思い出の山岳テント泊デビューの地が復活するみたい【#最高のキャンプ】
(この記事は、「Logbum Camp」リリースキャンペーンで、ブロガーのOKPさんが執筆した「#最高のキャンプ」に関する記事を転載したものです。)
元々、テントを使ったキャンプ(野営)は子どもの頃にボーイスカウトで覚えた私。ファミリーキャンプとも無縁の実家でしたが、好きな釣りをしながらの野営、たちかまど作りや煮炊きを経験したのもこの頃でした。
その後は趣味としてのキャンプから遠ざかっていましたが、結婚後に夫婦で登山を始めたことで再びテント泊をする機会が訪れました。最初は奥多摩や八ヶ岳での日帰り登山を楽しんでいましたが、山小屋などに泊まると日帰りでは行けない縦走コースも楽しめることが分かります。そうなると次に興味をつのがテント泊の登山でした。
ここで基本的な山でのテント泊について。山の中(国立公園、国定公園などの自然公園)ではどこでも好き勝手にテントを張っていいわけではなく、「キャンプ指定地(テント指定地)」と呼ばれる場所にテントを張ることになります。このようなキャンプ指定地には管理者がいて、500円程度から数千円の料金を徴収していることが一般的。登山をする人の間では「テント場(テン場)」なんて呼ばれています。
そんな山のテント泊で使われるのは、平地のキャンプ場で使われるような居住性を重視したテントではなく、軽量さや、ときに風速10m/sを軽く超える山の強風にも負けない耐久性を兼ね備えた「山岳テント」。その分、居住性はイマイチで、中は人が座れる程度の天井の高さと、バックパックを置いて横になって寝られる程度の空間であることが殆どです。
中には耐久性や居住性を犠牲にしてさらに軽量化を追求したシェルター的なテントも存在しますが、一般的には1〜2人用で1.5kg前後の重量のものが多いでしょうか。我が家が最初に買ったのもド定番とされる山岳テントでした。
テント泊デビューは東京都最高峰、雲取山にあったテント場
さて、山岳テントを手に入れた我が家が最初のテント泊の地として選んだのが、奥多摩の雲取山に続く石尾根の「五十人平」と呼ばれる場所にあった「奥多摩小屋」でした。
東京都の最高峰である雲取山(2017m)。奥多摩湖の上流部から雲取山に登る人気の登山ルート「鴨沢ルート」の途中、標高1750mの尾根上にあったこのテント場は、東京近郊に住む登山好きのテント泊デビューの地としてうってつけの条件が揃った場所でした。
鴨沢ルートの登山口には駐車場(丹波山村営駐車場)もありますが(圏央道の青梅ICから約1時間半)、公共交通を利用した場合でも新宿からJR中央線〜青梅線で奥多摩駅まで移動すれば、そこからバスで登山口へのアクセスが可能でした。
登山口からは標高差で約1200m、コースタイムで4時間以上とまあまあの距離ではあるものの、八ヶ岳や日本アルプスでのテント泊縦走を目標とする登山者にとって適度な負荷の登山ルートなのです。
テント泊の場合、日帰り登山の荷物に加えてテントやシュラフ(寝袋)、シュラフの下に敷くマット、防寒着、食料などが加わるため、よほど軽量化を意識しなければバックパック全体で10〜15kgを超える重量になります。日帰り登山よりもひと回り大きくなるバックパックを背負って山を歩くことは、テント泊をしてみたい登山者にとっての最初のハードルと言えるかもしれません。
奥多摩小屋までの登山道(鴨沢ルート)は前半は長い樹林帯、石尾根に出てからは比較的平坦な尾根道となります。岩場などの危険な箇所は少なく、黙々と登り続けるコースなので自分のスタミナや適切なペースを知るのに最適です。コースの途中には七ツ石小屋という別の山小屋もあり、休憩ポイントにしたりいよいよ体力的に厳しければ宿泊地をそちらに回避することもできました(現在、七ツ石小屋のテント場は要予約)。
奥多摩小屋は名前の通り、素泊まりできる山小屋が管理。テント場の近くには湧水を利用した水場もあり、飲料水や調理に使う水の確保もできました。雲取山の山頂まであと1時間弱程度の場所ですが、体力的に厳しいと感じたならここで1泊だけして戻ることだって可能でした。
富士山を望む奥多摩小屋のテント場、雲取山の山頂で迎える朝
樹林帯の中のテント場ではありましたが、尾根の上で山岳救助の際などに使用されヘリポートも設置された少し開けた場所なこともあり、晴れていればテント場から富士山も見え、東京都内でテント泊をしてるとは思えない体験をすることができるロケーションのテント場でした。
少し登った尾根から見下ろした五十人平。写真の中央付近に見えるのがヘリポートです。
このときは奥多摩小屋に到着してから天候は崩れてしまったのですが、夜には晴れて星空も見えました。そういえば外でガサガサ音がすると思って外に出たら、鹿がテントのすぐ横にいましたっけ……。
