レビュー
人類の未来は、クロステックが変える。そう実感させてくれるのが、本書に登場する100の技術である。クロステックとは、一見すると無関係な技術、分野、人がつながり合って、新たな化学反応を引き起こすことを指す。たとえば、材料工学の進歩が量子コンピュータの進歩を支え、再生医療の発展を加速させる。また、将棋や囲碁に活用されたAI技術が、自動運転の実用化を後押しする。技術の進歩と普及は、こうして複数の領域がクロスしたうえで成り立っている。とりわけ都市や建築、医療といった、学際的な性質の強い領域では、この傾向はますます顕著になるだろう。
私たちの生活やビジネスをより豊かなものにするにはどうしたらいいのか? それは、一見すると無関係な技術の進歩を、他の分野とどのように掛け合わせるかにかかっている。もちろん個々の企業やビジネスパーソンの競争力も、このクロステックの流れをいかに取り込むかに大いに左右されるといっていい。
本書は、日経BP社が総力を上げて技術の最先端を分かりやすく解説する、「100の技術」シリーズの最新刊である。日経の専門誌編集長30人が徹底的に未来を予測するという、大充実の内容だ。自動車、機械、半導体、コンピュータ、通信、建築住宅、土木、医療製薬バイオなど、カバー範囲は実に広い。
いま、各分野の最先端で起こっている「クロス」の潮流を俯瞰し、これからの社会とビジネスの変化に想像を巡らすにはうってつけの一冊である。