自動車保険の運転者限定特約の補償範囲とは?

自動車保険には、自動車の運転者をあらかじめ決めておく「運転者限定特約」があります。運転者を限定することにより保険料は抑えられますが、実情に合わせて限定する範囲を決めなければ、もし事故に遭った際に補償が受けられない場合があります。

まずは、運転者限定特約の主な種類と補償範囲について理解を深めましょう。

①本人限定(記名被保険者のみ)

自動車保険には、保険証券に記載された(主な運転者である)記名被保険者のみを補償対象とする「本人限定特約」があります。本人のみが補償対象で、配偶者・子ども・友人などが運転して事故を起こした場合に保険は使えません。

本人限定特約は、自動車保険に加入した自動車のドライバーが1人の場合に適した特約です。補償範囲が本人のみとなるため、運転者限定特約の中では最も割引率が大きく、自動車保険料を抑えられます。

②本人・配偶者限定(記名被保険者と配偶者のみ)

保険証券に記載された(主な運転者である)記名被保険者と配偶者を補償対象とする「本人・配偶者限定特約」もあります。この特約は、夫婦で1台の自動車を共有し運転している場合に有効です。

本人・配偶者限定特約は、夫婦の親や子どもが自動車を運転する場合は補償対象外です。本人限定特約よりも補償範囲が広い分、同特約よりも割引率は低くなるものの、より補償範囲が広い家族限定特約よりも保険料を抑えられます。

③家族限定

夫婦に加え、親や子どもと自動車を共有しており、複数の家族が1台の自動車を運転する場合には「家族限定特約」が適しています。記名被保険者とその配偶者、同居の親族、別居する未婚の子まで補償対象となることが一般的です。

家族限定特約は「本人限定特約」や「本人・配偶者限定特約」よりも補償範囲が広く、比較すると保険料の割引率は低くなります。なお、損保ジャパンでは、2019年1月1日始期以降、家族限定特約は廃止となっています。

④限定なし(誰でも対象)

別居する既婚の子どもや家族以外の友人、職場の同僚など、1台の自動車を様々な人が運転する可能性がある場合は「運転者限定なし」としましょう。

安心して運転できる一方で、運転者限定特約による保険料の割引はありません。

自動車保険の運転者家族限定特約で補償対象となる範囲とは?

ここからは、運転者家族限定特約における家族の範囲について解説します。

運転者家族限定特約における家族の範囲について

運転者家族限定特約の補償範囲は、保険会社によって多少の違いがあります。一般的には、記名被保険者、記名保険者の配偶者、同居家族(父母・子・祖父母・孫・兄弟姉妹など)や別居している未婚の子が家族に含まれ、補償範囲となります。

〈運転者家族限定特約の家族の範囲〉
対象者 家族の範囲
記名被保険者(契約者本人)
記名被保険者の配偶者
記名保険者と同居している家族
(父母・子・祖父母・孫・兄弟姉妹など)
記名保険者と別居している未婚の子
記名保険者と別居している既婚の子 ×
記名保険者と同居していない父母や兄弟姉妹など ×
友人・知人・職場の同僚 ×

別居の未婚の子は運転者家族限定特約の補償対象となる

保険会社によって条件が異なりますが、別居している未婚の子は家族限定特約の対象となる場合が多いです。その理由は、大学や専門学校に通う未婚の子は、別居していても親世帯の生計と一体であると多くの保険会社がみなしているためです。

年齢条件との組み合わせに注意する

一つ注意したいポイントは、運転者年齢条件特約との組み合わせについてです。運転者限定特約と運転者年齢条件特約はセットで考える必要があります。

運転者限定特約の範囲内であっても、年齢条件に合わず補償対象外となってしまうケースが考えられるため、設定には注意が必要です。

運転者年齢条件特約とは

補償される運転者の年齢条件を限定する「運転者年齢条件特約」は、運転者の年齢条件に該当しない方が契約自動車を運転している間に生じた事故による損害や傷害に対して、補償の対象外とする特約です。

