車の購入が税金対策になるのはなぜ?

会社が納める法人税は、企業活動によって得た「収入」から、原材料費や販売に要した経費などを差し引いた「所得」に対してかかる税金です。

例えば同じ収入の場合、経費が大きければその分所得が減り、納める税金が少なくなります。法人や個人事業主が車を購入した際に、車の取得費は経費として計上することができます。そのため、車の購入は税金対策の1つになります。

ただし、税金対策の対象となる車は事業(業務)に使うことが条件です。社用車であっても、事業用に使われていない場合は、経費として計上することはできません。

また、一括での経費計上はできず、法で定められた期間に按分して会計処理を行うことが必要です。それを「減価償却」といいます。

節税のための減価償却について知っておく

節税のために必要な知識として、減価償却の概要と、新車と中古車の法定耐用年数の違いや中古車の法定耐用年数の計算方法、会社(法人)と個人事業主での減価償却費の計上方法が異なる点について解説します。

減価償却とは?

事業(業務)に使う建物、建物に付属する設備、機械装置、車両運搬具などの資産は、取得時に全額を経費として計上せず、法定耐用年数に応じて分割して計上します。この会計処理の方法を減価償却といいます。

減価償却できる資産は、時間の経過により価値が減少する資産です。土地など、時間の経過により価値が減少しない資産は減価償却の対象外となります。

新車の普通自動車の耐用年数は

事業で使用される新車の場合、普通自動車の法定耐用年数は6年です。また、運送事業や貸自動車業(レンタカー)など、法定耐用年数が3~5年に定められている車両もあります。

また、新車の軽自動車の法定耐用年数は4年です。減価償却を正しく行うために、法定耐用年数の期間を把握しておきましょう。

中古車の耐用年数は

中古車の法定耐用年数は、初度登録(新車として初めて登録された年度)からの経過年数により、計算します。

経過年数が法定耐用年数より短い場合は「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」で計算します。

計算結果が2年以内の場合、法定耐用年数は2年となります(1年未満の端数は切り捨て。例えば、計算結果が2.6年の場合は2年です)。

また、経過年数が法定耐用年数を超えている場合は「法定耐用年数×20%」で計算します。

例えば、経過年数が8年の普通自動車は法定耐用年数を6年として計算します。つまり、「6年×0.2=1.2年」となり、先述のとおり計算結果が2年以内となるため、法定耐用年数2年として計算します。

【個人事業主と法人では違う】減価償却の計算方法

減価償却費の計算方法は「定額法」と「定率法」の2つです。

車の減価償却費を計算する場合、法人は基本的に「定率法」を、個人事業主は基本的に「定額法」を使用します。個人事業主が定率法を選ぶことも可能ですが、事前に(変更しようとする年の3月15日までに)税務署に届け出をする必要があります。

なお、定率法の計算方法は「未償却残高×償却率」、定額法の計算式は「取得価額×償却率」です。

定率法の償却率(2012年4月1日以降取得分)は、定額法の約2倍に設定されています。また、定率法は取得から早い時期に経費計上できる減価償却費が大きく、時間が経つほど未償却残高が小さくなるため、減価償却費も小さくなるという特徴があります。

定額法は、取得価格をベースに計算しますので、毎年一定額の減価償却費を経費計上できるという特徴があります。

車で税金対策する際の注意点

ここでは、車で税金対策をする際の注意点として「減価償却するための車の用途」「取得した年に経費計上できない理由」「個人事業主が減価償却するときに必要な家事按分」「リースの場合の経費計上の仕方」の4点を解説します。

事業で利用しないと経費にできない

車の取得費を減価償却費として計上し、保険料、税金、車検代、ガソリン代、高速料金代などの費用を経費に計上するには、その車が事業(業務)に使われている必要があります。

事業用として購入した車であっても、実態として業務に使用されていない場合は、減価償却費や保険料などの費用を経費に計上することはできません。

業務に使用しない車を業務用と虚偽に申告し、税務調査で発覚した場合は、過料や罰金などが科される場合があります。

購入価格=その年の経費とはできない

また、法定耐用年数が1年未満、もしくは取得価額10万円未満の資産は、減価償却の処理を行いません。つまり、取得時に全額を経費計上するため、取得年の経費として計上できます。

しかし、車の法定耐用年数は最低でも2年を超えます。そのため、購入価格の全額をその年の経費に計上することはできません。

例えば、購入価格400万円の新車の普通自動車を取得した場合、初年度に経費計上できる金額は、

定率法で「400万円×0.333=133万2,000円」
定額法で「400万円×0.167=66万8,000円」

と、なります。

ローンで購入した場合も、購入価格で計算するため、計上できる経費は変わりません。

リースの場合は減価償却ではなくリース料として計上される

一般的にカーリースは、リースが終了しても所有権がリース会社から借主に移らない「所有権移転外リース」の契約になります。

このリース契約の場合、契約期間が1年以内またはリース料の総額が300万円以内であれば、月々のリース料を経費として計上することができます。

そのため、業務用として車を使用している場合も、減価償却による会計処理はせず、リース料として計上します。

所有権移転外リースの契約は、自動車税など税金や自賠責保険の保険料が含まれる場合が多く、リース会社によっては、車検代などの諸経費もリース料に含めている場合があります。

個人事業主の場合は家事按分が発生する

減価償却費を経費計上できるのは、業務に利用する車です。
個人事業主の場合は、1台の車を業務にとどまらず、買い物やレジャー、子どもの送迎などプライベートで使用する場合があります。

