埼玉県で働く仲間が一緒にボランティア活動を行う制度「さいたまジャパンダ協力隊」

2023年5月27日、28日の2日間、埼玉県越谷市の「イオンレイクタウン」で開催された「レイクタウン防災フェス2023」。損保ジャパンのブースでは「防災紙芝居」のワークショップを開催しました。
「ものを低いところに移動させる」「机の下に隠れる」など、地震が起こった際にとるべき行動を、魔法使いが5つの「魔法の言葉」として楽しく教える、損保ジャパンオリジナルの「防災紙芝居(ちちんぷいぷい)」。集まった子どもたちが身振り手振りを交えながら、お父さん、お母さんなどと一緒に一生懸命唱えます。
初日の午前、「防災紙芝居」をメインで担当したのは、埼玉中央支店 川口支社の須賀沼大幹。普段は保険営業を担当する入社5年目の職員です。
「魔法使いになりきるために、私たちも童心に返って思いきって役柄を演じました。それに対してお子さんたちも全力で応えてくれるのが嬉しかったし、心が洗われました」

この日は「紙食器づくり」のワークショップも開催。災害時に食器棚が転倒して食器が割れたり、水道が止まって食器が洗えなくなったりした事態を想定して、新聞紙を折りたたんで簡易な食器を作るワークショップです。

国内最大級の大型商業施設とあって、この2日間で、損保ジャパンのブースには1373名もの親子が来場してくれました。参加した親子からも、次のような声が寄せられました。
「地震が来たら、わたしが魔法をかけるね。」
「紙をこういう風に使えば、食器にできるんだ!」
「新聞紙や広告、その時にあるもので作れるね。」
「これなら、ぼくでも作れるよ!」
この2日間の「レイクタウン防災フェス2023」には、損保ジャパンの埼玉県内にある5部店から総勢573名の職員がボランティアとして参加。紙芝居や紙食器づくり体験のワークショップを交代しながら運営しました。
地域の防災ボランティア活動に携わる意義を、須賀沼は次のように語ります。

「私が担当する保険営業の業務は、基本的に代理店さんを通じて保険を販売するもので、エンドユーザーであるお客さまと直に接する機会がほとんどありません。こうしてボランティア活動を通じて感謝の声をいただいたり、防災意識への関心を持っていただけることで、損保ジャパンで働いている意義を再確認できる機会にもなっています」
損保ジャパンの埼玉県内にある6つの部店では、組織の壁を越え、横断的に県内の防災イベントのボランティア活動を支援する制度として2023年度に「さいたまジャパンダ協力隊」を立ち上げました。
「さいたまジャパンダ協力隊」では、県内63市町村のうち、埼玉県をはじめ10の自治体と包括連携協定を締結。各自治体と連携をとりながら、それぞれ要請に応じてソリューション提案や防災イベントへ参加(防災ワークショップを開催)したりしています。そして、イベントごとに6つの部店から自主的に集まった職員でボランティアチームを組み、運営しています。
地域で最適な避難経路を話し合う「SOMPO逃げ地図づくりワークショップ」

8月25日には、八潮市との包括連携協定にもとづき「SOMPO逃げ地図づくりワークショップ」を開催しました。
「逃げ地図」とは、高齢者など災害弱者の足を基準に色分けして避難方向を図示した地図となります。最も近い避難場所まで何分かかるのか。避難経路が色塗りされることで、直感的に危険な場所と逃げる方向を理解することができます。
この日は市内8つの自主防災組織の代表者が集まり、地域ごとに白地図を広げ、避難所から3分間に後期高齢者が移動できる距離を、地図の上に逃げロール(皮紐)を当てながら色塗りをし、高齢者などが逃げ遅れるリスクなどを「見える化」しながら活発な議論が交わされました。
「さいたまジャパンダ協力隊」事務局を運営する、埼玉中央支店 主任の日髙有佳子は、地域住民が集まって「逃げ地図」を作成する意義を次のように語ります。

