1.自動車保険には3つの名義がある
自動車保険の名義には、「契約者」「記名被保険者」「車両所有者」の3つがあります。まずはそれぞれの違いと役割を整理しておきましょう。
1.1.契約者
契約者とは、保険会社と契約を結び、保険料を支払う人です。また、契約の解約や変更手続きを行う権利を持っています。
契約者は保険料の支払義務のほか、告知義務(※1)と通知義務(※2)を負います。契約者が故意または重大な過失によって正しく告知・通知をしなかった場合は、契約が解除され保険金が支払われないこともあるため注意が必要です。
※1:告知義務……契約時に保険会社から申込書に記載して告知することを求められた事項(告知事項)について、事実を正確に告げる義務
※2:通知義務……告知事項のうち、危険増加(危険が増し保険料の不足が生じる状態)に関するもので、保険会社が通知を求めた事項(通知事項)について、遅滞なくその事実を通知する義務
なお、契約者は記名被保険者や車両所有者と同一である必要はなく、次のような契約も可能です。
- 主に妻が使用する車(夫所有)の自動車保険を、夫が契約するケース
契約者・車両所有者=夫、記名被保険者=妻 - 主に子どもが使用する車(子ども所有)の自動車保険を、親が契約するケース
契約者=親、記名被保険者・車両所有者=子
1.2.記名被保険者
記名被保険者とは、契約の対象となっている車を主に使用する人のことです。保険証券の「記名被保険者」欄に記載されています。記名被保険者は自動車保険の補償の中心であり、契約者とともに告知義務、通知義務を負います。
補償の対象となる人の範囲は記名被保険者が基準となり、記名被保険者の年齢や運転免許証の色などが保険料に影響します。
例えば、運転者限定特約(本人・配偶者※)をセットした場合、夫または妻が運転中の事故が補償の対象ですが、車を主に使用する夫または妻のいずれか一方を記名被保険者に指定する必要があります。設定した記名被保険者の年齢や免許の色によって保険料が決まります。
※損保ジャパンでは配偶者には内縁の相手方および同性のパートナーを含みます。以下、同様とします。
1.3.車両所有者
車両所有者とは、契約の対象となっている車を所有している人のことを指し、原則として自動車検査証(以下、車検証)の「所有者」欄に記載されている人です。電子車検証の場合は所有者の情報がICタグに格納されており、「自動車検査証記録事項」に記載されています。
車両所有者は必ずしも契約者や記名被保険者と同一である必要はなく、次のような契約も可能です。
- 親の所有する車を子どもが使用する場合
契約者・記名被保険者=子、車両所有者=親 - ローンを組み、所有権留保条項付売買契約(代金が完済されるまでは売主に所有権を留めておく契約)で車を購入した場合
契約者・被保険者=購入者(使用者)、車両所有者=自動車販売業者やローン会社 - リース契約で車を借りている場合
契約者・被保険者=使用者(借主)、車両所有者=リース会社(貸主)
車検証の所有者と実際の所有者(所有実態)が異なっている場合は、所有実態に合わせて車の名義変更(車検証の所有者の変更)が必要です。自動車保険の車両所有者を変更する前に、管轄の運輸支局などで車の名義変更を行っておきましょう。
2.自動車保険の名義変更が必要になるのはどんなとき?
