1.車のスタックとは?起きやすい場所や原因
そもそも「スタック」とはどのような状態を指すのか、どのような状況で発生しやすいトラブルなのかを知っておきましょう。
1.1.「スタック」とはどのような状態?
スタック(stuck)とは、滑りやすく軟弱な路面などでタイヤのグリップ力が低下し、アクセルを踏んでもタイヤが空転して、車が前にも後ろにも進まない状態をいいます。
1.2.スタックが起きやすい場所や原因
スタックは、泥道やぬかるみ、砂浜・砂地、雪道など、滑りやすく軟弱な路面で起きやすいトラブルです。
1.2.1.泥道やぬかるみ
雨が降った後の未舗装路や農道、工事現場周辺など、泥道やぬかるみはスタックが起きやすい場所です。柔らかい泥はタイヤが沈み込みやすく、タイヤが空転するほどに轍(わだち)が深くなって脱出が難しくなってしまいます。
1.2.2.砂浜・砂地
砂は崩れやすく、車の重みでタイヤが沈み込みやすいほか、路面とタイヤの間の摩擦力が著しく低下してタイヤが空転しやすいなど、スタックが起こる条件が揃っています。
1.2.3.雪道
タイヤがスリップしたり、新雪にはまったりすることでスタックが起こります。雪の塊に車体の底が乗り上げタイヤが浮いてしまう、いわゆる「亀の子状態」になって動けなくなるケースもあります。
2.【ケース別】車がスタックしたときの抜け出し方・対処法
車がスタックしたときは、冷静に対処することが大切です。焦ってアクセルを踏み込んでしまうと、タイヤが空転してますます深く沈み込み、状況はさらに悪化してしまいます。まずは落ち着いて安全を確保し、ここで紹介する対処法を実践してみましょう。
なお、自力で脱出を試みる際に無理は禁物です。対処を試みても状況が改善しない場合や、自力での対処に不安を感じる場合には、早めにJAFや自動車保険のロードサービスなどへ連絡しましょう。
2.1.タイヤがスリップして動けなくなった場合
タイヤがスリップして動けなくなっても、状況に応じた対処を行えば脱出できる場合があります。まずは「もみ出し」をはじめ、次のような方法を試してみましょう。
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もみ出し
小刻みに前進と後退を繰り返して車体を振り子のように動かす「もみ出し」という方法が有効です。前後運動によってタイヤ周辺の路面を踏み固め、反動で脱出を試みます。 -
タイヤチェーンや脱出アイテムを使う
それでも脱出できない場合は、タイヤチェーンやスタックステップ(脱出ボード)などをタイヤの接地部分の奥まで差し込み、ゆっくりアクセルを踏み込んで発進する方法が有効です。 -
路面の状況に応じて砂や水を使う
雪道では、タイヤの下と外周に砂を振りかけることでタイヤのグリップ力が高まり、脱出しやすくなります。砂浜の場合は、タイヤの下を水で湿らせると砂が締まり、グリップ力の向上が期待できます。 -
トラクションコントロール(TRC)をオフにしてみる
「トラクションコントロール(TRC)※」の状態(オン/オフ)も確認しましょう。TRCのスイッチは、一般的にステアリング(ハンドル)右下のインパネあるいはシフトレバー付近に設置されています(車が横滑りしているようなアイコン)。TRCはタイヤの空転を抑える安全機能ですが、スタック時にはこの制御が逆効果になることがあります。TRCが作動している場合は一時的にオフにすることで、十分な駆動力が得られて脱出できるケースもあります。
ただし脱出後は、忘れずにTRCをオンへ戻しましょう。
※メーカーによって呼称が異なります。
2.2.タイヤが埋もれてしまって動けなくなった場合
タイヤが埋もれて動かなくなってしまった場合は、まず、タイヤ前後の雪や泥などをスコップで取り除いた後、ゆっくり発進してみましょう。タイヤが空転する場合は、「スリップして動けなくなった場合」と同様の方法で脱出を試みます。
2.3.タイヤや車体が乗り上げて動けなくなった場合
