心も「雨の日モード」に
今回は雨の日の安全運転について話をしましょう。一般的に雨の日は事故が多いと言われていますが、どのくらいの事故が頻繁に起きているのでしょうか。首都高速道路株式会社の統計データによれば、「雨天時においては晴天時の約4倍の割合で交通事故が起きている」※と言われています。その多くの事故原因は「タイヤのスリップ」や「視界不良」が多いそうですが、考えてみれば当たり前のことかもしれませんね。
※首都高速道路株式会社Webサイト http://www.shutoko.jp/use/safety/driver/rain/ (最終アクセス: 2014年10月28日)
というのは路面が濡れただけでタイヤのグリップ力(クルマの安全を支えるタイヤと路面との摩擦力で、タイヤ一本当たりの大きさはハガキ一枚くらいといわれています)が低下したり、フロントウインドーに水滴がついただけで視界は悪くなります。ですから、雨の日のドライブはワイパースイッチを入れるのと同じく、心のスイッチも雨の日モードに切り替えたほうがいいでしょう。
ハイドロプレーニング現象
それでは具体的に雨の日の安全運転について説明しましょう。まず重要なことはタイヤの性能が晴れの日と雨の日(路面が乾いているか、濡れているか)では大きく異なることです。当然雨の日の方が性能は低下しますが、その落差はタイヤの性質(種類)やタイヤの溝の減り方で大きく左右されます。日頃から自分のタイヤの特徴や減り具合を把握しておく必要があります。
それではなぜ雨が降るとタイヤが滑るのでしょうか。それはタイヤのグリップ力はタイヤのゴムが路面と擦れることで発生する摩擦力そのものだからです。そこで路面が濡れるとタイヤが滑りやすくなることは容易に想像できます。だいたい20%前後摩擦力が低下すると考えられています。
しかし、もっとも始末が悪いのは路面に溜まった水の上にタイヤが浮いてしまう場合です。この場合はスケートリンクのように滑りやすい状況になってしまいます。水たまりの上では一気に滑るのです。こうしてタイヤが水の上に浮いてしまう現象をハイドロプレーニング(水上飛行機)と呼ばれますが、それだけ水の上に浮かんでよく滑るという意味があります。ハイドロプレーニングが発生する条件は「溝の残り、タイヤの幅、雨の量、速度、クルマの重さ(軽いほうが不利)」で決まります。自分のクルマが水の上に浮くことをイメージしてください。
実はここでタイヤの溝が重要な役割を演じます。雨が路面の上に溜まった時に、その水を排水するのがタイヤの溝です。溝の残りや雨の量で排水量が決まるので、すり減ったタイヤは大雨ではますます危険性が増します。新品の時はだいたい8~9ミリくらいの溝の深さがありますが、1万キロくらい走ると5分山くらいまで減ることもあります。新品と5分山では大きな違いがあります。法律では1.6ミリまで(2~3分山)まで使うことが許されていますが、性能はどんどん低下します。大雨でタイヤが減っていると思ったら高速走行は避けるべきでしょう。
外気温とグリップ力
また外気温でもタイヤのグリップ力は左右されます。普通のタイヤは摩擦力によって熱を発生し、高速走行しても熱が内部に溜まりにくい性質を持っていますが、乾いた路面でも温度が5度以下になるとタイヤのグリップ力は低下します。もちろん雪になる前の冬の雨もタイヤが冷えているのでよく滑りやすいのです。冬の雨は注意してください。
夜の雨は歩行者や自転車が見えにくいということも事故が増加する原因ですが、高速道路では水溜まりが発見できないことも事故の原因ではないでしょうか。例えば冬場にチェーンなどを使う北国の高速道路では路面が掘れて轍ができています。ここに雨が溜まるとハイドロプレーニングが起きやすくなります。夜間はまったく路面の轍(わだち)が見えないのでさらに危険は増します。
夏場は鉄砲水のような雨が降る時があります。高速道路では視界はほとんど確保されないし、新品のタイヤでも排水が間に合わず、ハイドロプレーニング現象が起きてしまいます。視界が悪い時の事故は後続車が事故車両に突っ込む可能性もあるので死亡率が高いのです。君子危うきに近づかず。私なら高速道路から降りるか、サービスエリアで雨が通り過ぎるまで休みます。自分だけが安全運転しても周囲のクルマのタイヤの状況までは分からないので、念には念を入れて安全運転を心がけましょう。