プライベートでも車を使用する場合は、全額を経費に計上することはできず、使用時間や走行距離を基準に、事業用とプライベート用に使用割合を分けて業務利用の部分のみ経費として計上します。この会計処理方法を、家事按分といいます。

その他にもある、自動車関連の経費

車の取得費(車体費用)以外にも、維持費として、保険料や駐車場代、ガソリン代や高速代、税金などの経費がかかります。

また、ローンで購入した場合は金利に対して利子が発生します。ここでは、減価償却費以外の経費について解説します。

自賠責保険や自動車保険

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)や、任意保険(一般の自動車保険)の保険料は経費として計上することができます。

自賠責保険の保険料は、新車の場合は登録時に次の車検までの期間の3年分、その後は車検ごとに2年分を一括で支払います。なお、自賠責保険は一括で支払った年に全額を経費として計上できます。

任意保険(自動車保険)は、保険料を複数年前払いした場合でも、支払った年に全額を経費として計上できません。たとえば、3年分を前払いした場合、3回に分けて1年ごとに経費として計上します。

駐車場を借りる料金

駐車場代は、会社や事業所の近くに月極駐車場を借りる場合と、営業先などでコインパーキングを利用する場合があり、それぞれに計上する勘定科目が異なります。

月極駐車場の勘定科目は「地代家賃」です。来客用として借りた場合も、勘定科目は同じく「地代家賃」になります。

一方で、コインパーキングを利用した場合の駐車料金は「旅費交通費」または「雑費」で費用を計上します。

ただし、経費として計上できるのは事業などの業務使用に限ります。旅費精算書などに利用目的が明確にわかるよう記載しておくことが必要です。

ローンで購入した場合の金利

車をローンで購入した場合の月々の返済額は、元本(車の取得費)と金利(利息)部分を合わせた金額になります。ローンの元本部分は負債として会計処理されるため、金利と合算して経費計上はできません。

そのため、金利についてはローン完済まで支払利息として計上します。元本は定められた法定耐用年数の期間に、減価償却費として会計処理をします。

各種税金

車にかかる税金には、購入時に納税する「自動車税環境性能割」、新規検査時と車検時に納税する「自動車重量税」、毎年納税する「自動車税種別割」または「軽自動車税種別割」があります。

業務に使用する法人名義の車にかかる税金は「租税公課」という勘定科目を用いて、経費として会計処理を行います。

法人化していない個人事業主は、事業での使用とプライベートでの使用の比率を確認し「家事按分」します。

事業での使用部分は「租税公課」として会計処理を行い、家事按分の比率は走行距離や走行時間、走行回数などに基づいて計算します。

その他の経費

車を所有し利用することで、税金以外に保険料や駐車場代、ガソリン代、オイルやタイヤなどの部品交換にかかる経費が発生します。こうした経費は「車両費」または「消耗品費」として、会計処理します。

一般的にオイルやタイヤなどの交換にかかる費用は「消耗品費」として計上しますが、「車両費」として計上することもできます。車に関する経費を明確にしたい場合は「車両費」に統一した方が費用を把握しやすいでしょう。

また、これらの経費も家事按分が可能なので、個人事業主の方は、事業部分とプライベート部分の走行距離や走行時間などの利用記録を付けておくようにしましょう。

車での税金対策に関するよくあるQ&A

ここでは、車での税金対策に関するよくあるQ&Aの中から「車による税金対策の方法」「減価償却の計算方法」「個人事業主が同じ車を業務とプライベートで利用している場合の減価償却の方法」について、回答します。

車による税金対策はどのようにするの?

業務用車両の取得費や減価償却費の計上により、税金対策を進めます。業務で使用する車を取得する際の費用は、経費として計上可能です。

また、車両や建物のように取得時から時間の経過とともに価値が低下する資産は、減価償却という会計処理を行います。減価償却費は所得から差し引けるために納める税金が減り、節税が可能です。

新車の普通自動車の場合、減価償却の基準となる法定耐用年数が6年と定められています。その間、減価償却費を計上でき節税できます。

なお、業務に利用していない車は減価償却の対象外になります。

減価償却費を計算する定率法と定額法の違いは?

減価償却費の計算方法は、定率法と定額法の2つです。定率法の計算式は「未償却残高×償却率」、定額法の計算式は「取得価格×償却率」になります。

定率法は未償却残高が時間の経過とともに減るため、償却当初は多く経費を計上できます。一方で、定額法は期間終了まで毎年同額の経費を計上できます。

償却率は耐用年数に応じて定率法、定額法ごとに法令で定められています。基本的には、法人が定率法、個人事業主が定額法にて会計処理を行います。

個人事業主が同じ車を業務とプライベートで利用している場合でも、減価償却できますか?

個人事業主が業務とプライベートで同じ車を利用している場合は、業務とプライベートの使用比率を割り出し、業務で使用した部分について減価償却することができます。

この比率のことを「家事按分」といいます。使用比率は、走行距離や利用時間、利用頻度などを参考に計算するのが一般的です。税務調査があった時に備え、比率を決めた根拠を説明できる資料を作成しておきましょう。

まとめ

この記事では、車の購入による税金対策として「減価償却」を中心に解説しました。減価償却は業務に利用する車という条件はありますが、購入する車の台数や1台あたりの購入代金の上限は設けられていません。

事業収益を考慮しながら、業務に利用する車の購入を税金対策の1つとして検討してみましょう。

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