補償対象を年齢で絞ることで保険料を抑えることができます。ここでは、代表的な年齢条件と補償範囲を解説します。

【21歳以上補償】
運転経験が浅く、事故を起こす可能性が高い20歳までを補償対象外とします。年齢を限定しない全年齢補償と比較して保険料を抑えることが可能です。

【26歳以上補償】
10代~20代前半の運転者を補償対象外とすることで、保険料をさらに抑えます。運転者に25歳以下の人がいない場合、26歳以上の補償条件を選ぶことで、21歳以上補償よりも保険料を軽減できます。

【35歳以上補償】
運転経験を積み、安全運転を心がける人が増えることから、若い世代と比較して35歳以上は事故を起こす可能性が低い傾向があります。そのため、35歳以上補償は、26歳以上補償と比べてさらに高い割引率が設定されます。

適切に設定しないと補償の対象にならない

運転者限定特約で補償対象の範囲内であったとしても、年齢条件に満たない場合は補償を受けられません。

例えば、「運転者家族限定」「35歳以上補償」と設定している場合、免許をもつ同居の子ども(35歳未満)が運転して事故を起こしてしまっても、年齢条件に合わず補償対象外となってしまいます。

運転者年齢条件特約は「主に運転する方(被保険者)」「被保険者の配偶者」「被保険者または配偶者と同居する親族」のうち、車を運転する最も年齢が若い方に合わせて設定します。「別居の未婚の子」に運転者年齢条件特約は適用されないので、「別居の未婚の子」の年齢は設定において考慮する必要はありません。

運転者家族限定特約を設定する際の注意点

運転者家族限定特約は自動車保険料を抑える有効手段ですが、対象となる家族の範囲や運転する家族の年齢を考慮して、運転者年齢条件などその他の加入条件とともに確認のうえ契約することが大切です。

対象となる家族の範囲を正確に把握する

運転者家族限定特約に該当する家族の範囲は、保険会社によって異なります。一般的には契約者本人である記名被保険者と、記名被保険者の配偶者、両親、子ども、祖父母などの同居親族、別居の未婚である子が補償対象です。

しかし、保険会社によって取り扱いが異なる可能性があるので、「(自動車を共有する)親族も家族だから大丈夫だ」と早合点せずに、補償対象となる家族の範囲を事前に確認しましょう。

対象となる補償範囲を誤認していると、万一の事故の際に補償を受けられない場合があるため注意が必要です。

友人や親族が運転する可能性を考慮

運転者家族限定特約は、友人・知人や範囲外の親族が運転した場合には補償されません。

例えば、友人と自動車旅行に出かけた際に、友人に途中で運転を代わってもらった場合、運転者限定特約が適用されているため、事故が起きても補償を受けることができません。

友人や同居しない親族が運転する機会が多い場合は、運転者限定特約をセットしないようにしましょう。

家族以外が車を運転する際に補償を受ける方法

運転者家族限定特約をしている自動車を家族以外が運転した場合に、事故の補償を受けるにはどうしたらよいでしょうか。

ここでは「運転者限定特約を外す」「他車運転特約を利用する」「一日自動車保険に加入する」ことで補償を受ける方法を解説します。

運転者限定特約を外す

限定範囲外の親族や友人、職場の同僚などが運転する機会がよくある場合には、運転者限定特約を外すことで対応できますが、保険料は高くなります。

他車運転特約を利用する

運転する友人や親戚が他の人の自動車を運転した際に発生した事故を補償する「他車運転特約」がセットされている自動車保険に加入している場合、その保険が利用できる可能性があります。

ただし、一般的に他車運転特約は、友人知人が加入している自動車保険の補償内容に応じた補償となることや保険会社によって補償範囲が異なる場合があるので、事前に友人や親戚に事故時の保険利用と補償内容について確認しておくとよいでしょう。

