1.バッテリー上がりの症状と確認方法
エンジンがかからないなどの不具合が生じても、スマートキーの電池切れやガス欠などの可能性もあり、その原因が「バッテリー上がり」とは限りません。まずは安全を確保したうえで、状況を冷静に確認することが大切です。「バッテリー上がり」なのかを確認するために、バッテリー上がりで生じる典型的な症状を知っておきましょう。
1.1.エンジン始動時の異音と挙動
一般的なガソリン車やディーゼル車の場合、正常であれば、エンジンをかけようとするとセルモーターが回り、「キュルキュル」という音がします。しかし、キーを回しても(スタートボタンを押しても)「キュルキュル」という音がしない場合、バッテリー上がりの可能性が高いです。
逆に「キュルキュル」という音がするのにエンジンがかからないときは、点火系統や燃料系統、ガス欠など、バッテリー上がり以外の原因が考えられます。
また、「カチカチ」と異音がしたり、回転が弱々しくエンジンの始動までに時間がかかったりする場合は、バッテリーの性能が低下している可能性があります。すぐに点検し、必要に応じて早めに交換しましょう。
なお、ハイブリッド車や電気自動車の場合は、構造上セルモーターが搭載されていない車種が多いため、セルモーターの音がしないだけでは、バッテリー上がりと判断できません。
1.2.ライト・電装品など電気系統の変化
バッテリーが上がると、ライトやランプは点灯しなくなり、パワーウィンドウやワイパー、スマートキーなどの電装品も動かなくなります。特定の箇所ではなく電気系統全体に症状が現れているときは、バッテリー上がりの可能性が高いです。
なお、バッテリーの電圧が低下してくると、ライトやランプの明るさが安定しなくなったり、パワーウィンドウやワイパーなどの動作が遅くなったりといった前兆が現れることがあります。メーターパネル内にあるバッテリー警告灯の点灯も、バッテリーの電圧低下などの異常を知らせるサインです。
1.3.車内機器のリセット現象
バッテリーの電圧が低下すると、カーナビやオーディオの設定がリセットされる、時計の時刻がズレる、パワーウィンドウのオート機能(ワンタッチでの全開・全閉)が効かなくなるといった症状が現れることがあります。これらの症状は、設定を保持するために必要な電源の一時的な喪失・不足が原因と考えられ、バッテリー上がりの前兆といえます。
1.4.ハイブリッド車やアイドリングストップ車特有の症状
ハイブリッド車や電気自動車はガソリン車と異なり、駆動用メインバッテリーと補機用バッテリーの2種類のバッテリーが搭載されています。一般的にハイブリッド車のバッテリー上がりとは、「補機用バッテリー」が上がることを指します。
補機用バッテリーが上がってしまうと、駆動用バッテリーに問題がなくてもシステムが起動せず(「Ready」ランプが点灯しない)、車は動きません。
また、アイドリングストップ機能が搭載された車の場合は、バッテリーの電圧が低下すると、車自体は動いていてもアイドリングストップ機能が作動しなくなります。
2.バッテリーが上がったときにやってはいけないこと
バッテリーが上がったときに誤った対処をすると、バッテリーの劣化や故障、火災など事態をさらに悪化させてしまいかねません。特に以下のような行為には十分注意しましょう。
2.1.エンジンを何度もかけない
エンジンがかからない状態で何度も繰り返しエンジンをかけようとする(セルを回す)と、わずかに残っている電気まで使い果たし、バッテリーに大きな負担がかかり、再充電ができなくなる恐れがあります。
2.2.正しい手順を確認せずにケーブルをつなごうとしない
外部から電気を供給してエンジンを始動させる「ジャンプスタート」は、正しく行えばバッテリー上がりからの復旧に有効な方法です。しかし、ケーブルをつなぐ場所や順番を間違うとショートし、車の故障や火災の原因になります。ジャンプスタートの正しい手順は、3.2.で解説します。
3.バッテリーが上がったときの対処法
バッテリーが上がっている可能性が高いと判断したら、以下のような方法で復旧を試みましょう。時間が経つほど放電が進んで状況は悪化してしまうため、放置せず早めに対処することが大切です。
3.1.ロードサービスや修理業者に救援を依頼する
最も安全で確実なのは、プロに依頼することです。応急始動作業だけでなく、バッテリーの状態もチェックしてもらえるため安心です。
JAFに応急始動作業を依頼する場合、JAF会員であれば部品代(交換が必要になった場合のバッテリー代金)を除き、費用はかかりません。非会員の場合は有料であり、一般道におけるバッテリー交換なし・レッカーなしの応急始動作業の場合、昼間(8時〜20時)なら21,700円、夜間(20時〜8時)なら25,630円の費用がかかります(部品代は別途必要・2026年3月現在)。