翌朝早く、雲取山の山頂に向かう際にテント場付近から見えた富士山。山梨側の富士吉田ルートを登る登山者のヘッドライトの筋が星よりも明るく見えたのが印象的でした。
そして東京都の最高峰、雲取山の山頂から見た朝日と奥多摩の山並みと富士山。山の中でテント泊をすると、このような瞬間にも立ち会うことができると実感することができた山行でした。
初めてテント泊の荷物を背負っての登山だったこともあってか、下山後に奥多摩駅前の食堂で頼んだ天ぷらとざる蕎麦、瓶ビールを飲みながら食べた刺身こんにゃくが最高においしかったのを今でも覚えています。
「Logbum Camp」で、当時のキャンプ記録を作成してみました 👉 雲取山、五十人平(旧奥多摩小屋)でテント泊デビューの思い出
3年後の秋に再訪して紅葉やマジックアワーを堪能
私達が奥多摩小屋で無事にテント泊のデビューをしたのが2014年なので、かれこれ10年前のことになります。その数年後、今度は秋にもやはり奥多摩小屋でテント泊をしましたが、夏とはまた違うテント場の風景を楽しむことができました。2017年はちょうど西暦と雲取山の標高(2017m)が同じだったこともあり、雲取山はすっかり人気の山になっていてテント場もご覧のにぎわいでした。
このときも奥多摩小屋にテントを張ってから、カラマツの紅葉を眺めつつのんびりと雲取山の山頂へ。
日没まで雲取山の山頂で過ごし、夕焼けやマジックアワー(日没後や日の出前、空の色が美しく見える薄明るい時間)を堪能してからテント場に戻りました。翌日は鴨沢へのピストンではなく、雲取山を越えて埼玉県秩父市の三峯神社へ抜けました。この奥多摩と三峯神社を結んだルートも雲取山登山では人気の縦走路です。
閉鎖されてしまった“思い出のテント場”が復活しそう
この次は冬に雲取山に雪が積もったら行きたいな…… なんて考えていましたが、奥多摩小屋は小屋の老朽化により2019年に取り壊しが決定、残念ながらこの素晴らしいテント場も閉鎖されてしまいました。
奥多摩小屋(雲取山)閉鎖のお知らせ
昭和34年に建設された奥多摩小屋は、多くの登山者にご利用いただいておりますが、施設の老朽に伴い利用者の安全を確保することが困難なため取り壊すことといたしました。
このため、平成31年3月31日で閉鎖いたしました。奥多摩小屋の閉鎖に伴い、テント泊及びトイレのご利用もできなくなりますのでご注意ください。
奥多摩小屋(雲取山)閉鎖のお知らせ/奥多摩町
この時期、世間はコロナ禍となり三密回避からのキャンプやテント泊の登山も注目されるのですが、私たち同様にテント泊デビューをした思い出のテント場がなくなってしまったことを嘆く声はSNS等でも目にしました。
もちろん山の素晴らしいテント場は他にもたくさんありますし、雲取山の周辺にもテント泊が可能なテント場は複数あるのですが、東京都内では唯一(?)と言える開けた尾根上の奥多摩小屋にはそのロケーションも含めてファンも多かったようです。
奥多摩小屋が取り壊されて数年……。 「五十人平に再びテント場を作ってほしい」という要望は根強くあったようで、都議会でも議題に上がり、ついに「奥多摩小屋」改め(山小屋機能はないので)「五十人平野営場」の整備が決定したというれしい情報がありました。2024年夏現在、既に管理棟の工事はスタートしているようで、建設中の新しい管理棟の写真などもSNSに流れてくるようになりました。
五十人平野営場は管理棟に合わせてバイオトイレも設置されるようで、以前に増して快適に過ごせるテント場が期待できそう。正式オープンがいつになるかはまだ分かりませんが、ぜひまたテントを背負って出かけたいと考えています。
最後に東京近郊に在住で、これからテント泊登山デビューを検討してる方へ。五十人平野営場のオープン時期はまだ詳細不明なので、公共交通での移動を条件とするならば、こちらの記事などが参考になると思います。奥多摩小屋の閉鎖以降はテント泊デビューの場所として山梨県の「富士見平小屋テント場」(登山口から徒歩1時間程度とハードルも低め)の名前をよく見るようになった気がします。
【テント場情報】初心者におすすめのテント場15選 新宿から電車・バスなどの公共交通機関でアクセスしやすくて、交通費もそこまで高くない! – やまりこ
いきなりのテント泊が不安であれば、まずはテント泊と同じパッキングの荷物を背負って1〜2時間程度で登れる、できれば歩き慣れた身近な山を歩いてみて、普段とのコースタイムの変化、疲れ具合などを確認してみるといいでしょう。テントの設営方法を、実際に家や近所の公園などで確認しておくこともお忘れなく。ぜひ、素敵なテント泊デビューをしてください。
文◎OKP(@iamadog_okp)
提供 はてなブログ ※『I AM A DOG』より
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