一日自動車保険に加入する

限定特約の範囲外の友人や親戚が1日や1週間など短期間で自分の自動車を運転する場合には、一日単位で加入できる「一日自動車保険」の利用を検討してもらいましょう。

一日自動車保険は、インターネットで加入できるものがほとんどで、コンビニやスマホアプリからも申し込めます。運転者家族限定特約の範囲外の親戚や友人に、自分の自動車を運転してもらう場合に便利です。

一日自動車保険も通常の自動車保険と同様に、基本的な対人・対物賠償の補償に加え、車両保険付きを選択できる場合があります。事前に条件を確認しておきましょう。

家族限定の自動車保険に関するよくあるQ&A

運転者家族限定特約の自動車保険に関して気になることをQ&Aにまとめました。保険会社によって補償内容はそれぞれですので、詳細は加入を検討する保険会社に確認しましょう。

家族限定の特約を付けられるのは任意保険のみ?

はい。運転者家族限定特約は任意保険にのみ適用が可能な特約です。

法により加入義務がある自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、運転者家族限定特約などの特約が存在しません。

自賠責保険は交通事故の被害者の救済を目的としている保険であり「誰が運転していたか」「誰の所有する自動車か」は関係なく、事故の被害者に対して補償する保険です。

本人・配偶者限定特約の配偶者の範囲は?

自動車保険の配偶者限定における配偶者の定義は「法律上の婚姻関係にある戸籍上の配偶者」となります。同居や別居は関係ありません。

また、婚姻の届出をせず、事実上婚姻関係と同様の事情にある内縁の相手方や、婚姻の意思のある同性パートナーについても「配偶者」に含むことが一般的になってきています。

家族限定特約で別居の未婚の子は補償される?

はい。運転者家族限定特約の家族の範囲には、別居の未婚の子は含まれることが一般的です。

未婚の子が運転者家族限定特約の家族に含まれる理由は、未婚の子は大学や専門学校に通っていたり、就職した会社の都合で一時的に家を出ていたりと、現在別居していても帰省の際には親の自動車を運転する可能性があるからです。

子が結婚した場合は未婚の条件から外れるため、補償対象外となります。なお、損保ジャパンでは、2019年1月1日始期以降、家族限定特約は廃止となっています。

家族限定特約の適用範囲を変更するタイミングは?

家族の状況が変わったときが、家族限定特約の適用範囲を見直すタイミングです。

これらは一例ですが「子どもが自動車運転免許を取得して運転を始めるタイミング」「別居している未婚の子が結婚するタイミング」「同居の親が自動車の免許を返納して自動車に乗らなくなるタイミング」などが考えられます。

特に運転する家族が増減するタイミングや同居・別居が変わるタイミングには、特約の見直しについて加入する代理店や保険会社に相談し、必要に応じて適用範囲を変更しましょう。

家族限定特約をつけると、保険料は安くなる?

家族限定特約をセットすると、運転者限定なしの場合と比べて保険料は安くなります。ただ、限定なしと比べてもリスクの差が小さくなり、割引を提供できなくなってきていることから、家族限定特約を廃止する保険会社が増えました。

そうした背景の中でも、引き続き家族限定特約を設定している会社もあります。割引率は保険会社によって異なるので、検討する際に確認してください。

もっとも、保険料を抑えることを優先しすぎて保険の適用範囲を狭めてしまうことで、いざというときに補償を受けられない場合があります。あくまで「誰が自動車を運転する可能性があるか」を考え、特約の設定を検討しましょう。

まとめ

自動車保険において、運転者限定特約をセットすると、自動車保険の保険料が割引になります。運転者限定特約のセットを検討する際には、補償対象となる運転者の範囲が適切か事前に確認しておくことがポイントです。

また、運転者の年齢を考慮して最適な年齢条件を設定しましょう。運転者の年齢が変わる場合、家族との同居・別居が変わる際には、必要に応じて補償内容を見直しましょう。

※この記事は2025年4月時点の情報です。


※本コラムでご案内した商品に関する内容は概要を説明したものです。詳しい内容については取扱代理店または損保ジャパンまでお問い合わせください。

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