雹で車が傷ついた!自動車保険は使える?

雹災は、保険上「物の飛来・落下」による事故とみなされます。そのため、突然の雹で車に傷やへこみ、ガラスが割れるなどの被害が出た場合、車両保険に加入していれば修理費用が補償されます。

ただし、対物賠償責任保険など他人への補償を目的とした保険契約では、自車の損害がカバーされません。車両保険に入ってない場合は、雹による損害を受けた場合に自動車保険で補償されず、費用はすべて自己負担となってしまいます。

自己負担金額の計算方法

車両保険は、自己負担金額(免責金額)を設定できます。

例えば、車両保険金額(契約した補償上限額)が150万円の契約で、自己負担金額を10万円に設定した場合、雹による損害により車の修理代が100万円かかる際には、10万円をご自身で負担し、残り90万円が車両保険金として支払われます。修理代が自己負担金額以下の場合、保険金は支払われません。

また、修理費用が車両保険金額を上回る場合や、修理不能な状態と判断される全損時には、契約した車両保険金額の全額が支払われます。

そもそも雹とは何?

「雹」とは、発達した積乱雲の中で作られて降る、直径5mm以上の氷の塊のことです。一方で、直径5mm未満の小さな氷粒は、一般的に「霰(あられ)」と呼ばれます。

雹は春から初夏にかけて、大気の状態が不安定なときに発生しやすく、短時間で局地的に降ることが特徴です。突然の雹は、私たちの生活に被害を及ぼすため、注意が必要な自然現象と言えます。

雹の損害で自動車保険を使うと等級はどうなる?

雹による損害で自動車保険を使うと、物の飛来・落下による事故として翌年の等級が1つ下がります。これは「1等級ダウン事故」に該当するためで、翌年度は「事故有係数適用」による割引率となり、保険料が割増になるからです。

なお、1等級ダウン事故の場合、事故有係数が適用される期間は通常1年間です。そのため、翌々年まで無事故の場合には事故有係数の適用がなくなり、等級も1つ上がり元の状態に近づきます。

この項では、自動車保険の等級と割引率の仕組みや、雹による損害で車両保険を使ったときの割引率の変化について解説します。

自動車保険の保険料の割増・割引率

自動車保険の等級(ノンフリート等級)は20等級まであり、等級が高い(20等級に近い)ほど保険料の割引率が高くなる仕組みです。

等級は、保険の使用を判断するうえで重要です。まずは以下の表から、等級と保険料の割増率・割引率の関係を理解しましょう。

【継続して契約する場合の割増引率】
等級 事故有係数適用なし(%) 事故有係数適用あり(%)
割増 1等級 +108
2等級 +63
3等級 +38
4等級 +7
割引 5等級 ▲2
6(F)等級 ▲13
7(F)等級 ▲27 ▲14
8等級 ▲38 ▲15
9等級 ▲44 ▲18
10等級 ▲46 ▲19
11等級 ▲48 ▲20
12等級 ▲50 ▲22
13等級 ▲51 ▲24
14等級 ▲52 ▲25
15等級 ▲53 ▲28
16等級 ▲54 ▲32
17等級 ▲55 ▲44
18等級 ▲56 ▲46
19等級 ▲57 ▲50
20等級 ▲63 ▲51
出典:損害保険ジャパン株式会社「個人用自動車保険『THE クルマの保険』料率制度

※等級に応じた割引率・割増率は、保険会社によって異なる場合があります。

雹の損害で自動車保険を使った時の等級の変化

たとえば、現在8等級の方が1年間無事故の場合は、次回の契約更新時の等級が1等級アップして9等級となります。

しかし、雹による損害で車両保険を使った場合は、次回の契約更新時に等級が1つダウンします。等級ダウンと合わせて事故有係数が適用されることで、同じ等級でも事故がなかった場合(事故有係数適用なし)より割引率が低くなります。

例えば、損保ジャパンの個人用自動車保険では、8等級の方が雹による損害で車両保険を使うと、翌年は7等級になり、事故有係数が適用されます。7(F)等級(事故有係数適用なし)の割引率は▲27%ですが、7(F)等級(事故有係数適用あり)の割引率は▲14%となっており、割引率が低いことがわかります。

事故有係数が適用される期間は、事故の内容によって異なります。雹による損害(物の飛来・落下)のような1等級ダウン事故の場合は、通常1年間です。

7(F)等級(事故有係数適用あり)で更新した後、1年間無事故の場合は次の更新時に事故有係数の適用がなくなり、1等級上がった8等級(事故有係数適用なし、割引率▲38%)に戻ります。

