自動車保険証券は会社に提出しなければならない?

勤務先の会社にマイカーで通勤している場合は、会社から自動車保険の保険証券の提出を求められる場合があります。

マイカー通勤時の交通事故は、事故を起こした従業員だけでなく、会社も「使用者責任」もしくは「運行供用者責任」などの形で責を問われる可能性があります。

そのため、マイカー通勤を許可する際には従業員が「充分な補償内容の自動車保険に加入しているか」など、会社として把握しておく必要があるため、保険証券の提出を求めるのです。

そもそも保険証券とは何か

保険証券とは保険の契約内容を説明した書類です。自動車に関する保険には「自賠責保険」と「自動車保険(任意保険)」があります。

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、自動車、バイクなどすべての車両が法律で加入を義務づけられた強制保険です。

《自賠責保険証明書のサンプル》 自賠責保険証明書のサンプル

自賠責保険の証明書には
・証明書番号
・自動車登録番号、車両番号または車体番号
・保険期間
・保険契約者の住所と氏名
・自動車の種別
・使用の本拠の所在地
・保険料
・保険会社名
・保険料収納済印 など
が記載されています。

一方で自動車保険(任意保険)は、自賠責保険では補償されない対物賠償、人身傷害、車両保険をはじめ、自賠責保険が補償する対人賠償の限度額を超えた部分をカバーするために加入する保険です。

自動車保険証券のサンプル
自動車保険証券のサンプル
引用:損害保険ジャパン株式会社「個人用自動車保険 THE クルマの保険 保険証券(Web証券)」

保険証券には、
・証券番号
・保険期間
・契約者の情報
・契約自動車を主に運転する人(記名被保険者)の情報
・契約自動車の情報
・補償対象になる運転者の範囲
・ノンフリート等級
・保険料
・主な補償内容 など
といった情報が記載されています。

最近ではペーパーレス化が進み、オンラインで契約内容が確認でき、必要な場合にのみ紙の保険証券を発行する保険会社もあります。

証券のコピーは安易に渡してはいけない

自動車保険証券には、保険の契約者や主な運転者の住所や生年月日といった各種個人情報をはじめ、車名、仕様、種別、登録番号(ナンバープレートの内容)など車に関する重要な情報が記載されています。

そのため、保険証券のコピーは安易に渡してはいけません。会社からコピーの提出を求められたら提出が必要な理由を必ず確認し、必要枚数以上のコピーを取らないようにするなど、個人情報の流出リスクを低減するように努めましょう。

会社が自動車保険証券の提出を求める理由

会社が提出を求めるのは任意保険証券で、提出を求められる対象者は自分の車で会社に通勤する従業員です。保険証券の提出を求められる主な理由は、通勤途中に従業員が交通事故を起こした場合に備えるためです。

もし従業員が通勤途中に交通事故を起こしてしまった場合、使用者責任(民法第715条)や運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)により、会社が損害賠償責任を負う可能性があります。

使用者責任では「従業員が業務や通勤中に交通事故を起こしてしまった場合、会社も従業員に連帯して被害者に損害賠償を負う」といった規定があり、運行供用者責任では「自己のために自動車を運行の用に供する者は運行により生じた賠償責任を負う」といった規定があります。

そのため、会社は事前に従業員が加入している自動車保険の保険期間や補償内容などの確認を行います。

保険証券が必要になるケース

自動車保険証券が必要になるケースとして、会社から提出を求められるケース以外に3つのケースが考えられます。

1. 契約内容や補償内容の確認や見直し
保険証券には、補償内容や保険期間、保険金額、運転者の範囲などの情報が記載されています。契約内容の確認や補償内容の見直しなどを行う際に必要な情報です。

2. 保険の更新や切り替え
自動車保険は1年更新が一般的です。保険の契約期間を確認する際に、保険証券が必要になります。また、別の保険会社の自動車保険に切り替える際にも、等級や契約車両など現在の契約内容を確認する際に必要です。

3. 保険会社への事故の連絡や保険金を請求する
交通事故が発生した際に、保険会社に連絡をすると契約内容の確認を目的に証券番号を聞かれます。もし証券番号がわからない場合も受付は行われますが、証券番号をすぐに伝えられると話がスムーズに進みます。

