1.車の盗難被害は自動車保険の「車両保険」で補償される?

車が盗難被害にあった場合、自動車保険に「車両保険」を適用していれば、原則として車両保険から損害に対する保険金が支払われます。

車両保険には、大きく分けて2つの契約タイプがあります。補償範囲の広い「一般型」と、車対車の事故や自然災害などを対象とした「車対車・限定危険型(エコノミー型)」です。車の盗難被害は、原則としてどちらの契約タイプでも補償の対象となるため、万が一の盗難リスクに備えられます。

ただし、契約内容によっては車両盗難が補償対象外となる場合があります。例えば、車両盗難を補償対象外とする特約がセットされている場合は、車の盗難被害にあっても補償の対象外となります。盗難被害に備えたい人は、補償内容や特約の有無を確認しておきましょう。

2.車両保険の保険金額はいくら支払われる?

車の盗難は、原則として「全損扱い」での補償対象です。全損とは通常「修理できない場合または修理費が車両保険金額以上となる場合」の状態を指しますが、車が盗難されて発見されない「車の滅失」も全損扱いとなります。
全損扱いでは、原則として契約時に設定した「車両保険金額(協定保険価額)」の満額が支払われます。また、一般的に、車両保険で事故により車に損害が発生した場合は、契約で設定した車両保険金額(協定保険価額)を上限として、修理費などの損害額から自己負担額(免責金額)を差し引いた保険金が支払われます。一方、全損の場合、契約時に自己負担額(免責金額)を設定していても差し引かれずに、車両保険金額の満額が支払われます。

3.車の盗難被害後の手続きの流れ

ここでは、車の盗難被害が発覚してから保険金を請求するまでの基本的な流れを紹介します。手続きは、以下の順番で進めましょう。

  • 警察へ「盗難届」を提出する
  • 保険会社へ連絡する
  • 必要書類の準備と車の抹消登録を行う

3.1.警察へ「盗難届」を提出する

車が盗難されたことに気付いたら、速やかに管轄の警察署または最寄りの交番に連絡し、「盗難届」を提出しましょう。盗難届を提出する際には、盗難にあった車の情報および盗難時の状況などを正確に報告する必要があります。報告する項目は多岐にわたり、車検証などが手元にないと確認が難しい内容も含まれます。

  • 自動車登録番号(ナンバープレートの番号)
  • 自動車車体番号
  • 車体の色や特徴
  • 年式
  • 車の所有者および使用者の氏名
  • 盗難届出者の氏名
  • 盗難被害にあった年月日時および場所
  • 盗難被害にあったときの状況(走行距離など)
  • 車内に搭載してあった貴重品類 など

車検証を車内に保管しているケースも少なくありませんが、万が一に備え、これらの情報を確認できるよう、別途メモを取るなどの対策をしておくことも大切です。また、盗難時の状況を後から正確に説明できるように、最後に車を停めた場所や周辺の状況(防犯カメラの設置状況など)をスマートフォンのカメラで撮影しておくのもおすすめです。

盗難届が正式に受理されると、警察から受理番号が発行されます。この受理番号は、その後の保険会社への保険金請求や、車の一時抹消登録などの行政手続きで必要になる重要な情報です。受理番号を忘れずに控えておきましょう。

3.2.保険会社へ連絡する

警察へ盗難届を提出した後は、加入している自動車保険の事故受付窓口や契約代理店へ速やかに連絡しましょう。

保険会社へ連絡する際は、警察で取得した盗難届の受理番号をはじめ、被害にあった正確な日時や場所、当時の車の状況などを詳細に伝える必要があります。

保険会社では、事故の報告を受けた後、保険金の支払いに向けて被害状況の調査を行います。必要な情報を漏れなく伝えておくことで、盗難被害の実態確認から、その後の保険金請求手続きまでスムーズに進めやすくなります。

なお、全損として車両保険の保険金が支払われると、その車の所有権は保険会社へ移ります。所有権の移転や登録の手続きに必要な書類を求められることがあるため、保険会社の案内に沿って速やかに対応しましょう。

3.3.必要書類の準備と車の抹消登録を行う

その後、管轄の運輸支局などで「一時抹消登録」手続きを行いましょう。車が手元にない状態であっても、公的な登録が残ったままだと自動車税(種別割)が継続して課税されるため、不要な税負担を避けるためにも、早めに手続きを行うことが大切です。

