著者
ウィリアム・マッカスキル (William MacAskill)
オックスフォード大学哲学准教授。非営利組織であるギビング・ワット・ウィー・キャンおよび80,000アワーズの共同創設者。生涯にわたる寄付者を募り、5億ドル以上を慈善事業におくるとともに、<効果的な利他主義>運動を進めている。『ニューヨーカー』『ガーディアン』『インディペンデント』『タイム』『ワシントン・ポスト』などに寄稿。
【要点1】
「効果的な利他主義」とは、手持ちの資源でできるかぎりのよいことを行ない、人々の生活を向上させようという考え方である。
【要点2】
世界の所得格差は大きいので、先進国の一般的な所得の人でも、貧困国の人々に対して非常に大きな影響を与えられる。
【要点3】
収穫遁減(ていげん)の法則によれば、注目と資源の集まっていない分野に支援をした方が、より大きい影響を与えられる。災害復興支援よりも貧困や公衆衛生に働きかけたほうが効果的だ。
【要点4】
寄付をするために稼ぐというキャリアは、あなたがいなくては起きなかった影響を及ぼす方法のひとつだ。
レビュー
ある失敗談から本書は始まる。
トレバー・フィールドは南アフリカのごく普通の中年男性だった。あるとき「プレイポンプ」という新型ポンプを使って、貧しい農村の女性たちの水汲みをもっと楽にしようと思い立った。プレイポンプは、メリーゴーランドのようなポンプだ。子供たちがメリーゴーランドに乗っかりぐるぐる回すと、その動力で地中から水を汲み上げる。子供たちの遊ぶ力で村に水を安定提供できる、画期的な発明に思えた。フィールドが慈善団体を設立し普及に乗り出すと、プレイポンプは多くの注目を浴びた。
しかし状況は急に暗転する。プレイポンプの実用性に疑義が呈されたのだ。実はプレイポンプの実用性について、まともに考察した者はそれまでいなかった。検証を行なうと、プレイポンプは旧来型の手押しポンプと比べ、さまざまな欠点があるとわかった。
プレイポンプの推進者たちは、客観的な事実を無視し、感情に流されてしまっていたといえる。「遊ぶ子供たちによって村にきれいな飲み水を提供する」という魅力的なイメージに囚われていたのだ。この話の教訓は、「善意は必ずしも成功に結びつくとは限らない」ということである。
本書でいう「効果的な利他主義」とは、こうした失敗に陥ることを避け、世の中にできるかぎりよい影響を与えるための考え方だ。私たちには、世界をよりよい場所にするだけの力がある。本書はその一歩の踏み出し方を教えてくれるだろう。
ウィリアム・マッカスキル (William MacAskill)
オックスフォード大学哲学准教授。非営利組織であるギビング・ワット・ウィー・キャンおよび80,000アワーズの共同創設者。生涯にわたる寄付者を募り、5億ドル以上を慈善事業におくるとともに、<効果的な利他主義>運動を進めている。『ニューヨーカー』『ガーディアン』『インディペンデント』『タイム』『ワシントン・ポスト』などに寄稿。
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