著者
横田 増生(よこた ますお)
1965年、福岡県生まれ。アイオワ大学ジャーナリズムスクールで修士号。93年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務め、99年フリーランスに。著書に『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』(朝日文庫)、『評伝 ナンシー関「心に一人のナンシーを」』(朝日文庫)、『中学受験』(岩波新書)、『ユニクロ帝国の光と影』(文春文庫)、『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』(小学館)などがある。
【要点1】
ユニクロではマニュアル通りに仕事をすることが最優先され、現場からの意見は一切反映されない。徹底した人員管理で、現場の士気は下がる一方だ。
【要点2】
海外工場は人件費の安い国へ移転していっているが、その劣悪な労働環境は黙認されつづけている。
【要点3】
仕事量に対して時給が安いため、集まるのは外国人ばかりになり、ミスコミュニケーションによるトラブルが続発している。その結果作業効率が下がり、さらに人手が足りなくなるという悪循環が起きている。
【要点4】
本人の意思を無視して、長時間働かされる「ブラックバイト」。シフトは勝手に組まれ、辞めたくても辞めさせてもらえない環境がユニクロにはある。
レビュー
衝撃の内容である。安価で高品質な「ユニクロ」の服は、誰のクローゼットにも1枚はあるのではないだろうか。そのユニクロの製品が、こんなにも過酷な労働のうえに成り立っているものだとは……。
本書で指摘されるユニクロの問題点は、サービス残業、長時間労働、パワーハラスメントといった言葉に集約される。とくに「感謝祭」というセール期間に入ると、店舗は圧倒的な人手不足に陥り、過酷なシフトが勝手に組まれることも日常茶飯事だという。
こういったことを噂話として語るのは簡単だ。しかし本書が特異なのは、著者が実際にアルバイトとしてユニクロで働き、取材をおこなったという点にある。以前にもユニクロを告発する書籍を執筆している著者だが、今回は自分の名前を変えてまでユニクロに潜入している。その甲斐もあってか、本書では実際に働いた者にしかわからない現場のリアルが生々しく描かれている。またユニクロ製品を生産している海外の下請け工場の取材もおこなわれており、日本よりもさらに劣悪な労働環境が浮き彫りになってくる。
日本で「働き方改革」が叫ばれるようになって久しいが、届かない現場の声、経営者の独裁、慢性的な人手不足などは、多くの日本企業に共通した問題でもある。「働き方」や「企業のあり方」について、あらためて真剣に考えさせられる一冊だ。
横田 増生(よこた ますお)
1965年、福岡県生まれ。アイオワ大学ジャーナリズムスクールで修士号。93年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務め、99年フリーランスに。著書に『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』(朝日文庫)、『評伝 ナンシー関「心に一人のナンシーを」』(朝日文庫)、『中学受験』(岩波新書)、『ユニクロ帝国の光と影』(文春文庫)、『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』(小学館)などがある。
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