1. 自動車保険の弁護士費用特約とは
ここでは自動車保険の弁護士費用特約の補償内容や、特約を付けている人の割合について紹介します。
1-1. 補償内容
弁護士費用特約とは、弁護士への相談・委任の費用を補償する特約のことです。「もらい事故」のように自分に過失がない自動車事故に遭った場合、法律によって保険会社が相手と直接交渉することが制限されていることから、自分で相手と交渉しなければなりません。しかし、相手がスムーズに損害賠償請求に応じてくれるとは限らず、時には交渉が難航することもあるでしょう。そのような場合に弁護士費用特約を付けておくことで、弁護士に交渉を依頼するための費用や法律相談費用等を受け取れます。
1-2. 弁護士費用特約を付けている人は増加傾向
自動車保険に弁護士費用特約を付けている人はどのくらいなのかと疑問に思う人も多いのではないでしょうか。日本弁護士連合会が公表した調査結果によると、近年自動車保険の契約時に弁護士費用特約を付ける人は年々増加傾向にあることがわかります。
1-3. どんな人に必要?
弁護士費用特約はオプションで、追加は任意であるため、必要がないと感じれば無理に加入する必要はありません。特に車を運転する機会が少ない人にとっては、加入する必要性をあまり感じないでしょう。一方で日常的に車を運転する人や交通量の多い地域に住んでいる場合は、万が一に備えて弁護士費用特約に加入することをおすすめします。
2. 自動車保険の弁護士費用特約が役立つシーン
ここでは自動車保険の弁護士費用特約が役立つシーンについて、3つ取り上げてみました。
2-1. もらい事故の被害にあった場合
追突事故の被害に遭って自身の過失割合が0%となった場合は、保険会社は加害者側と直接交渉を行うことができません。保険会社に被害者への賠償義務(保険金支払義務)が発生しない場合に、保険会社が被害者側と直接交渉することは弁護士法に違反してしまうためです。
そのため、車の損傷やケガを負ったとしても、自分で交渉しなければなりません。加害者側は保険会社を通じて交渉してくるため、自分ひとりで対応するのは困難でしょう。こうしたケースにおいて弁護士費用特約を付けていれば、相談、交渉の委任や訴訟に係る費用が補償されるため、法律の専門家に安心して相談できます。
2-2. 加害者になってしまい刑事事件に発展した場合
弁護士費用特約は加害者側になった場合でも使えるケースがあります。たとえば、以下のような刑事事件に発展した場合です。
・被害者が死亡した
・自身が起訴された(略式命令の請求をされた場合は除く)
このような事案が生じた際、弁護士費用特約によって弁護士費用や法律相談費用などを受け取れます。
2-3. 相手との交渉が難航している場合
交通事故の場合、加害者側と被害者側の主張が噛み合わず、交渉が長引くケースも少なくありません。本人同士では解決できない場合に、プロの弁護士が交渉に立つことでスムーズにいく可能性が高まります。
3. 自動車保険の弁護士費用特約を付ける際の注意点
自動車保険の弁護士費用特約を付加する際、注意すべき点は4つあります。
3-1. 補償費用に上限がある
契約中であれば補償が何度でも受けられるかというとそうではありません。保険金にはある一定の上限が設けられているため、上限に達した場合の差額は自己負担になるので注意が必要です。
3-2. 補償が適用されないケースもある
以下のケースに該当した場合、原則として補償が適用されません。
・無免許
・重大な過失による事故
・台風や洪水、地震などの自然災害 など
「保険金が受け取れると思ったのに受け取れなかった」という事態に陥らないためにも、加入前に補償範囲について把握しておきましょう。
3-3. 補償が重複していないか確認する
家族で複数車を所有している場合は、補償が重複していないか確認することが大切です。弁護士費用特約は、所有する自動車のどちらかに付けることで、契約者と家族が補償の対象となります。なお、家族が所有している車の契約者がそれぞれ異なる場合、補償対象者の範囲が変わるケースがあるため、事前に契約内容を確認しておきましょう。
3-4. 弁護士を選ぶときに保険会社の承認がいるケースも
弁護士費用特約を利用する際、原則として契約者が自由に弁護士を選べます。しかし、保険会社によっては承認が必要なケースがあるため注意が必要です。
4. まとめ
今回の記事では、弁護士費用特約の必要性や、加入する際の注意点についてお伝えしました。
弁護士費用特約は、保険会社では対応できない事故やトラブルが起きた際に役立ちます。弁護士に依頼するとなると、相談料や着手金など多額の費用が発生するでしょう。そのような費用を保険金でカバーできることから、自動車保険に弁護士費用特約を付ける人は年々増加傾向にあります。
なお、弁護士費用特約を付ける場合は、補償費用について十分に把握しておくほか、家族内で補償が重複していないか事前に確認しておくことが大切です。万が一の際に自分や家族を守るためにも、必要に応じて弁護士費用特約を付けることを検討するとよいでしょう。
※このコラムでご案内した内容は概要を説明したものです。詳細につきましては、取扱代理店または引受保険会社までお問い合わせください。なお、補償の内容・取扱い・特約名称等は、引受保険会社により異なります。詳細は各引受保険会社までお問い合わせください。
SJ23-05208(2023.7.26)