手続きには以下の書類が必要です。

  • 自動車検査証(手元に残っている場合)
  • ナンバープレート(手元に残っている場合)
  • 所有者の印鑑登録証明書(発行日から3か月以内のもの)
  • 所有者の実印
  • 理由書(自動車検査証およびナンバープレートがない場合)

理由書は自動車検査証やナンバープレートを返納できない理由を届け出るための書類です。所定の書式に、盗難届を提出した警察署名や受理番号などを記載する必要があります。

4.車の盗難被害を防ぐ方法

車の盗難被害リスクに備えるためには、自動車保険への加入と並行し、盗難被害にあわないための予防策を講じておくことも重要です。

近年、車の盗難手口は巧妙化しています。特に、「CANインベーダー」や「リレーアタック」などの特殊な機器を悪用し、ドアロック解錠やエンジン始動などを行う盗難手法が確認されています。

【盗難手口の例】

  • CANインベーダー:車内のコンピュータシステムに専用の機器をつないで自動車を制御しているシステム(Controller Area Network)に不正に侵入して車を操作する手口。
  • リレーアタック:スマートキーから発する微弱な電波を特殊機器で傍受・中継してドアロックの解除やエンジン始動を可能にする手口。

このような盗難手口への対策として、警察庁や各都道府県警察では、物理的・心理的・電子的な防犯対策を組み合わせた複数のアプローチでの防犯対策を推奨しています。

4.1.イモビライザー搭載車を選ぶ

イモビライザーとは、専用キーの電子IDが一致しないとエンジンが始動しない防犯装置です。電子IDは暗号化されているため、複製は極めて難しいとされており、搭載された車を選ぶことで、盗難リスクの軽減が期待できます。

多くの新車にはイモビライザーが標準装備されていますが、中古車では搭載の有無が車種や年式によって異なるため、購入時には確認しておきたいポイントの1つです。
また、自動車保険の保険料は、車種ごとの事故や盗難リスクなどをもとに算出される「型式別料率クラス※」の影響を受けます。型式別料率クラスが低い(盗難リスクが低い)車種では、車両保険の保険料も抑えられるというメリットがあります。

※型式別料率クラスは、過去の事故の実績により損害保険料率算出機構が決定し、毎年1回見直しを行っています。

4.2.施錠の徹底と「ボディカバー」で車種を隠す

確実な施錠は防犯の基本です。短時間の駐車であっても、車から離れる前に窓を完全に閉め、ドアロックをしましょう。

また、「自動車用ボディカバー」を使用すると外見から車種を特定しにくくなり、犯罪防止に有効です。近年は、特に高級車やランドクルーザーなどの特定車種は、新車だけでなく、年式が古い車であっても盗難被害が増えています。ボディカバーは、窃盗犯に狙われやすい車種であることのカモフラージュに役立つでしょう。

4.3.ハンドルロック・タイヤロックを装着する

「ハンドルロック」や「タイヤロック」などの防犯器具を装着すると、物理的に車を動かしにくくできるため、盗難防止に効果が期待できます。

また、防犯器具を装着していることを外から確認できるため、盗難対策を施している車であることを示すことにもつながり心理的な抑止効果もあります。

4.4.電波遮断ポーチとスマートキーの節電モードを活用する

リレーアタックによる盗難対策として、電波遮断ポーチや金属製の缶などを活用し、スマートキーから発せられる電波を遮断する方法も有効です。外出先ではもちろん、自宅でスマートキーを保管する際にも電波を遮断できるアイテムを活用しましょう。

また、スマートキー本体の操作で電波の発信を停止できる「節電モード」に切替える方法もあります。これらはスマートキーを採用している現代の車の重要な防犯対策です。

4.5.センサーライトや防犯カメラ、車止めポールを設置する

自宅の駐車場では、車が狙われにくい環境づくりを心がけることも重要です。例えば、人が近づくと自動的に点灯するセンサーライトや、防犯カメラを設置することで窃盗犯が近づきにくくなります。

また、「車止めポール」などの障害物の設置も有効です。車を敷地外へ持ち出しにくくなるだけでなく、持ち出しに時間がかかるため、窃盗犯に犯行を諦めさせる心理的な抑止効果も期待できるでしょう。

5.【Q&A】車の盗難被害で車両保険を使用する際の注意点

万が一、盗難被害にあって車両保険を使用する際は、事前に知っておきたい注意点があります。補償内容や手続きについて十分に理解していないと、思わぬトラブルや後悔につながる可能性もあります。

ここでは、車の盗難被害で車両保険を使用する際によくある質問と、その回答を紹介します。

Q.保険金が支払われるまで、どのくらいの期間がかかりますか?