また、加入中の自動車保険(任意保険)にロードサービスがセットされていれば、多くの場合バッテリー上がりにも対応してもらえます。バッテリー交換やレッカーが不要な応急始動作業であれば、ほとんどのケースで費用はかかりません。サービスの内容や費用、利用できる条件・回数は保険会社によって異なるため、加入中の自動車保険の補償内容をよく確認しておきましょう。
自動車保険のロードサービスを使う場合は、故障発生後すぐ保険会社に連絡し、保険会社が指定または手配した業者を利用するのが基本です。自分で手配した業者を利用するとロードサービスの対象とならず、費用が自己負担になってしまう恐れがあるため注意しましょう。なお、ロードサービスを利用しても自動車保険の等級には影響しません。
3.2.ケーブル接続でエンジンの始動を試みる
ブースターケーブルと救援車を用意してエンジンの始動を試みる方法です。
ブースターケーブルとは、両端にクリップのついた赤と黒2本セットのジャンプスタート専用ケーブルのことです。
ブースターケーブルと救援を頼める車があれば、エンジンの始動に必要な電気を分けてもらう「ジャンプスタート」で復旧できる場合があります。
ジャンプスタートは、以下のような手順で行います。
(1)救援車を見つける
救援車になれるのは、バッテリーが上がった車(被救援車)と同じ電圧のバッテリーを搭載したエンジン車やディーゼル車です。一般的な乗用車や軽自動車のバッテリーの電圧は12V、トラックなど商用車の多くは24Vであり、電圧の異なる車は救援車になれません。また、ハイブリッド車や電気自動車は、車の構造上、他車を救援することができません。救援車になれない車で無理に救援すると、救援車側が故障して高額な修理費用がかかる恐れがあります。
| 被救援車 (バッテリーが上がった車) |
救援車 (電気を供給する車) |
救援可否 |
|---|---|---|
| 12V車 | 12V車 | ◯ |
| 24V車 | 24V車 | ◯ |
| 12V車 | 24V車 | × |
| 24V車 | 12V車 | × |
| ガソリン車・ディーゼル車 | ガソリン車・ディーゼル車 | ◯ |
| ハイブリッド車・電気自動車 | ガソリン車・ディーゼル車 | ◯ |
| ガソリン車・ディーゼル車 | ハイブリッド車・電気自動車 | × |
| ハイブリッド車・電気自動車 | ハイブリッド車・電気自動車 | × |
(2)バッテリーが上がった車と救援車のバッテリー同士をブースターケーブルでつなぐ
エンジンを停止してボンネットを開け、以下の順番でバッテリー同士をブースターケーブルでつなぎます。順番を間違えると、ショートする恐れがあるため十分に注意しましょう。
【ブースターケーブルをつなぐ順序】
- 赤色ケーブルの一端をバッテリーが上がった車のプラス端子につなぐ
- 赤色ケーブルの他端を救援車のプラス端子につなぐ
- 黒色ケーブルの一端を救援車のマイナス端子につなぐ
- 黒色ケーブルの他端をバッテリーが上がった車の金属部分につなぐ(万が一の電気事故の場合に電流を逃がす「アース」のため)
(3)エンジン始動を試みる
ケーブルが正しくつながっていることを確認したら、救援車のエンジンをかけます。AT車はギアがP(パーキング)、MT車はギアがN(ニュートラル)になっていることを確認し、必ずサイドブレーキをかけてください。その後、救援車のアクセルを踏んでエンジンの回転数を高め(2,000回転程度)に保った状態で、バッテリーが上がった車のキーを回し(スタートボタンを押し)、エンジンの始動を試みます。
(4)ブースターケーブルを外す
バッテリーが上がった車のエンジンがかかったら、つないだときとは逆の順番でケーブルを取り外します。
3.3.機器使用でエンジンの始動を試みる
ジャンプスターターを用意してエンジンの始動を試みる方法です。
ジャンプスターターとは、エンジンを始動させるための電気を外部から供給する携帯型バッテリーのことです。ジャンプスターターがあれば、救援車なしでエンジンを始動させることができます。
使い方は基本的にブースターケーブルと同じで、最初はジャンプスターターの赤色ケーブルをバッテリーのプラス端子につなぎます。続いてジャンプスターターの黒色ケーブルを車体の金属部分(アースポイント)につなぎます。※車種やメーカーの取扱説明書に従って対応してください。
ケーブルをつないだらエンジンをかけ、エンジンが始動すれば復旧完了です。ケーブルは、つないだときと逆の順番(黒色→赤色)で外してください。
4.エンジン始動後にやるべきこと
