年金は、いつからどうやって受け取れるの?
父は年金を受給できる65歳になりましたが、まだ働いています。年金は働いていても受給できると聞きましたが、受給するには自分で何らかの手続きをする必要があるのでしょうか?年金の受給について教えてください。
年金を受給するには自分で申請を。申請時期は選べますが、受給額が変動することも。
年金を何歳から受給したらよいのか、悩む方は多いと思います。年金は65歳から受給できるだけでなく、繰上げ受給や繰下げ受給など受給時期を選ぶことができます。ただし、年金を受給するには自分で申請を行う必要があったり、受給する時期によって受給額が変動したりします。今回は、損をしない年金の受給方法についてご紹介しましょう。
受給できる年金の種類
受給できる年金には、老齢基礎年金とその上乗せとなる老齢厚生年金などがあります。国民年金に加入している方は老齢基礎年金、厚生年金保険に加入している方は老齢基礎年金及び老齢厚生年金を受給することができます。
老齢基礎年金とは?
老齢基礎年金は、20歳以上60歳未満だった40年間のうち、10年以上納付している期間がある方が受け取れる年金です。
※年金額は保険料の納付額によって異なり、全期間保険料を納めた場合は満額の老齢基礎年金が支給されます。
老齢厚生年金とは?
老齢厚生年金は、老齢基礎年金の支給要件を満たしていること及び厚生年金保険の被保険者期間が1か月以上あることが必要です(ただし老齢基礎年金と異なり、20歳未満や60歳以上の期間も含みます)。
老齢厚生年金の額は、納付していた期間だけではなく、納付金額によっても受給額が異なります。給与が高い方ほど多くの厚生年金保険料を控除されていたと思いますが、その分、年金額は多くなります。逆に、控除されていた保険料が少ない場合は、受給する年金額も少なくなります。
年金の請求方法
それでは、年金を請求するにはどうすればいいのでしょうか?
支給開始年齢に到達する3か月前に「年金請求書(事前送付用)」が送付されます。年金を受けるために必要な加入期間はあるものの、厚生年金保険の加入期間が1年未満など65歳で受給権が発生する方には、年金請求書に代えて「年金に関するお知らせ(ハガキ)老齢年金のお知らせ」が送付され、65歳の誕生日の3か月前に上記同様の「年金請求書(事前送付用)」が送付されます。支給開始年齢になったら必要書類を持って、お近くの年金事務所で手続きをしてください。
厚生年金保険の加入期間がない、厚生年金保険の加入期間が1年未満の場合は?
厚生年金保険の加入期間がない、厚生年金保険の加入期間が1年未満の場合、生年月日が昭和36年4月2日(女性は昭和41年4月2日)以降生まれの方は新規で老齢年金を請求しましょう。
この場合は「年金に関するお知らせ(はがき形式)」が送付されます。これは受給権があることを伝えて年金のもらい忘れを防ぐための連絡です。その後に年金請求書が送付されますので、この請求書を用いて老齢年金の請求を行います。
この場合、戸籍謄本等、振込先の預金通帳の写し、印鑑(認印)を添付して最寄りの年金事務所に提出します。
66歳以降の繰下げ年金の受け取りを希望するときには、新規の請求と繰下げ請求書を同時に提出します。
また、昭和36年4月1日(女性は昭和41年4月1日)以前生まれで一定要件に該当する方(※)は60歳~65歳になるまでの間「特別支給の老齢厚生年金」というものが支給されます。(支給開始年齢は生年月日により変動)
(※)一定要件とは以下のどちらにも該当する必要があります。
1:厚生年金保険や共済組合等の加入期間が1年以上
2:老齢基礎年金の受給資格期間(保険料納付済期間が通算10年以上)を満たしている
そのため65歳になる前からすでに「老齢年金」が支給されているので、老齢年金支給開始年齢である65歳になったときは、以下のいずれかを選択することとなり、新規の請求にはなりません。
・原則通りの老齢年金に切り替えをし、継続して年金を受給
・年金の受給を一旦停止し、繰下げ受給の請求を行う
年金は何歳から受給できるの?
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として65歳から受給することができます。
※生年月日が昭和36年4月1日(女性は昭和41年4月1日)以前の場合、65歳前に老齢厚生年金を受給している可能性があります。
繰上げ、繰下げ受給をすると受給額が変わります
繰上げ受給を希望する場合、請求すれば60歳~64歳の間に受給をすることができます。この場合、年金額は減額となります。逆に、66歳以降に受給開始を繰下げて(最長5年まで)年金額を増やすこともできます。
図の出典:札幌市公式ホームページ
http://www.city.sapporo.jp/hoken-iryo/nenkin/rorei.html (最終確認:2017年11月27日)
繰下げ受給をする年金の種類を選べます
老齢基礎年金、老齢厚生年金のどちらか片方だけを繰下げる(選択する)ことも可能なので、希望欄は「老齢基礎年金のみ繰下げ希望」、「老齢厚生年金のみ繰下げ希望」の2つがあります。一方のみの繰下げを希望する場合はいずれかを指定しますが、どちらも繰下げるときにはこのはがきを返送する必要はありません。
繰下げた年金を請求するときは、65歳からの年金請求と「繰下げ請求書」による繰下げ請求を同時に行います。提出した月の翌月から、繰下げによって増額となった年金を受け取ることができます。
障害年金や遺族年金について
ケガや事故によって生活や仕事などが制限されるようになった際に受け取れる「障害年金」や被保険者または被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取れる「遺族年金」は、年齢ではなく受給要件を満たした段階で受け取ることができます。
障害や死亡の起算日が属する月の前々月までの被保険者期間のうち保険料納付済期間が3分の2以上ある場合、または事故が発生した月の前々月までの1年間に保険料の未納がない場合に支給されます。
ご紹介したように老齢基礎年金・老齢厚生年金は、受け取る年齢を選ぶことができ、また年齢によって金額が異なります。自分の生活状況に合わせて、年金を受給するタイミングを考えるようにしましょう。また年金は、自分で請求しないと受給されないので、忘れずに請求の手続きをして受給しましょう。
社会保険労務士 田治米 洋平
給与や年金の疑問をわかりやすく解説します。
社会保険労務士の立場からお金に関するお話をお届けしています。 給与や年金は多くの人にとって身近な問題です。 最近何かと話題のこれらの情報を、私、田治米洋平がナビゲートします。
【URL】 | http://www.sr-tajime.com/ |
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【経歴】 | 社会保険労務士。同志社大学卒業後、IT企業にて人事管理部門にて勤務。 2006年、独立。2014年青山学院大学大学院法学研究科修了。 |
【監修】 | 「起業に関するお金Q&A」(日経産業新聞)、IT現場の労務問題(「労務事情」産労総研)、「資金調達マニュアル」(経産省DG)、「労務トラブル相談」連載(マイナビ)他 |
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