等級 事故有係数 割引率 備考
現在(保険使用前) 8等級 なし ▲38% 無事故であれば翌年9等級へ
次回契約更新時 7(F)等級 あり ▲14% 1等級ダウン+事故有係数適用
次々回契約更新時(無事故) 8等級 なし ▲38% 事故有係数解除、等級も回復

雹から車を守るには

保険で修理代が補償される場合でも、そもそも雹による被害に遭わないに越したことはありません。日頃から天気予報を確認し、雹の恐れがある時には次のような対策を心がけましょう。

車を雹が当たらない場所に移動する

雹や霰が降ってきた場合、または降りそうな場合、できるだけ早く車を屋根のある場所へ移動させましょう。

ガソリンスタンドや商業施設・公共施設の屋内駐車場、地下駐車場、ガレージに移動すると安全です。

特に、天気予報で「大気の状態が不安定」と伝えられ、「雷注意報」「竜巻注意報」が発令されているときには、雹が降る可能性があります。できるかぎり早く、屋根のある場所に移動しましょう。

近隣の屋根付き駐車場や一時的に避難できそうな場所を普段から把握しておくと、いざという時に落ち着いて対応できます。

車を布団などで保護する

屋根のある場所へすぐに避難できない場合は、布団や厚手の毛布などを車にかけて衝撃を和らげる応急処置も有効です。雹の直撃による被害を軽減できる可能性があります。

ただし、あくまで応急的な対策です。雹の勢いが強いと防ぎきれない場合もあります。また、急に雹が降ってきた際に車外で作業することは危険です。まずは、自身の安全確保を最優先にしてください。

運転中は停車する

走行中に雹に遭遇したら安全確保を最優先し、可能な限り安全な場所に駐停車しましょう。

一般道では周囲を確認し、車を道路の左に寄せて駐停車したうえで、ハザードを点灯します。高速道路では急停車せず、サービスエリアやパーキングエリアに避難することが最も安全です。なお、追突リスクが高い路肩の駐停車は避けてください。

無理に走り続けると、視界不良やスリップによって事故に遭うリスクを高め、場合により車両に大きなダメージを負います。慌てずに、安全な場所で天候の回復を待ちましょう。

雹による被害と自動車保険の補償内容に関するよくあるQ&A

雹災による車の被害と自動車保険について、よくある質問をまとめました。突然の雹に慌てないためにも、ぜひご確認ください。

雹で車が壊れたけど、本当に保険を使えるの?

一般的に車両保険に加入していれば、雹で生じた車の損害は保険で補償されます。雹による損害は保険上「物の飛来・落下」による偶然な事故なので、車両保険の補償対象に含まれます。

車両保険に未加入の場合は、雹の被害は補償されないため注意してください。

車両保険に入ってない場合、雹の被害はどうすればいい?

自賠責保険(強制保険)の補償対象は他人への賠償(対人賠償)に限られ、任意保険において車両保険に加入していない場合は自車の雹による被害は対象外です。したがって修理費用は全額自己負担となります。

大きな損害を受けた際には修理代が高くなりやすく、高額の修理代を自ら負担しなければならない場合があります。車両保険も含め、充実した補償内容の自動車保険に加入することを検討しましょう。

小さなへこみ程度の雹被害でも保険を使うべき?

軽微な損傷で修理代が安く済む場合、保険を使わないほうが良いこともあります。保険を使うと翌年の等級ダウンで保険料が上がり、修理代の負担は回避できても、保険を使用しない場合と比べたときに、将来の保険料支出差額が修理代金を上回る場合があります。

1回の修理代が自己負担でも問題ない金額であれば、等級を守るために保険を使わずに修理することも選択肢の一つです。

まとめ

突然の雹による車の被害は、車両保険に加入していれば補償されますが、保険を使うことで翌年の等級ダウンや保険料アップにつながる場合があります。自己負担金額(免責金額)を考慮し、保険を使うか慎重に判断しましょう。

雹から車を守る対策も大切ですが、万が一の大きな損害に備えるためには、自身の自動車保険に車両保険をセットしているかを含め、補償内容を十分に確認しておくことが重要です。

「今の補償で大丈夫か?」「保険料は適正か?」といった疑問を感じたら、まずは保険会社や保険代理店に相談してみましょう。

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