タイヤや車体が雪の塊などに乗り上げて動かなくなってしまった場合は、まず、タイヤが接地しているかどうかを確認してください。接地していない場合は、車体の下や周辺の雪などをスコップでかき出して、タイヤを接地させます。タイヤが接地したら、「スリップして動けなくなった場合」と同様の方法で脱出を試みます。
2.4.落輪(脱輪)して動けなくなった場合
FF(前輪駆動)車で、後輪の片方が溝などに落輪した程度であれば、車が進む方向の安全を十分に確認したうえで、後ろから人が押すだけでも脱出できる可能性があります。
駆動輪が落輪した場合や片側の両輪が落輪した場合は、ジャッキで車を路面の高さまで持ち上げ、駆動輪と道路の間に板などを挟んで、ゆっくりと発進します。ただし、車を持ち上げる作業は危険を伴うため、慣れていなければ無理はせず、早めにJAFや自動車保険のロードサービスに救援を求めましょう。
3.スタック発生時にやってしまいがちなNG行動
スタックなどのトラブル発生時には、焦りから誤った行動を取りやすく、状況の悪化や二次被害を招いてしまいがちです。緊急時だからこそ、冷静に状況を判断し、慎重に対処することを心がけましょう。特に注意したいNG行動は、以下の通りです。
3.1.アクセルを強く踏み込む
多くの方がやってしまうのが、脱出しようとアクセルを強く踏み込んでしまうことです。しかし、これは逆効果となり、タイヤが高速で空転することで路面をどんどん掘り下げ、車がさらに深く埋まって脱出が困難になってしまいます。雪道ではタイヤを空転させ続けると摩擦熱で雪が溶けて、かえって悪化することがあります。
3.2.急ハンドルや急発進
スタックからの脱出を試みている最中に、急ハンドルを切ったり急発進したりするのは、車が予期せぬ方向へ飛び出す恐れがあり危険です。特に、周囲に他の車や歩行者、脱出を手伝ってくれている人などがいる場合、はねてしまうなどの重大事故につながりかねません。アクセルの踏み込みやハンドル操作はゆっくりと慎重に行いましょう。
4.自力で脱出できないときの対処法
ここまで紹介した方法を試してもスタックが解消されない、あるいは状況が悪化しているようなら、自力での脱出は諦めましょう。無理に脱出操作を続けると、タイヤやトランスミッション、エンジンなどに大きな負荷をかけて車が故障したり、スリップ事故などの二次被害を招いたりしかねません。
4.1.周囲の人や車に救援を求める
周囲に救援を頼める人や車がいる場合は、後ろから押してもらったり、他の車に牽引してもらったりする方法も試してみましょう。ただし、専門知識がない状態での牽引は、ロープの破断や車両同士の衝突などの二次被害を招く恐れがあり非常に危険です。無理をせず、プロのロードサービスに救援を依頼しましょう。
また、 FR(後輪駆動)車であれば、後部座席に人が乗ることで駆動輪(後輪)の荷重を高め、脱出しやすくなる場合があります。
4.2.JAFや自動車保険のロードサービスに連絡する
自力での脱出が困難で、周囲に救援を頼める人もいない場合には、JAF(#8139/0570-00-8139)や自動車保険のロードサービス(ロードアシスタンス)に救援を要請しましょう。
自動車保険のロードサービスでは、「雪道や泥道での単なるスタック(スリップ)」はサービスの対象外となるケースがある点に注意が必要です。ただし、落輪(脱輪)や障害物への乗り上げなどが伴う場合は対象となるケースもあるため、ご自身が加入している保険の適用条件を確認しておきましょう。
JAFであれば、単なるスタック(スリップ)もサービスの対象であり、会員であれば原則として無料で救援を受けられます(非会員は有料)。最近ではスマートフォンのGPSを活用して、現在地を簡単に送れるサービスもあります。
プロであるJAFや自動車保険のロードサービスは頼りになる存在ですが、いつでもすぐに駆けつけてもらえるとは限りません。特に大雪の際などは救援要請が集中しやすく、救援まで長時間かかることも想定しておきましょう。
4.3.助けを待つ間の安全確保と注意点
