女性に貧血が多いのはなぜ?
酸素を運搬する役割を持つ赤血球のヘモグロビンは、色素部分の「ヘム」と蛋白部分の「グロビン」で構成されています。「ヘム」の中心部に鉄が存在し、酸素と結合して運搬しますので、鉄は赤血球を構成する主要な材料の1つと言えます。この鉄分は体の中で合成することができませんから、必然的に食事によって摂取しなければなりません。
ところが、鉄分というのは吸収されにくい物質であるために、食物中から摂取できるのはその10分の1程度です。毎日10mg以上の鉄分を含む食物を食べて、ようやく収支のバランスがとれるということになります(参考:成人男性では約1mg、成人女性では約2mgの鉄分が食物から吸収され、同じぐらいの鉄分が尿や便、汗などからほぼ同じ量の鉄が失われています)。
ですから、栄養のバランスを考えずにダイエットを行ってしまうと、鉄分は簡単に不足してしまい、貧血を起こしてしまいます。また個人差はありますが、閉経前の女性は月経のために毎月40~50mlの出血があります。その出血の中に含有されている鉄分はおよそ20~25mgですから、失われる鉄分を食事で補うためには、1日あたり0.67~0.83mgの「鉄の貯金」が必要です。前述しましたように、鉄分はもともと吸収されにくい物質ですし、男性と比べると食事の量も少ない女性では、結果として鉄分不足による貧血が多い、ということになってしまうのです。もちろん、妊娠中・授乳中にも、普段以上の鉄分が必要なのは言うまでもありませんね。
出血による貧血
女性では鉄分が不足してしまうタイプの鉄欠乏性貧血が多いですが、働き盛りの男性で貧血のあった場合、最も注意しなければならないのが消化管からの慢性的な出血です。例えば胃潰瘍や大腸ポリープから、じわじわとした出血によって貧血になっていることがあります。慢性的に進行した場合には自覚症状のないこともありますから、鉄剤の効果がない貧血や、正球性あるいは大球性貧血などであった場合には、胃や大腸の検査を行う必要があります。
消化管出血の代表ともいえる胃潰瘍の原因には、ストレス以外の要因としてヘリコバクター・ピロリ菌という細菌の感染が挙げられます。50代では7割もの人がこのピロリ菌に感染しているという統計もあります。同様の消化管出血の原因にもなる大腸がんも、現代人の生活習慣の変遷に伴って増加が確実視され、悪性腫瘍の中でも最も死亡者数が増加すると考えられています。貧血に隠れた重大な病気、できるだけ早く見つけましょう。