自動車保険の名義変更が必要になるのは、「契約者」「記名被保険者」「車両所有者」のいずれかに変更があったときです。どのようなケースで名義変更が必要になるのか、それぞれの名義について具体的にみていきましょう。
2.1.保険料を支払う人「契約者」が変わる場合
契約者の名義変更が必要になるのは、例えば次のようなケースです。
- 契約者が亡くなった場合
契約者が亡くなった場合は、契約者を法定相続人に変更する手続きが必要です。自動車保険を解約する場合も、契約者を法定相続人に変更したうえで、契約者となった法定相続人が解約手続きを行います。 - 子どもが経済的に独立して子ども自身が保険料を支払うようになった場合
学生で収入が少ない場合など、親が子どもの車の自動車保険を契約して保険料を支払っているケースがあります。このようなケースでは、子どもが経済的に独立し、子ども自身が保険料を支払うようになったときに、親から子どもへの契約者変更が必要です。
2.2.主に使用する人「記名被保険者」が変わる場合
記名被保険者の名義変更が必要になるのは、例えば次のようなケースです。
- 子どもが自分の車を購入して主に車を使用する人が親に変わった場合
家族共有の車(契約者・所有者=親(夫)、記名被保険者=子ども)を主に使用していた子どもが自分の車を購入。もとの車を主に使用する人が親(夫)に変わった場合は、記名被保険者を夫に変更する必要があります。 - 夫の単身赴任に伴って主に車を使用する人が夫から妻に変わった場合
夫が単身赴任になり、これまで主に夫が使用していた車を妻が主に使用するようになった場合は、実態に合わせて記名被保険者を夫から妻に変更する必要があります。
2.3.車の持ち主「車両所有者」が変わる場合
車両所有者の名義変更が必要になるのは、例えば次のようなケースです。
- 子どもが親の所有していた車を取得した場合
譲渡や相続などで子どもが親の所有していた車を取得した場合には、車両所有者を親から子どもに変更する必要があります。 - 自動車ローンを完済した場合
ローンで車を購入した場合、ローンを完済するまでは車の所有権は買主に移らず売主に残り、自動車販売業者やローン会社が車両所有者となるケースが一般的です。ローンを完済すると車の所有権が買主に移るため、車両所有者の変更が必要になります。
3.自動車保険の記名被保険者を変更する際に等級はどうなる?
記名被保険者の変更を伴う名義変更では、次のいずれかに該当する場合にノンフリート等級(以下「等級」、事故有係数適用期間を含みます)を引き継ぐことができます。
- 記名被保険者の配偶者への変更
- 記名被保険者の同居の親族への変更
- 記名被保険者の配偶者の同居の親族への変更
上記以外の記名被保険者の変更は、「等級」を引き継ぐことができません。
例えば、子どもが新たに車を購入して父親が記名被保険者である自動車保険の等級を引き継ぎたい場合、父親、またはその配偶者である母親と「同居」している子どもへ記名被保険者を変更するケースに限り等級の引き継ぎが可能です。父親または母親と「別居」している子どもへ記名被保険者を変更する場合は、等級を引き継ぐことができません。親族間で等級を引き継ぐためには、「同居」していることがポイントです。
新たに購入した車に等級を引き継ぐ場合は、記名被保険者を子どもに変更する前に、自動車保険の契約車両(=補償対象となる車)を購入した車に変更しておく必要があります(この手続きを「車両入替」といいます)。車両入替によってもとの契約車両(親の車)は無保険になるため、親は新規で自動車保険を契約する必要があります。
<デメリット等級や事故有係数適用期間が残っている場合>
等級が1〜5等級(いわゆる「デメリット等級」)の場合や「事故有係数適用期間」(無事故のときよりも低い割引率が適用される期間)が残っている場合は、車両所有者が変わらない限り、記名被保険者を誰に変更しても等級が引き継がれます。
つまり不利な等級(デメリット等級や事故有係数適用期間)を意図的にリセットできない仕組みになっています。
自動車保険の等級を引き継ぐ方法や注意点について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
4.自動車保険の名義変更の流れ
自動車保険の名義変更は、次のような流れで行います。
- 保険会社に必要書類を確認する