スタックにより道路上で立ち往生してしまった場合には、後続車に存在を知らせるため、必ずハザードランプを点灯させましょう。夜間や視界が悪い状況では特に重要です。必要に応じて発煙筒や三角表示板などを後方に設置するとより安心です。
また、雪道でのスタック時にエンジンをかけたまま待機する場合は、マフラーが雪で塞がってしまわないよう、定期的な確認と除雪が必須です。マフラーが雪で塞がってしまうと、車内に一酸化炭素が充満し、最悪の場合、一酸化炭素中毒で死に至る恐れがあります。マフラー周りの除雪に加え、窓を少し開けて換気するといった対策も徹底しましょう。
5.いざというときに役立つ!車に積んでおきたい脱出アイテム
スタック発生時には、以下のようなアイテムがあると役立ちます。スタックが発生しやすい雪道などを走行する機会の多い方は、これらのアイテムを車に積んでおくと安心でしょう。
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スコップ
タイヤ周辺や車体下部の雪や泥などを取り除くのに役立ちます。 -
砂
路面に砂を撒くことでグリップ力が高まり、脱出できることがあります。ペットボトルなどに砂を入れて車に常備しておくとよいでしょう。 -
スタックステップ(脱出ボード)
タイヤの下に敷くことでグリップ力を高め、スタックから脱出するためのアイテムです。 -
牽引ロープ
他の車に引き出してもらう際に必要になります。牽引ロープを取り付ける牽引フックは多くの車に標準装備されているため、牽引ロープの格納場所や取り付け位置を把握しておきましょう。 -
ジャッキ
タイヤが穴にはまった場合や脱輪した場合など、車体を持ち上げるために用いるアイテムです。最近は標準装備されていない車が増えているため、搭載されていない場合はカー用品店などで購入する必要があります。 -
軍手・長靴・防寒具
スタックからの脱出作業は、極寒の雪や雨の中など、過酷な環境下で行うことも少なくありません。身を守るためにも、軍手や長靴、防寒具などを常備しておくと安心です。
6.スタックを未然に防ぐための事前準備と安全な走行のコツ
スタックは事前の備えと慎重な運転によって未然に防げるケースもあります。悪路を走る予定がある場合は、以下のポイントを押さえておきましょう。
6.1.出発前の準備
出発前には、目的地と経路の天候や道路状況を確認しましょう。国土交通省の「道路情報提供システム」や各地の道路管理者が提供するリアルタイム情報などが参考になります。大雪や路面凍結の情報が出ている場合は、ルートの変更や出発の延期も検討したほうがよいでしょう。
雪道を走行する場合は、スタッドレスタイヤの装着が基本です。ただしスタッドレスタイヤでも限界があるため、タイヤチェーンは携行しておきましょう。
それでも発生してしまうスタックに備え、先に紹介した脱出アイテムを車に積んでおくと安心です。長時間立ち往生する事態も想定し、ガソリンは満タンにしておきましょう。
6.2.悪路を走る際の運転のコツ
雪道やぬかるみなど悪路の運転では、急発進・急ブレーキ・急ハンドルといった急激な操作は避けましょう。また、完全に停止してしまうとスタックのリスクが高まるため、信号や一時停止などの交通ルールは順守したうえで、安全が確保できる範囲でなるべく止まらずに走り続けるのがポイントです。
6.3.スタックの危険がある場所には近づかない
砂浜や未舗装路など、スタックの危険性が高い場所には車で近づかないようにしましょう。少しくらいなら行けるだろうという安易な判断は危険です。無理に進まず、引き返すことが大切です。
7.まとめ
スタックが発生してしまったときは、焦らず冷静に対処することが大切です。ただし、スタックからの脱出作業には危険が伴います。状況に応じた脱出方法を試み、自力での脱出が難しいときは無理をせず、JAFなどに救援を求めましょう。適切な対処法の理解に加え、天候や道路状況の確認、スタッドレスタイヤの装着、脱出アイテムの常備といった事前準備も、いざというときの安心につながります。