「『逃げ地図』づくりでは成果物そのものより、つくる過程のコミュニケーションに大きな意味があります。例えば、お子さんと大人でも視点はそれぞれ異なり、自分では気づけなかった視点が得られ、その異なる視点を掛け合わせていく楽しさもあります。つまり、『逃げ地図』づくりを通して世代を超えたリスクコミュニケーションができるのです。」
「レイクタウン防災フェス2023」や「SOMPO逃げ地図づくりワークショップ」などをはじめ、「さいたまジャパンダ協力隊」では、2023年度に埼玉県内の約30のイベントで協力する計画を立てています。それらのイベントごと6つの部店がスクラムを組み、ボランティアで職員を派遣する協力体制が構築されています。
震災を機に生まれた「防災ジャパンダプロジェクト」

この「さいたまジャパンダ協力隊」の活動は、損保ジャパンが展開する防災教育プロジェクト「防災ジャパンダプロジェクト」の一貫として取り組んでいるものです。
2011年3月11日に起こった東日本大震災をきっかけに、災害から身を守るための知識や安全な行動を学んでもらうことを目的として「防災ジャパンダプロジェクト」は立ち上がりました。
「保険は、被害に遭われた方々が一日も早く生活を立て直し、日常を取り戻すために必要なインフラであり、当社の社員は大災害の度に、使命感を持って被災地で保険金のお支払いに奔走しています。しかし、大地震や豪雨など、ますます激甚化・頻発化する自然災害の現状をみると、保険会社が担うのははたして保険を提供することだけでいいのかという、このプロジェクトをスタートさせた当時の問題意識はますます重要になっていると感じます」

経営企画部 特命部長 サステナビリティ推進グループの丸木崇秀は、そう語ります。
日本を災害から守るために、保険会社に何ができるだろうか――その自問の中から生まれた答えの一つが、次世代を担う子どもたちに災害から身を守る行動の知識を提供する「防災教育」に貢献すること。その思いから、2014年に「防災ジャパンダプロジェクト」が始動しました。
「NPO法人プラスアーツ」など非営利団体と協働で、防災人形劇や体験型防災ワークショップなど防災教育のコンテンツを開発。これまで全国45道府県で、約500回の防災イベントを開催してきました。
<「防災ジャパンダプロジェクト」で開発した防災教育コンテンツの一例>
防災人形劇「さんびきのこぶた危機一髪!」
オオカミが引き起こすさまざまな災害(台風、水害、火事、雷など)に対して、こぶたの3兄弟が協力して災害を乗り切っていく物語です。
防災カードゲーム「なまずの学校」
災害で発生するさまざまなトラブルに対して、解決する方法を考えるワークショップです。アイテムカードを使い、遊びながら臨機応変に創意工夫する力を養うことを目的にしています。
防災グッズ暗記クイズ「7・30(セブンサーティー)」
在宅避難に欠かせない7つのグッズを30秒間で暗記し、いくつ覚えたかを確かめるクイズです。一つ一つのグッズの備蓄しておく数量や使い方についても学びます。
今回、八潮市で開催した「SOMPO逃げ地図づくりワークショップ」は、その「防災ジャパンダプロジェクト」の新たな防災教育コンテンツとしてメニューに追加したものです。これまでのワークショップでは主に親子を対象としていましたが、この「逃げ地図」では自治会など地域を担う団体の方々にも防災教育の対象を拡大しています。
「ビルドバックベター」で災害に強い社会づくりに貢献する

「防災ジャパンダプロジェクト」と並ぶもう一つの柱として、損保ジャパンが推進しているのが「水災害プロジェクト」です。
海や河川に囲まれ、もともと台風などによる水災害の多い日本。近年では世界的な気候変動を背景に各地で線状降水帯による大雨が頻発し、水災害はますます激甚化しています。それは同時に、保険会社である損保ジャパンにとっても脅威となっています。
自然災害をなくすこと自体は難しい。でも、被害を最小限にしていく支援はできるのではないか――その「水災害で悲しむ人をゼロにする」との思いから、「水災害プロジェクト」は立ち上がりました。

この「水災害プロジェクト」は、損保ジャパンの社内副業制度「SOMPOクエスト」を活用し、全国の部店から集まった有志メンバー約15名でさまざまな取組みを進めています。そこから生まれた取組みの一つが、水災害発生時の要支援者の早期避難を支援する「避難行動要支援者向けオンデマンド型避難サービス」の仕組みです。
この「水災害プロジェクト」を推進するうえでの心構えとして、丸木は「ビルドバックベター(Build Back Better)」というキーワードを挙げます。

