一般的にコミュニケーションとは「双方向で行われるやり取り」ですが、上司と部下がコミュニケーションを取る場合、上司が話した内容に部下が答えるだけの一方通行のコミュニケーションが多くなります。一方通行のコミュニケーションでは、部下が育たないどころかやる気をそいでしまうことになりかねません。ここでは「一方通行型の上司の例」と「コーチングにおける信頼とは」また「部下がミスをした際の答えを引き出す方法」についてご紹介します。
価値観の違いを認め、相手の可能性に目を向ける
部下や後輩に対し、「私の言ったようにやれば良い」「ミスをしたお前が悪い」「このやり方が正しい」など、自分の体験や経験談を相手に押し付けている場合があります。自分の経験から「こうしろ」「ああしろ」と命令するのはあくまで自分自身が得たものであり、部下や後輩の現在の状況や環境に当てはまるものではありません。この時の問題点は、上司が部下に対して結果を作り出す方法が1つしかないこと、相手は命令されるがまま動き、自らの意思で行動できていないことが挙げられます。起こった出来事には、指示を与えるだけでなく、相手を尊重し、意見を話してもらうことが大事です。
大切なのは、上司は部下の目標を高める役目でいること、価値観の違いを認めること、知識・経験よりも相手の可能性に目を向け信頼することです。

コーチングにおける「信頼」とは
それでは上司が部下を信頼するとは、具体的にどのようなことなのでしょうか。よく「信頼して仕事を任せたのに、全然結果を出してくれなかった」という言い方をする上司がいます。この場合の「信頼」とは、「こちらの思うような結果を出すこと」という上司の身勝手な考え方であり、信頼しているとは言い難いでしょう。コーチングにおける「信頼」とは「どんな結果が出たにせよ、その相手はまだまだ無限の可能性を秘めている存在だと信じること」です。
また「彼はいつも失敗ばかりするので、もう信頼できない」と決めつけ、能力ばかりを追っているケースもあります。しかし「信頼」は「できる or できない」を見るのではなく、信頼を「する or しない」というその人の意思の問題です。ですから、「彼はいつも失敗ばかりするので、もう信頼できない」という発言を「彼がいつも失敗しても、私は彼のことを信頼する」と言い換える必要があります。
このようにコーチングにおいては、相手に気づきを与えたり答えを引き出す以前に、自らの考え方を改める必要があります。

部下がミスをしたときは
ミスなく仕事が順調に進むのはもちろん良いことですが、もし部下が仕事でミスをしたとき、上司であるあなたはミスの原因をどのように質問するでしょうか。
(A)なぜミスをしたの?
(B)何か(問題でも)あったの?
部下の立場を考えた時に、どちらがより真実の答えを引き出しやすいでしょうか。この場合、Aは自分を責められているような気持ちになりませんか。「なぜミスをしたの?」と質問すると、言い訳が出てくることがほとんどです。この場合ミスをした原因までたどりつけず、答えをすり替えられるか、たどり着くまでに時間がかかります。「なぜ」という言葉を使うと、「その人自身を責めている」ことになりますので、コーチングからは遠ざかってしまいます。
反対にBの「何か(問題でも)あったの?」という問いかけは、問題となる出来事にフォーカスされており、部下の持っている真実の答え(本心)を引き出すことができます。部下のことは責めていないので、ミスをした理由が話しやすくなるのです。このように、言葉一つで出てくる答えが変わるのです。
