静物画とゴッホで"二度美味しい"展覧会に

ゴッホと静物画展の様子

―小林さん、最終回となる今回はSOMPO美術館で開催中の展覧会「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」の見どころについて教えてください!

小林:はい。よろしくおねがいします。

―「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」はどのような展覧会ですか?

小林:キャッチコピーは「静物画を見なければゴッホは語れない」です。ゴッホの静物画はもちろん、17世紀を中心とした他の人気画家の静物画も多数展示しています。

―なぜあえて、ゴッホと静物画に着目したのでしょうか?

小林:ゴッホの静物画と17世紀の静物画を並べることで、見えてくるものがあるんですね。その1つは静物画の起源と歴史です。静物画は意外と歴史が浅く、17世紀にオランダでジャンルとして成立したと言われています。もう1つはその中にゴッホの作品を当てはめることで、ゴッホと他の画家や静物画との関係性が明らかになり、「ゴッホがいかにしてゴッホになったか」が見えてきます。実はゴッホ自身は当初静物画をあまり重視していなくて、練習のツール程度にしか考えていなかったんです。ところが、結果的には自他ともに認める代表作「ひまわり」という最高の静物画を完成させるに至る……その過程がおもしろいですね。静物画の歴史とゴッホの歴史で、二度美味しい展覧会です(笑)。

「生きている間にはもう見られない」目玉展示とは!?

ゴッホと静物画展の様子

―美術オンチの僕もだんだん興味がわいてきました!そんな今回の展覧会、最大の目玉作品といえばなんでしょうか…?

小林:それはズバリ、「ひまわり」と「アイリス」の競演ですね。当館が収蔵する「ひまわり」と、オランダのファン・ゴッホ美術館からお借りした「アイリス」が、横並びに並んでいるんです。このツーショットはかなり貴重で、私自身、生きている間にはもう見られないと思っています(笑)。

―まさに2大スターの競演といった感じですね!では、今回の展覧会で小林さんの個人的な"推し作品"といえば……?

小林:いや~、本当は展示作品全部が推しと言いたいところなんですけれども…(笑)。強いて挙げれば、「アイリス」の隣にあるイスラエルスという画家の作品です。その画中画(絵の中に描かれた絵)としてゴッホの「ひまわり」が描かれていて、非常に面白いんですよね。それからゴーギャンの「花束」でしょうか。この作品を描いた頃のゴーギャンは私生活がドン底でした。娘は亡くなり、金銭的な問題も抱え、自分の体調も悪い……。そんな中で、よくぞこんなに美しく、力強い絵を描いたものだと感心させられます。

ゴーギャン作品「花束」
▲ゴーギャン「花束」1897年 マルモッタン・モネ美術館、
パリ Musée Marmottan Monet, Paris, France / Bridgeman Images

"本音丸出し"の手紙を読んで美術館へ……

インタビューに応じる学芸員

―「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」をより楽しむコツはありますか?

小林:事前にゴッホの書簡集を読んでおくと、各作品が描かれた背景などが理解できて、より楽しめると思います。ゴッホは生涯にわたり、非常に多くの手紙を家族や友人に書きました。それらの手紙を日本語訳してまとめた書簡集がいくつか出版されているんです。特に短くまとめられて、図版も多く使われている読みやすいものを選んで読んでいただくとよいかと思います。当然ながらゴッホは出版されるとは思わずに書いているので、本音が丸出しの手紙なんですよ(笑)。

―今どきは本やネットで、ゴッホの絵を見る機会はたくさんありますよね。それでもあえて、SOMPO美術館に足を運んで作品を見る価値とはなんでしょうか?

小林:肉眼で本物の絵を見ないと気付かないことって、想像以上にたくさんあるんです。たとえば各画家のサインがどこにどう書いてある……とか、こんな所に小さな花が描かれていた……とか。そうした発見を楽しんでいただきたいです。それから大きさですね。絵の大きさが生む迫力は写真では味わえません。小さいと想像していた絵が意外に大きくて、その迫力に息をのむ……といったこともよくあり、作品に対するイメージが変わると思います。

―それでは、最後にゴッホに興味を持っていただけた皆様に一言おねがいします!

小林:「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」は全国を巡回するような展覧会ではなく、今しか、SOMPO美術館でしか見られませんので、ぜひお越しください!普段、美術館にあまり行かないという方も、楽な服装で、お気軽にどうぞ。美術の知識がない方にも、音声ガイドや解説文で十分に楽しんでいただけるよう、私たちもがんばりました。会期終了間際は混みますので、お早めのご来場をおすすめします(笑)!

―僕もぜひ行きたいと思います!小林さん、今日はありがとうございました!

小林:ありがとうございました!

SOMPO美術館
「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」

ゴッホと静物画展の様子

※本展示会は終了しました。
会期:2023年10月17日(火)~2024年1月21日(日)
開館時間:10時~18時(ただし12月8日(金)は20時まで)
※最終入場は閉館30分前まで
会場:SOMPO美術館
〒160-8338 東京都新宿区西新宿1-26-1
(アクセス)
JR新宿駅西口、丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、大江戸線新宿西口駅より徒歩5分