著者
クリスチャン・マスビアウ (Christian Madsbjerg)
ReDアソシエーツ創業者、同社ニューヨーク支社ディレクター。ReDは人間科学を基盤とした戦略コンサルティング会社として、文化人類学、社会学、歴史学、哲学の専門家を揃えている。マスビアウはコペンハーゲンとロンドンで哲学、政治学を専攻。ロンドン大学で修士号取得。現在、ニューヨークシティ在住。
【要点1】
IT至上主義のいま、教育の現場でも理系ばかりが重視される傾向にある。しかし経営者や高い地位にいる高収入者、世界でイノベーションを起こすような人々には、文学、哲学、歴史学、政治学などの人文学系大学出身者が多い。
【要点2】
知性、精神、感覚といった「人間性」をフル活用させ、人文科学に根ざした実践的な知の技法を「センスメイキング」と呼ぶ。
【要点3】
シリコンバレーを中心にはびこる「何ごとも技術が解決する」「あらゆるものを数値化する」という態度は、センスメイキングの対極にある。
レビュー
このところAI(人工知能)という言葉を聞かない日はない。なかにはポジティブな話題もあるが、どちらかというと「人間 vs. AI」「AIの出現によりなくなる職業」という風に、私たちの危機感をあおるような報道が目立つ印象だ。
AIは今後、ますます身近なものになっていくだろう。しかし思い出して欲しい。1990年代半ば、それまでは一部の人しか使えなかったPCが、Windowsの登場とともに一般化されたときのことを。そして当時の大人たちが、「コンピュータという機械に仕事を奪われる」と戦々恐々としていたことを。
あれから20余年、たしかに誰もがPCを持つようになったし、ほとんどの仕事にPCは不可欠だ。だが仕事の出来はPCの性能ではなく、いまも変わらず「人間」に委ねられている。そして高いクオリティを求められる仕事であればあるほど、人間の持つ総合的な力が重要になることは、誰もが感じるところではないだろうか。
本書は現代の「IT至上主義」に一石を投じる。古典文学や哲学に親しむこと。歴史を読み解き、文脈を理解すること。表面的なデータに捉われず、深くにある真意を読み解くこと。そんな地道で泥臭いアナログな道こそが、真の実力者への道だ――。具体例をあげながら、著者はそのことを繰り返し丁寧に説いている。
IT時代を生きる私たちに、「本当に必要なことは何か」を考えさせてくれる良書だ。時代に取り残されそうで不安な人も、そうでない人も、目を通して損はないだろう。
クリスチャン・マスビアウ (Christian Madsbjerg)
ReDアソシエーツ創業者、同社ニューヨーク支社ディレクター。ReDは人間科学を基盤とした戦略コンサルティング会社として、文化人類学、社会学、歴史学、哲学の専門家を揃えている。マスビアウはコペンハーゲンとロンドンで哲学、政治学を専攻。ロンドン大学で修士号取得。現在、ニューヨークシティ在住。
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