キャンプ経験は防災に役立つ?停電・断水…“もしも”を乗り切る実践知を専門家が解説
もしも大きな災害が起きたら。普段からアウトドアを楽しむキャンパーの皆さんは、この不安に対して少しだけ「心強い武器」を持っているかもしれません。キャンプと防災には、実は多くの共通点があるからです。
今回は、防災に役立つ実践的な知識を、防災とキャンプの専門家のお二人にお聞きしました。
今回話を伺ったのは…
高荷 智也さん
合同会社ソナエルワークス 備え・防災アドバイザー

「自分と家族が死なないための防災」をテーマに、個人向けの家庭防災から企業のBCPまで、実践的な防災対策の普及・啓発を行う防災アドバイザー。
寒川 一さん
アウトドアライフアドバイザー

自然災害が日常化した現代において、「アウトドアの知恵を暮らしに取り入れること」をテーマに活動するアウトドアライフアドバイザー。
キャンプと防災の共通点とは?

災害時には、電気、ガス、水道といった普段頼っている生活基盤が使えなくなります。
アウトドアライフアドバイザーの寒川さんは、「災害時の状況は、ライフラインに頼らない衣食住を実現するキャンプと非常に近い」と指摘します。そのため、例えば停電時でも、照明の準備や安全な火のおこし方を知っているキャンパーは、冷静に対処しやすくなります。
防災専門家の高荷さんも、この経験の差は大きいと話します。限られた資源の中で生活を維持するキャンプの経験は、災害時の生活を乗り越えるための重要な実践力となるはずです。
ケース別!キャンパーの知恵と防災の視点から見る、災害時に役立つ対処法
ケース①停電

——――家庭で最低限備えておくべきことは何ですか?
高荷さん:乾電池式のLEDライト、小型ラジオ、スマートフォン充電器の3点は揃えておきたいですね。どれもすぐに準備できますし、乾電池のサイズを統一しておけば、管理の負担も減らせます。余裕があれば、ソーラーパネルやポータブル電源も用意しておくと、停電が長引いてもスマートフォンが使えるので安心して過ごせますよ。
——――キャンプ用品で代用できるものや工夫はありますか?
寒川さん:キャンパー目線でおすすめしたいのは、ヘッドライトです。両手が自由に使えるので、暗闇での移動や作業がスムーズになりますよ。最近はスマートフォンの充電にも使う「USBケーブル(Type-BやType-C)」で直接充電できるモデルも増えていて、選べる商品が多くなりました。
あと、ぜひ覚えておいてほしいのが、LEDライトにコンビニ袋を被せるテクニックで、キャンプのランタンみたいに部屋全体を照らせるんです。真っ暗な部屋にいくつか照明があると、小さなお子さんにも安心感を与えることができます。
ケース②断水

——――必要な水の量や考え方について教えてください。
高荷さん:災害が起きる前から水を確保しておきましょう。「1人あたり1日3L」を想定して、最低でも3日分、できれば7日分あると安心です。スーパーに売っている2Lペットボトルでいえば、6本から12本は置いておきたいですね。あわせて、給水支援を受けられるように、ポリタンクや給水タンクも用意しておくと重宝しますよ。
——――水を確保・節約するための実践的な方法はありますか?
寒川さん:お風呂の汲み置き水(約200L)は、小型の浄水器(中膜フィルター)を通せば、煮沸なしで飲める場合もあるので、いざというときのために、ぜひ残しておきましょう。
また、災害時は徹底した節水意識が必要です。残量がひと目でわかる透明な容器で管理し、使いすぎを防ぐ工夫をしましょう。他にも水を使わない料理メニューの考案や、ビニール手袋で手洗いを減らすといった対策を組み合わせることで、水不足を最小限に抑えられます。
ケース③調理ができない

——――備蓄の考え方やポイントを教えてください。
高荷さん:災害発生直後は調理できなくなる可能性があるので、調理せずに食べられるものを用意しましょう。備蓄食料はスプーン付きでそのまま食べられるものを選び、最低3日分あると安心です。中でも、ゼリー飲料や羊羹は常温でも保存でき、コンパクトで管理がしやすく、カロリー補給にも向いています。他にも、缶詰のパンや温めがいらないレトルト食などもおすすめですね。
——――調理が難しい状況での工夫はありますか?
寒川さん:アウトドアでは、フリーズドライ食品やエナジーバーといった行動食がよく食べられていますね。あとは洗い物が出ないドライフードも鉄板です。あまり知られていませんが、ドライフードは簡単に自作できるので、災害時にも役立ちます。他には、常温保存ができる野菜ジュースを活用するのもおすすめです。調理に使えたり、災害時に不足しがちなビタミンCを摂取できたりと便利に使えます。
ケース④トイレが使えない