「保険の役割は家屋や自動車などの財産が喪失したり傷ついた際に、保険金の支払いという形で補償を行うものです。しかし、それだけではマイナスをゼロに戻しただけで、また同じ災害が来たら再び被害を受けてしまいます。ゼロにするだけでなく、災害に対する備えや地域におけるつながりといった目に見えない要素も含めて災害が起こる前よりもよい状態にすることで、災害に強い地域社会を構築するという姿勢を重視しています」
「水災害プロジェクト」だけでなく「防災ジャパンダプロジェクト」も、ビルドバックベターを実践する取組みという点で共通しています。そして、それぞれのプロジェクトに携わる職員は、損保ジャパンが社会に新たな価値を提供する活動として、取り組んでいます。「さいたまジャパンダ協力隊」の活動に取り組む須賀沼も、その意義を感じている一人です。
「私自身も、大学生の頃に西日本豪雨が起こり、広島の自宅が完全に孤立した経験をしました。それが、損保ジャパンに入社した動機の一つになっています。さまざまな防災イベントやワークショップに参加し、地域の方々と直接交流することは、地域社会における保険会社の存在意義と、私自身が保険会社で働く意義を思い出させてくれる機会になっています」
地域の「結び目」として持続可能な地域づくりに貢献する

2023年は、関東大震災からちょうど100年目の節目に当たります。この100年もの間、日本は東日本大震災をはじめ、幾多の災害に見舞われてきました。
これまでの日本の災害対策は、国や自治体などの公共セクターが担う「公助」の領域とされていました。しかし、近年では気候変動に伴い、地震災害や水災害が、堤防や橋梁などの公共インフラが想定するレベルを超える規模で頻発しています。
その中で、公共セクターだけに任せるのではなく、企業、非営利団体、地縁組織など地域のステークホルダーが共に支え合いながら災害に強い地域社会を築いていく「共助」の仕組みづくりが求められています。
そのような「共助」の地域社会づくりに対して、損保ジャパンにできることは何か。丸木は「地域における協働の『結び目』になることです」と言います。

「損保ジャパンは全国規模で保険営業や保険金支払いの拠点を持ち、保険という商品を通じて地域のほとんどのステークホルダーと接点を持っているのが強みです。そして、それぞれの拠点の職員は、保険業務を通じて災害に対する熱い思いと、リスクの専門家としての知見・ノウハウを持っています。その強みを持つ私たちだからこそ、職員が、地域の多様なステークホルダーをつなげる『結び目』となることで、『共助』の地域づくりに貢献できると考えています」
埼玉県内の各自治体と連携しながら防災イベントやワークショップに取り組む日髙も、その「結び目」の役割の重要性を自覚し、行動する一人です。
「各自治体の方々とお話しするときは、国や自治体が公表するさまざまな資料や、国会・議会での議論などの情報収集を行ったうえで、その自治体がどのような課題を抱えているのかを把握することを意識しています。その課題を頭に入れながら、私たちのネットワークを生かして、企業や団体を自治体に紹介する仲介役を担っています」

自治体のために、地域のために何ができるかを考え、行動する――日髙のこの姿勢にも、損保ジャパンが創業以来受け継いできた「人のために」の精神が表れています。その「人のため」の精神が、地域の多様なステークホルダーをつなぐ「結び目」の原動力となっています。
そして2023年は、私たち損保ジャパンにとっても、日本初の火災保険会社「東京火災」の創業から135年の節目の年にあたります。その135年もの歴史の中で、損保ジャパンでは時代の要請に応じてさまざまな保険サービスを提供し続けてきました。しかし、気候変動への対応に加え、生態系の保護、格差の是正など、持続可能な社会を構築するうえでの新たな課題が世界規模で生じています。
「それらの新しい課題に対して、保険を担う私たちとしても過去の成功に縛られるのでなく、さらに思考をジャンプさせて新たなリスクに対峙していく必要を感じています。私たちにとってサステナビリティとは本業の傍ら取り組むものでは決してなく、本業を通じて我々が提供する価値を形づくる大事なコアとして、真剣勝負で挑み続けていかなければならないものなのです」
丸木の言葉には力がこもります。関東大震災から100年後の、次の100年へ――損保ジャパンの持続可能な地域社会づくりに向けた「真剣勝負」の歩みは、これからも続きます。