整備さえすれば長く乗れるけど……

まずは、「クルマの寿命とは何か」を考えてみましょう。クルマはご存知のとおり、機械です。経年劣化する部品もあれば、消耗や摩耗によって寿命を迎える部品もあります。使用状況により、破損する部品もあるでしょう。

このように言ってしまうと元も子もありませんが、メンテナンスをしっかりして、換えるべき部品を交換していれば、20年でも30年でもクルマは使えます。

でも、そこに至るまでには幾度もの整備を行う必要がありますし、ときには路上で動かなくなるなど予期せぬトラブルが発生するかもしれません。クルマの寿命は、整備にかける費用や手間とトラブルリスクのバランスを考えた、“乗り換えどき”のことだと考えるといいでしょう。

たとえば、13年乗ったクルマが故障したとします。このとき、「30万円かけて整備すればまだ乗れますよ」と言われたとしたら、あなたならどうするでしょうか?「下取りに出しても値段のつかないクルマだし、30万円もかかるなら買い替えようかな」と思う人も多いのではないでしょうか。

車を整備している様子

また、長く乗っていく中では、経年劣化や消耗・摩耗によって交換が必要な部品がいくつも出てきます。一回の整備代・修理代が3万円程度だったとしても、そうした出費がたびたび起こるようだと、整備を手配する手間もかかり、買い替えを考えるようになるかもしれません。「走行中に故障が発生して、怖い思いをしたから買い替える」という人もいます。

要は、機械としての寿命よりも、「どこまで整備に付き合っていくか」なのです。旧車やヴィンテージカーと言われるような古いクルマのオーナーさんの中には、車両価格を超える金額を整備に使っている人も少なくありませんが、それは「それでもそのクルマを維持したい」という情熱があってこそ。日常的に使う実用車なら、適正なタイミングで乗り換えた方が安心感があり、新しいクルマの便利さや快適さを享受できると言えます。

クルマの寿命よりも大事な“変化”を考えよう

では、新車を購入したとして、現実的な乗り換えサイクルが何年ぐらいなのかを考えてみましょう。

現代のクルマは新車登録から5年程度では、よほど走行距離が多かったり(それこそ10万キロなど)、手荒に扱ったりしていなければ、法令点検や車検ごとの整備だけで、大きな出費をともなう整備や故障が必要となることはあまりありません。

年間の走行距離が1万キロ前後なら、7~8年ぐらいは調子よく走ってくれるはず。ここまでに必要な大きな出費は、バッテリーとタイヤの交換ぐらいかもしれません。

徐々に整備の頻度や重度が高くなっていくのは、経年劣化の面では10年、消耗・摩耗の面では10万キロ前後でしょう。つまり、かつての「10年10万キロ」という目安は、あながち間違いではないと言えるのです。

たとえ2万キロしか走っていなかったとしても、10年も経てば経年劣化で交換が必要になる部品は出てきますし、3年目の新しいクルマでも10万キロを超えて走っているようであれば、各部の消耗は進んでいますから、それなりのメンテナンスを要します。

そうなれば、「10年もしくは10万キロのうち早く到達したほう」を、買い替えタイミングと考えることができます。しかし、単純にクルマの整備状況だけで語れないのが、カーライフというもの。

自家用車の前で笑顔の家族4人

5年先、10年先を考えてみてください。単身者なら結婚や出産をしているかもしれません。すでにファミリーの方は、子どもの成長とともに大きなクルマが必要となったり、子どもの独立によって大きなクルマが不要となったりしている可能性もあるものです。

「新婚のうちは安い中古車に乗って、子どもができたら長く乗れる新車に乗り換えよう」とか、「あと3年もすると子どもと出かける機会も減るだろうから、それまで今のミニバンに乗り続けよう」といったように、今と数年後の“暮らしの変化”から、乗り換えタイミングを考えることをオススメします。

余談ですが、10年もしくは10万キロを経過したクルマは、中古車としては底値となっていきます。こうした安い中古車を買って「壊れたら乗り換える」のも、1つの方法です(あくまで参考までに、ですが)。

クルマの寿命よりも考えたいライフステージ

現代のクルマが10年程度で寿命を迎えることは、一般的な使用過程ではまずないと言えます。

しかし、年月や走行距離を重ねれば、さまざまな箇所の整備や部品交換が必要になってくるもの。そこで発生する費用や手間が負担になってきたとき、あるいは高額な整備費が必要になったときが、“そのクルマの寿命”と考えるといいでしょう。

これからクルマを持とうという人は、まずはこの先のライフステージの変化を考えてみる。今、すでにクルマを持っている人は、そのクルマにあとどれぐらい乗るのかを考えてみると、無駄なくいつでも快適なクルマに乗ることができるはずです。

文・木谷宗義/type-e、編集:ツキナガユイカ+type-e

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