名義変更が必要になったときは、現在の契約者ご本人から、契約している保険会社または保険代理店に名義変更したい旨(変更理由)を伝えます。必要となる書類は保険会社や名義変更の内容によって異なるので注意しましょう。 - 必要書類を提出する
名義変更に必要となる書類を揃えて、契約している保険会社または保険代理店に提出します。記名被保険者の変更によって保険料が変わる場合は、追加保険料の支払い、または返金が発生することがあります。 - 変更手続き完了後、契約内容に間違いがないか確認する
変更手続きの完了後は、手続きが完了したお知らせが届きます。
例えば、損保ジャパンの場合、名義変更手続きが完了すると「変更手続き完了のお知らせ(兼変更確認書)」が届きます。
お知らせが届いたら、変更後の契約内容に間違いがないか確認をしましょう。もし間違いがある場合は、すぐに保険会社または保険代理店に連絡して、正しい内容に訂正する必要があります。
5.自動車保険の名義変更で注意すべき点
最後に自動車保険の名義変更を行う際に注意していただきたいポイントを2つ紹介します。
5.1.変更漏れがないように気をつける
名義変更が必要になったときは、遅滞なく保険会社または保険代理店に連絡して、変更漏れがないようにしなければなりません。
変更手続き前に事故を起こしてしまった場合は、保険金が支払われない可能性もあるため注意が必要です。
5.2.事前に見積りをしておく
誰が車を運転するかは事故リスクに大きく影響する要素であり、記名被保険者が変われば、保険料を算出する基準も変更後の記名被保険者に変わります。場合によっては保険料が上がることがあるため、手続きの前に保険会社や保険代理店に依頼して、見積りをとり、変更後の保険料がどのくらい変動するかを把握してから手続きを進めることが大切です。
特に次のようなケースでは保険料が大幅にアップする可能性があるため注意が必要です。
- 等級を引き継げない場合
例:親から別居の子どもに記名被保険者を変更すると、親の等級が20等級でも、変更後の等級は6等級となり、保険料が上がる。 - 記名被保険者の年齢が若くなる場合
例:親(50歳)から子ども(18歳)に記名被保険者を変更すると、記名被保険者年齢料率区分が「50歳〜54歳」から「23歳以下」になり、保険料が変わる。 - 記名被保険者の免許証の色がゴールドからブルーやグリーンへ変更になる場合
例:父親(免許証の色:ゴールド)から子ども(同:ブルー)に記名被保険者を変更すると、年齢料率区分の変更だけでなく、ゴールド免許割引についても適用されなくなり保険料が上がる。
など
保険料が上がるからといって、変更があったのに名義変更の手続きをしないわけにはいきません。名義変更が必要になったときには、事前に代理店や保険会社へ連絡し、最適な方法について相談するとよいでしょう。例えば、子どもの引っ越しに伴い親が所有する車を譲り受ける場合は、子どもが同居しているうちに車の譲渡を済ませ、自動車保険の記名被保険者を子どもに変更しておけば等級を引き継ぐことができ、保険料を抑えられる可能性があります(損保ジャパンでは、自動車保険の契約期間の初日に子どもが同居していたことを客観的に確認できる資料を提出することで、別居後に記名被保険者を変更しても等級を引き継げる場合があります)。
まとめ
自動車保険の「契約者」「記名被保険者」「車両所有者」のいずれかに変更があったときには、名義変更の手続きが必要です。特に重要なのは、補償の中心となる「記名被保険者」の変更です。記名被保険者の変更は、補償の対象となる人の範囲や保険料にも影響します。一定の要件を満たす場合は、記名被保険者の変更後も等級を引き継ぐことができ、保険料を抑えられる可能性があるというメリットがあります。
一方で、名義変更をしないまま事故を起こしてしまうと、保険金が支払われなかったり、変更前の契約条件が適用されたりするおそれもあるため、名義変更の手続きは遅滞なく正確に行いましょう。
※本コラムの記載内容は、特段の記載がない限り、損保ジャパンの保険商品ではなく、一般的な保険商品の説明としています。
※損保ジャパンの保険商品に関する内容は、2026年1月1日以降始期契約における補償内容等の概要をご説明したものです。詳しい内容については取扱代理店または損保ジャパンまでお問い合わせください。
SJ25-57059(2026.01.06)
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