保険金の請求時には請求書類に証券番号などの情報を記入するため、保険証券が必要です。

会社への提出時に保険証券が手元にない場合の対処法

会社に保険証券を提出する際に、証券が手元にない原因は
・保険証券をペーパーレスにしている
・保険証券を紛失してしまった
といったケースが考えられます。

その他、会社に保険証券のコピーを急いで提出しなければならない場合もあります。ここからは、それぞれの場合にどう対処すべきか解説します。

保険証券をペーパーレスにしている

保険証券のペーパーレスを選択できる保険会社が増えています。ペーパーレス化により割引を受けられる保険会社もあり、ペーパーレスを選択する保険加入者も増えています。

保険証券をペーパーレス化した場合、契約内容などの確認はスマートフォンやパソコンなどの画面から行います。保険証券の提出が必要な場合は保険会社のウェブサイトから自分で印刷します。

損保ジャパンの場合は、契約者が「マイページからWeb証券を確認して印刷する方法」と「マイページから保険会社に紙の保険証券を請求する」という2つの方法が用意されています。

保険会社に紙の保険証券を請求した場合は、手元に届くまでに1~2週間程度かかりますので、急ぐ場合は自分で印刷するようにしましょう。

保険証券を紛失してしまった

紙の保険証券を紛失してしまった場合、保険会社に連絡して証券を再発行してもらうことになります。再発行の依頼は、インターネットや電話などを通じて行いますが、保険会社により対応が異なるため確認が必要です。

一般的な再発行時の流れは、
1. 保険会社に連絡する。
2. 保険会社から送られてくる申請書に記入して必要書類(運転免許証など本人確認書類など)と一緒に保険会社に郵送する。
3. 保険会社は受領した書類を確認し、不備がなければ保険証券を再発行して郵送する。
となります。

紙の保険証券を発行する際と同様、新たな保険証券が手元に届くまでの期間は1~2週間程度かかります。

証券番号がわからない場合も再発行は可能です。証券番号は「契約内容のご案内」など、保険会社からの郵送物でも確認することができます。

保険証券の写しを急ぎで提出しなければならない場合

保険会社のウェブサイトから保険証券を印刷可能です。自宅にプリンターがあれば、急ぎの提出を求められても対応しやすいでしょう。

紙の保険証券を紛失した場合は再発行まで時間を要します。その場合は、保険証券の代用として契約(付保)証明書の提出でも対応可能か会社に確認しましょう。契約(付保)証明書は、実際に保険契約をしていることを証明する保険会社発行の証明書です。契約内容や補償内容など、保険証券とほぼ同じ内容が記載された公的書類です。

保険会社により契約(付保)証明書の発行方法には違いがあります。ウェブサイト経由で自ら印刷できる場合は、再発行に比べて早い段階で入手可能です。

自働車保険証券に関するよくあるQ&A

会社が自動車保険証券の提出を求める理由や、自動車保険証券の保管に適した場所、証券を紛失した際に想定されることについて、Q&A形式で回答します。自動車保険証券への理解を深めるポイントとして、ご活用ください。

会社が自動車保険証券の提出を求めるのはなぜですか?

自分の車で会社に通勤している従業員は、会社から自動車保険証券の提出を求められる場合があります。会社が提出を求める理由は、従業員が通勤途中に交通事故を起こした場合、会社側が「使用者責任」や「運行供用者責任」を問われる可能性があるからです。

そのため、会社として事前に従業員が加入する自動車保険の契約内容や補償内容を知っておく必要があり、そのために自動車保険証券の提出を求めます。なお、提出する保険証券は通常は複写です。

自動車保険証券の保管場所はどこがいいですか?

自動車保険証券の証券番号や補償内容などの確認が必要になるのは、自動車事故を起こした時です。その点を踏まえて考えると、車のダッシュボードに車検証などと一緒に保管しておくと、交通事故を起こした際に保険会社とスムーズに連絡を取りやすくなります。

車上荒らしなどにより保険証券の盗難を心配される方は、原本を自宅に保管するといいでしょう。また、保険会社のウェブサイト上で情報を確認できる場合、保管場所を考える必要がなくなります。

自動車保険証券を紛失するとどうなりますか?

もし自動車保険証券を紛失した場合でも、保険契約が無効になることはありません。補償は継続します。

ただし、交通事故を起こした際の保険金請求時、補償内容の確認や見直しを行いたい時、保険の解約時、他社の保険に切り替える時には保険証券に記載されている情報の確認が必要です。紛失した場合は、速やかに再発行の申請を行いましょう。 もしくは、保険証券をペーパーレス化できる会社を選ぶことで紛失を防止できます。

まとめ

この記事では、会社が従業員に自動車保険証券の提出を求める理由を中心に、自動車保険証券の記載内容や重要性、保険証券が手元にない場合の対処方法などについて広く解説しました。

近年は、自動車保険証券をペーパーレス化する保険会社が増えています。保険証券のコピーの提出を求められた場合にスムーズに対応できるよう、保険証券の発行方法などを事前に保険会社のウェブサイトで確認しておきましょう。

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