A.盗難事故では、被害の報告を受けてから保険金が支払われるまでの間に、警察の捜査状況や盗難の事実確認などを踏まえた調査が行われます。

一般的には、盗難された車が一定期間発見されない場合は、全損扱いとなり、保険金の支払い手続きが進められます。ただし、全損と判断されるまでの期間や保険金が支払われるまでの期間は、保険会社や契約内容、調査状況によって異なります。

保険金を受け取るまでには、盗難状況の確認や必要書類の準備などにより、一定の期間を要する場合があるため、通勤・通学・家族の送り迎え・買い物など、当面の生活における対策法を検討しておくことが大切です。

Q.盗難で車両保険を使うと、翌年の等級はどうなりますか?

A.車の盗難被害で車両保険の保険金を受け取った場合は、「1等級ダウン事故」として扱われ、翌年のノンフリート等級が現在の等級から1つ下がります。

また、「事故有係数適用期間」が加算されるため、翌年以降の自動車保険料の割引率が小さくなり、保険料が高くなる可能性があります。保険金を受け取る際は、その後の保険料負担についても考慮しておきましょう。

Q.車両保険に加入していても保険金が支払われないケースとは?

A.基本的に盗難被害は車両保険の補償対象ですが、盗難時の状況によっては保険金が支払われない場合もあります。

例えば、車の所有者に故意または重大な過失があったと判断された場合などが挙げられます。具体例としては、次のようなケースが挙げられます。

  • エンジンをかけたまま少しの間だけ車を離れた
  • ドアをロックせずに鍵を車内に置いたままにしていた など

また、車両盗難を補償の対象外とする特約がセットされている場合も保険金は支払われません。車両保険の契約内容をきちんと把握しておくとともに、車から離れる際は窓を確実に閉め、エンジンの停止やドアがロックされていることを忘れずに確認しましょう。

Q.保険金を受け取った後に、盗まれた車が見つかった場合はどうなりますか?

A.車の盗難で保険金を受け取ると、その車の所有権は保険会社に移転されます。これは、保険金を受け取ったうえで発見された車も受け取るという「二重の利益」が生じることを防ぐためです。

しかしながら、発見された車を再び自分の手元に戻したい場合は、受け取った保険金を保険会社へ全額払戻すことで、車を返還してもらえるケースがあります。なお「保険金の支払日の翌日から約款で定められた期間内に車が発見された場合」など、返還には契約内容に応じた条件があります。

Q.「車上あらし」で車内の荷物や車の部品が盗まれた場合も補償されますか?

A.「車上あらし」の被害にあい、車内に置いていた身の回り品が盗まれた場合、通常の車両保険では補償対象外です。これらに備えるには、「車内身の回り品特約」などのオプションをセットする必要があります。ただしこうしたオプションでも一部の品目はカバーされない可能性もあるため、事前に確認しましょう。

一方で、カーナビやタイヤなど「車に固定されている部品」を取り外されて盗難された場合は、原則として車両保険の補償対象です。

いずれの場合も、ドアや窓を確実に施錠する、貴重品を車内に置いたまま車から離れない、外から見えるところに積載物を置かないなどを心がけ、車上あらし被害の抑止に努めましょう。

6.まとめ

車が盗難被害にあい、発見されなかった場合は、原則として加入している車両保険の補償対象となります。車の盗難は全損扱いとなり、自己負担額(免責金額)を設定している場合でも、契約時に設定した保険金額がそのまま支払われます。ただし、契約内容や特約の有無、盗難時の状況によっては保険金が支払われない場合もあります。今一度、加入内容を確認し、盗難被害にあいにくくするための対策をしておきましょう。また、保険金が支払われるまでには、保険会社による盗難実態の調査があるため期間を要します。車がないと通勤・通学・買い物など生活に支障をきたす可能性もあるため、その場合に向けた対策を検討しておくことも大切です。

※本コラムの記載内容は、特段の記載がない限り、損保ジャパンの保険商品ではなく、一般的な保険商品の説明としています。
※損保ジャパンの保険商品に関する内容は、2027年1月1日以降始期契約における補償内容等の概要をご説明したものです。詳しい内容については取扱代理店または損保ジャパンまでお問い合わせください。

SJI26-57201(2026.10.22)
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