脳トレは認知機能低下予防に効果なし?
「脳トレは親(高齢者)の認知機能にどんな効果があるの?」
「認知症を防ぐにはどんな脳トレをすればいいの?」
漠然と知っている脳トレについて、よくよく考えてみるとわからないことがあるでしょう。
認知症(認知機能低下)の原因には以下のようなものがあります。
認知症の原因の例
- 脳内の血流悪化
- 脳へエネルギーを運ぶ酸素・糖の不足
血流が滞り、脳に満足なエネルギーが届かないと、認知機能に障がいが出て認知症に繋がる可能性があります。脳トレで脳を刺激することにより、脳内の血流が上がり、エネルギーの運搬をスムーズにするため、認知症や認知機能低下の予防が期待できるのです。
また脳トレには、認知機能低下を予防するだけではなく、他者との交流や集中力の向上などの効果もあります。複数人で行う脳トレは、他者との会話を楽しんだり、交流するよろこびを思い出すことにも繋がるのです。いっぽう、ご自身で脳トレをするときは、本人の得意分野に関連したものを選択すると熱心に取り組めるでしょう。
脳トレをすると高齢者にどのような効果がある?
人間の脳のうち大部分を占める大脳は、大きく4つに分けられます。
- 前頭葉
- 側頭葉
- 頭頂葉
- 後頭葉
前頭葉は、運動や思考、言語などを司る部分です。その前頭葉の大半を占めるのが前頭前野で、「記憶する」「判断する」「考える」などの機能を持っています。
脳トレには前頭前野を活性化させる効果があり、脳の老化を緩やかにし、認知症の進行を和らげてくれると言われています。脳トレをする本人の過去の仕事や得意分野にまつわるものなど、その方らしさを考えた脳トレを選ぶと良いでしょう。
楽しい気持ちになることが意欲を高める
脳トレに対して最初は消極的な方もいるかもしれません。「面倒だな」「じっとしていたいな」という気持ちが強い場合は、脳トレに誘っても応じてもらえない可能性もあります。しかし、焦らず、脳トレをする方に適したトレーニングに少しずつ取り組んでもらうのが良いでしょう。
最初は短い時間(3分〜5分)からで大丈夫です。まずは脳トレに対するマイナスイメージや拒否する気持ちを減らしていくところから始めてみてください。徐々に脳トレを楽しむ気持ちが生まれ、「自分はまだこんなことができるんだ」と自尊心の高まりにつながります。そして、次第に新しいことに挑戦しようという意欲も高まってくるでしょう。
コミュニケーションを育む機会になる
脳トレは1人でできるものもありますが、しりとりやなぞなぞなど、複数人で行う脳トレもあるんです。こうした複数人で行う脳トレは、コミュニケーションを育む絶好の機会にもなります。
中には、身体能力の衰えから部屋にこもりがちになってしまう方もいます。そうなると、他者との関わりが減り、感情の変化も乏しくなります。しかし、他者と協力して脳トレに取り組むことで、発語が増えたり、表情に変化が見られるようになったりして、少しずつ他者との関わりを楽しめるようになるでしょう。
脳トレを効果的に行うためのポイント
様々なメリットがあるいっぽうで、気を配るべきポイントが3つあります。
脳トレにおすすめの時間と頻度
脳トレは一度だけ行うのではなく、暮らしの中に習慣として取り入れることでより効果的になります。しかし中には、「新しいことをするのは面倒」と感じる方もいますので、継続的に脳トレに取り組んでもらうための工夫をこらしましょう。
まずは、短時間(3分~5分でOK)で終えられるものから始めるのがおすすめ。高齢者は疲労を感じやすく、同じことを長時間続けるのが難しい方もいるため、最初は数分で終わるものにしてみましょう。反応を見ながら、徐々に時間を延ばしたり、頻度を高めたりして習慣化していきます。慣れてきたら1日10分〜15分で、週3日以上続けられると良いでしょう。
難易度は易しいものから始める
脳トレの難易度は、脳トレをする方のレベルに合ったものを選びましょう。記憶力が低下すると、昔はすぐにできていたことに時間がかかったり、思い出せなかったりします。まずは簡単なものからスタートし、できることを徐々に増やすように工夫しましょう。
自信を失わないように気をつける
加齢とともに、身体機能だけでなく記憶力も低下します。これまでできていたことに時間がかかったり、ささいなこともなかなか思い出せなかったりして、不安を感じている方も少なくありません。場合によっては、自分の思い描いていた通りにできず、「自分はこんな問題もわからないんだ」「前まではできていたはずなのに」と自信を失い、脳トレへの意欲が削がれてしまう可能性があります。
そうした場合、自尊心を傷つけないよう心がけることが大切です。声かけにも気を配り、本人の自信を損なわないよう配慮するようにしましょう。
