もありますが、普通自動車の場合、依頼先により異なりますが、代行手数料として1~5万円程度かかります。
運輸支局や軽自動車検査協会などに自分で行って名義変更をすると、普通自動車の場合、車庫証明に2,800円程度、移転登録に500円、ナンバープレートに1,450円~8,490円程度、印鑑証明書に250~450円程度が必要となります。手続きは多くなりますが自分で名義変更すると、1万円以内で済ませることも可能です。
親が亡くなる前と後では税金が違う?
親が亡くなる前に、自動車を譲ってもらうと贈与となります。暦年課税の場合は、自動車の現在の値段が110万円を超えていると超えた分に贈与税がかかります。贈与税の税率は1年間に贈与額してもらった額により異なりますが、10%~55%です。
親が亡くなった後は、相続として手続きします。相続の場合も税率は10%~55%ですが、譲ってもらう自動車以外の親の財産もすべて含めて相続税を計算します。
また、自動車を贈与でもらうか相続でもらうかによって支払う税金の額が異なることがあります。
まとめ
親から子に自動車を譲るときは、車検証の名義変更、自賠責保険や任意保険の名義変更、必要に応じて車庫証明の取得など、複数の手続きが必要です。また、譲ってもらう自動車の価格によっては贈与税が発生することもあります。
さまざまな手続きが必要となりますが、親子間で自動車を譲渡した場合は、速やかに手続きを行いましょう。
※この記事は2025年2月時点の情報です。
執筆者プロフィール
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