——――家庭での基本的な対策を教えてください。
高荷さん:水や食料と同じように簡易トイレの備蓄が基本になりますね。1人あたり50回分、できれば100回分くらいあれば1週間ほど困りません。自宅の便器に袋と凝固剤をセットすれば、簡易トイレが完成します。
——――アウトドア視点での代替方法があれば教えてください。
寒川さん:凝固剤が用意できない場合は、穴を掘るという手もあります。排泄物が分解される深さ(20〜30cm)を確保すること、汚染しないよう水源から最低50mは離れること、そして使用済みトイレットペーパーは持ち帰ること。これらのマナーは必ず守りましょう。車中泊の場合は、広口ボトルや目隠しのポンチョを使って用を足すこともありますね。最近は、女性用の広口ボトルもよく見るようになりました。
ケース⑤寒さ・暑さ

——――主な対策について教えてください。
高荷さん:寒冷地では、灯油ストーブやカセットガスストーブの準備が必要です。雨や雪で濡れると低体温症を引き起こすので、全身を包むレインウェアや、濡れた体を拭くタオルや着替えの準備も欠かせません。暑い場合は、飲料水やスポーツドリンクの粉末を用意し、電解質(ナトリウム・カリウム)を補給します。モバイルバッテリーでハンディファンを充電し、風で体温を下げることでも、熱中症を防ぐことができますよ。
——――電気が使えない環境での体温管理の工夫はありますか?
寒川さん:寒冷地での体温管理で重要なのは、重ね着(レイヤード)です。汗を処理できる肌着、体温を上げる中間着、外界から身を守るアウターを組み合わせて調整できれば、実は枚数はそこまで必要じゃないんです。重ね着でカバーできない首・手首・足首は皮膚が薄いので、重点的に温める(もしくは冷やすこと)ことで、その効果を体感できますよ。
ケース⑥ペットがいる

——――避難時に気を付けるべきポイントを教えてください。
高荷さん:ペットとの避難所生活はハードルが高いため、飼い主さんは「避難所に行かなくて済む備え」を基本にする必要があります。
まずはハザードマップを確認し、なるべく浸水リスクの低い場所に住むなど、日頃から災害に強い住環境を整えておきましょう。その上で、災害時には「自宅が安全なら在宅避難を継続する」という選択肢を最優先に考えてください。もちろん、いざというときのために、ケージ慣れや避難用品の準備も忘れてはいけません。
——――実践的な備えや工夫があれば教えてください。
寒川さん:ペットを飼っているキャンパーは、プライベート空間を確保できるクルマに避難をする方が多いですね。あとは家族同然の存在なので、水・食料・トイレなども同じように準備しなければなりません。
専門家がおすすめする防災・キャンプ兼用グッズ

——――最後に、お二人のおすすめのグッズを教えてください。
寒川さん:価格に関わらず、まずはホイッスルやエマージェンシーブランケットを手元に置くことを提案します。
高荷さん:家庭内での防災訓練として、春夏秋用の寝袋を用意し、自宅で寝袋泊を試してみることを推奨します。普段の趣味や生活の中で実践経験を積むことで、災害時の対応力が向上するでしょう。
防災対策は難しくない。楽しむことが大切

<編集後記>
防災グッズは想像以上に種類が多く、「何から始めればいいのか」と身構えてしまうかもしれません。しかし、お二人のお話を伺う中で、防災とは堅苦しい義務ではなく、趣味や日常の延長線上で楽しみながら取り入れていけるものだと気づきました。
例えば、普段の買い物で「もしもの時にも役立つかな?」と缶詰やレトルト食品に目を向けてみたり、持っているグッズの乾電池のサイズを気にしてみたり、そうした日々の小さな意識の積み重ねが、立派な防災対策になるのです。
そして、最も重要なのは、グッズを揃えるだけでなく、実際に使って「慣れる」こと。次回のキャンプでは、ぜひ防災シミュレーションを取り入れてみてください。
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