エンジンがかかったからといって、すぐに安心するのは禁物です。エンジンがかかった直後のバッテリーは不安定な状態で、再びエンジンがかからなくなってしまう恐れがあるため、以下に注意しましょう。
4.1.すぐにエンジンを切らない・充電時間を確保する
ジャンプスタート直後のバッテリーは充電ができていない状態のため、すぐにエンジンを切ってしまうと再始動できなくなる恐れがあります。バッテリーはエンジンを回すことで発電・充電されるため、エンジン始動後はそのまま1時間程度走行して、しっかり充電しましょう。アイドリング状態でも充電はされますが、走行時に比べて発電量が少ないため、充電に時間がかかります。
4.2.電圧のチェックとバッテリー交換を検討する
一度上がってしまったバッテリーは性能が低下しています。早めにディーラーやガソリンスタンドなどでバッテリー点検(電圧チェック)を受けましょう。性能が十分に回復しないようなら、またすぐにバッテリーが上がる恐れがあるため、早めの交換をおすすめします。
なお、アイドリングストップ車はバッテリーへの負荷が大きく、アイドリングストップ車専用の高性能なバッテリーが必要です。一般的なバッテリーに交換するとすぐに劣化してしまうため注意しましょう。
5.バッテリーが上がる原因
バッテリーが上がる原因がわかれば、予防や交換の目安になります。
5.1.エンジン停止状態でのライト・室内灯の消し忘れやオーディオ・エアコンの使用
エンジンを切った状態でヘッドライトやハザードランプ、室内灯などをつけっぱなしにしたり、オーディオやエアコンなどを使いすぎたりすると、数十分から数時間程度でバッテリーが上がってしまいます。
このように短時間で電気を使い切ったことが原因の場合は、バッテリーを充電すれば復旧できるケースも多いです。ただし、一度上がってしまったバッテリーは劣化して性能が低下するため、寿命は短くなる恐れがあります。
5.2.長期間車に乗っていない
車に乗らなくても、時計やコンピューターの維持で少しずつ電気を消費します。長期間放置すると充電されないまま電気が空になり、放置期間が長いほどバッテリーは劣化し、交換が必要になる可能性が高まります。
5.3.バッテリーの寿命や経年劣化
バッテリーの寿命は平均的に2〜3年といわれています。
バッテリーの寿命が近づくと蓄電能力が落ち、ライトが暗くなる、パワーウィンドウの開閉が遅くなる、エンジンのかかりが悪くなるなどの症状が出てきます。このような症状がある場合や3年以上バッテリーを交換していない場合は、トラブルが起こる前に交換しましょう。
5.4.冬の寒さや夏のエアコン酷使によるバッテリーへの負荷
冬は低温で化学反応が鈍くなるためバッテリーの性能が低下し、バッテリーが上がりやすくなります。夏もエアコン(冷房)の使用によって電力消費が増加して、バッテリー上がりのリスクが高まります。
これらの原因でバッテリーが上がったときは、バッテリーの寿命が近いケースが少なくありません。バッテリーを点検して性能の低下がみられた場合は交換をおすすめします。
6.バッテリー上がりを未然に防ぐためのポイント
日頃から意識して行動することで、バッテリー上がりのリスクは下げることができます。
6.1.定期的に車を走らせる
車に乗る頻度が少なかったり、1回あたりの走行距離が短かったりすると、バッテリーを十分に充電できません。少なくとも2週間の間に合計30分以上(冬場は合計80分以上)を目安にまとまった時間運転するようにしましょう。
6.2.エンジン停止時は電装品をOFFにする
エンジン停止時は電装品をOFFにして、なるべく電気を使わないように心がけましょう。エンジンを切った状態でエアコンやオーディオ、ライトなどを使うと、バッテリーの電気を一気に消費してしまい、バッテリーが上がりやすくなります。
車から降りる際は、ヘッドライトや室内灯などがOFFになっているかをよく確認してください。半ドアによる室内灯のつきっぱなしにも注意が必要です。
6.3.こまめに電圧チェックを行う
バッテリーの異常(充電能力の低下)にいち早く気づくためにも、車検や定期点検のタイミングだけではなく、ガソリンスタンド等で日常的にバッテリーの電圧のチェックを受ける習慣をつけておくとよいでしょう。
7.まとめ
バッテリー上がりは、正しい知識があれば落ち着いて対処できるトラブルです。 まずは症状からバッテリー上がりなのかを判断したうえで、ロードサービスや修理業者に救援を依頼するか、ジャンプスタートによって復旧を試みましょう。エンジンがかかったら、そのまま走行して十分に充電を行い、すぐに点検することが再発防止のために大切です。定期的に車を走らせる、バッテリーに過度な負荷をかけない使い方をする、こまめに電圧をチェックするなどの対策を日頃から意識して、バッテリー上がりを未然に防ぎましょう。

