高齢者の認知症予防には運動がおすすめ
運動というと、ラジオ体操のように全身を大きく動かすイメージがあるかもしれません。でも実は、口や目だけなど、身体の部位ごとの運動もあるんです。こうした負担の少ない運動を日常的に行うことは、高齢者の認知機能低下の予防や運動不足解消、そして健康寿命を延ばすことにもつながります。その理由を3つご紹介しましょう。
自宅で気軽にできるから継続しやすい
身体の部位ごとの運動は、有酸素運動や筋トレなどと異なり、負荷や呼吸の苦しさが少なく、続けやすいのがポイントです。高齢者にとって負担が少ないうえに、自宅で気軽に始めることができます。
口を動かす「口腔運動」を例にしてみましょう。
口腔運動は、噛む力・飲み込む力・話す力をサポートする部位を動かします。口の機能の衰えは、食生活に支障をきたしたり滑舌の悪化を招いたりすることがあります。また、うまく話せなくなることで、社会との関わりを避けてしまうことも。健康と密接に関わる重要な部位ですが、この運動で動かすのは口や口のまわりだけなので、座った状態でも気軽に始めることができます。
手間をかけずすぐに始められる
基本的に特別な道具は必要ありません。家庭にある椅子やタオルを使って始めることができます。最近はYouTubeなどで動画が無料公開されています。家族と相談しながら、お気に入りの動画を見つけて活用するのも楽しく続けるコツの一つです。
ケガの予防にもなる
転倒が原因で入院や寝たきりになる高齢者は少なくありません。ケガや転倒予防のためには、運動不足による体力や筋力の低下を防ぐことが大切。住み慣れた自宅で快適に生活を送るためにも、身体を少し動かす運動から気軽に取り組んでみましょう。
認知症予防のためのおすすめの運動トレーニング5選
認知機能低下を防ぎ、日々の健康を維持するために、いくつかの運動をご紹介します。自宅などで座ったままできる簡単な運動メニューなので、ぜひチャレンジしてみてください。
簡単運動メニュー「呼吸法編」
まずは、呼吸をコントロールして自律神経を整えます。3秒かけて鼻から息を吸い、6秒かけて息を吐くという正しい呼吸法を取り入れることで、ストレスを軽減します。このとき、口をすぼめるようにして「ウ」の形にしましょう。こうした呼吸法は準備運動としてもおすすめです。
簡単運動メニュー「口腔運動編」
口腔運動は口のまわりの筋肉を動かします。呼気訓練や発声訓練で、オーラルフレイル(口腔機能が低下した状態)を予防し、いつまでもおいしく食事ができることを目指します。食べるときにむせやすくなった方や、飲み込む力が落ちてきたと感じる方におすすめの運動です。また、発声したり顎を指圧したりと動きのバリエーションが多く、楽しみながらできる運動です。
口腔機能が低下して、サルコペニア(加齢による骨格筋量や骨格筋力の低下)やフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)になる方は、要介護状態などのリスク発生率がそれぞれ2倍以上高いと言われています。口腔機能を維持することで、身体の様々な機能・能力の低下の予防にもつながります。
簡単運動メニュー「転倒予防編」
身体が硬いとバランスが取りにくくなり、転倒しやすくなります。動かす機会の少ない部分をストレッチすることで身体を柔らかくし、日常生活での動きをスムーズにします。呼吸法や口腔運動に慣れてきたらチャレンジしてみるのがおすすめです。
簡単運動メニュー「リズムステップ編」
運動に慣れてきた方や体力のある方は、ぜひこちらのリズムステップ編にもチャレンジしてみてください。これは、楽しくリズムをとりながら行う運動です。手をグーやパーにしたり数を数えたりする簡単な運動で、誰でもチャレンジしやすいのが特徴です。
簡単運動メニュー「ペットボトル運動編」
ここまでやってきた運動よりも、さらにステップアップできると感じたときにチャレンジしてほしい運動がこちら。水を入れたペットボトルを活用し、筋力アップを目指します。まずは小さめのペットボトルを用意し、少なめの水で始めてみましょう。
慣れてきたら徐々に水の量を増やしていき、ゆっくりと負荷をかけていきます。ただし、急激に筋肉へ負担がかからないよう注意して行ってください。
運動不足を解消する「+10運動」とは
現在、厚生労働省では「+10(プラス・テン)運動」を推進しています。これは「普段より10分間多く動かすことを心がけよう」という取り組みで、健康寿命を延ばすことを目的としています。また日頃の運動は ロコモティブシンドローム(※)のリスクを軽減します。年齢を重ねても「自分でできることは自分でやる」を目指すことで、認知機能低下の予防にもつながるでしょう。ぜひ日頃から+10運動を意識して、身体を動かすことを意識したいものです。
※ロコモティブシンドロームとは
筋肉・骨・関節などに障害が起こり、歩く・立つといった身体能力(移動機能)が低下した状態のことを指し、「ロコモ」や「運動器症候群」と呼ばれることもあります。ロコモが進行すると、介護が必要になる可能性が高まります。元々、高血圧や生活習慣病を持っている方や運動習慣がない方はとくに注意が必要です。
運動習慣を身につけて認知症予防を
日常での運動は、認知機能低下の予防に加え、運動不足解消やケガの防止、健康寿命を延ばすのに効果的です。とはいえ、大事なことは継続することです。運動を長続きさせるためには「もう少しがんばれるかも?」と思ったあたりでやめておくことも重要ですので、上手にコミュニケーションしながら頻度や難易度を調整し、楽しく続けていきましょう。
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