認知機能低下を防ぐおすすめ脳トレメニュー
さて、ここからはおすすめの脳トレメニューを紹介します。脳トレには様々なものがあり、以下のように大きく分けられます。
記憶力を使った脳トレ・ゲーム
漢字問題やクイズなど「思い出すゲーム」では、記憶力を使うことができます。
漢字の穴埋め問題
単なる書き取り問題でも良いですが、少し難易度を高めたい場合は漢字の穴埋め問題がおすすめです。例えば、以下のような四字熟語を使った問題などがあります。
例)
同じ漢字を使って四字熟語を作ってください
- □進□退→一進一退
- 右□左□→右往左往
しりとり
1対1でもできますが、大勢でやると一層楽しめます。一般的なルールでも良いですし、より高度な内容にチャレンジしたいなら例のようにお題を決めるのもおすすめです。
例)
「くだものの名前」「3文字以上の単語」
間違い探し
注意力や記憶力を鍛えられる脳トレです。間違いの数は問題の難易度によって異なりますが、そこまで難しいものでなくても大丈夫です。脳トレをする方に合った問題を選びましょう。
塗り絵
難しい思考や動作を必要としないため、比較的受け入れられやすい脳トレの一つです。線からはみ出さないように塗ったり、全体の構図を見ながらバランスを考えて色を選んだりすることは、注意力が求められます。とはいえ、好きなように塗ってもらい、楽しみながら取り組んでもらうのが一番です。
計算力を使った脳トレ・ゲーム
計算力を使う脳トレとしては、オーソドックスな「計算ドリル」があります。複雑な問題ではなく、単純に計算を繰り返すものが取り組みやすいでしょう。小学校低学年レベルの問題からスタートし、難易度を上げられるなら虫食い算もおすすめです。
例)
- □+5=10 → 答え:5
- 20-□=8 → 答え:12
思考力や判断力を使った脳トレ・ゲーム
思考力や判断力を使った脳トレとして、「なぞなぞ」や「あと出しジャンケン」などがあります。
なぞなぞ
1対1でも思考力にアプローチできますが、複数名でのチーム戦にすると答えをめぐって他者との会話の機会が生まれ、より楽しめます。
あと出しジャンケン
出題に応じて適切なジャンケンの手を考えるゲームです。やり方としては、まず出題者が「私にジャンケンで勝ってください」、もしくは「私にジャンケンで負けてください」と伝えます。その後、出題者からジャンケンをはじめ、出した手に対して、お題が「勝つ」であれば、勝つ手を出し、反対にお題が「負け」であれば負ける手を出します。
例)
- ①出題者が「私にジャンケンで勝ってください」と伝える
- ②まず出題者がグーを出す
- ③回答者がパーを出せば○
身体機能を一緒に使う脳トレ・ゲーム
体操をしながら頭を働かせる動きを加えた「脳トレ体操」は、認知機能を刺激するだけではなく、身体機能を使うことができます。車椅子を使っている方でも取り組みやすい、座ったままできる体操もあるので、ぜひやってみてください。歌を組み合わせた体操も楽しくできるのでおすすめです。
例)
- ①右手を開いて前に出す
- ②左手は握りこぶしを作って胸元に構える
- ③「はい!」の合図で右手は胸元で握りこぶしを作る
- ④左手は開いて前に出す
- ⑤繰り返す
※次第にスピードアップするとゲーム要素が強まります
本人も家族も楽しんで脳トレにチャレンジ
脳トレは認知機能低下の予防にとても効果的です。記憶力や計算力などにフォーカスしたものも多いですが、まずは本人が楽しめるように工夫をしましょう。また、スタッフや家族も一緒に楽しく取り組むことで、楽しむ気持ちが脳トレを継続する気持ちにつながり、結果的に認知機能の低下予防・維持・回復につながります。
本人の状態や過去の生活歴、趣味や特技をしっかりと把握すれば、より楽しんでもらえる脳トレを見付けやすくなります。無理のないペースで少しずつ脳トレを取り入れていきましょう。
また、こうした脳トレはデイサービスなどの事業所や、介護施設でも行われています。家族での対応が難しい場合や、本人が大勢の人と交流することを望んでいる場合は、デイサービスの他、介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)やサービス付き高齢者向け住宅を利用してみるのも良いでしょう。
SOMPOケアでは、介護付有料老人ホーム(介護付きホーム)やサービス付き高齢者向け住宅、デイサービスなどを運営しています。 こちらもチェックしみてみてください。
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