著者
外山 滋比古(とやま しげひこ)
1923年生まれ。東京文理科大学英文学科卒業。『英語青年』編集長を経て、東京教育大学、お茶の水女子大学で教鞭を執る。お茶の水大学名誉教授。専攻の英文学に始まり、レトリック、思考法、エディターシップ論、日本語論などの分野で独創的な仕事を続けている。著書に『思考の整理学』『「読み」の整理学』『ライフワークの思想』『アイディアのレッスン』『空気の教育』『家庭という学校』『異本論』『知的創造のヒント』『ことわざの論理』『忘却の整理学』など。
【要点1】
人工知能が人間の知能を脅かし始めている時、ことばの伝達は最も新しい知的テーマである。
【要点2】
違った興味を創出することができる。
【要点3】
敬語は、コトバの伝達効率を高める優良なレトリックである。
【要点4】
「むかし、むかし、あるところに……」というおとぎ話の枕ことばは、第4人称(あるところ)、第5人称(むかし、むかし)を端的に表している。
レビュー
東大生や京大生に読まれる本の1位、2位を争うロングセラー、『思考の整理学』で知られる著者の文庫書き下ろしが登場した。『思考の整理学』では、思考の本質について取り上げられていた。一方、本書では、その思考を「伝える」という点にスポットライトをあてている。
日本人は思考の伝達が苦手である。知識を自分の頭に詰め込むことばかりに熱心で、自分の考えをどう深め、どう伝えるかにあまり思いを馳せていない。AIが人間を脅かすと言われるいま、情報発信力を高めるために大事なことは何なのか。それは「ことばの伝達とその整理学」であるというのが著者の主張だ。
「大きなコトバと小さなコトバ」「音声知能」「ことばの近景、中景、遠景」「第4人称と第5人称」。伝達にまつわる様々なキーワードをめぐるエッセイ集は、読んでいて心地よく、知的好奇心がくすぐられる。本書は、読み書き偏重のことばの教育に疑問を投げかけ、聞き、話すことの効用を述べている。読者は「耳の知性」がいかに大事かを痛感することになるだろう。
「知の伝達」という営みへの洞察を深めるうえで、まさに礎となる一冊である。易しい言葉を使って書かれているが、思考を磨き上げられる実感がもて、何度も読み直さずにいられない。著者の本を読んだことのない人も、この機会にぜひ本書を手にとってみてはいかがだろうか。
外山 滋比古(とやま しげひこ)
1923年生まれ。東京文理科大学英文学科卒業。『英語青年』編集長を経て、東京教育大学、お茶の水女子大学で教鞭を執る。お茶の水大学名誉教授。専攻の英文学に始まり、レトリック、思考法、エディターシップ論、日本語論などの分野で独創的な仕事を続けている。著書に『思考の整理学』『「読み」の整理学』『ライフワークの思想』『アイディアのレッスン』『空気の教育』『家庭という学校』『異本論』『知的創造のヒント』『ことわざの論理』『忘却の整理学』など。
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