在宅介護サービスを受けるには
在宅介護サービスとは、自宅で生活している高齢者が、可能な限り自立した生活を送るために利用する介護保険サービスのこと。この介護保険サービスは公的介護保険制度で、要支援もしくは要介護の認定を受けている方が利用できます。
在宅介護サービスにはいくつかの種類があり、自宅にいながら介護を受けられる「訪問サービス」や、自宅から介護施設に通う「通所サービス」があります。また、どちらのサービスも受けられる「複合型サービス」や、福祉用具のレンタルや購入も在宅介護サービスのその一つです。
在宅介護サービスを利用するまでの流れ
在宅介護サービスを利用するには、主に以下のような流れを知っておきましょう。
要介護認定の申請
まず初めに必要なのが、要介護認定の申請です。市区町村の役所窓口や地域包括支援センターに申請を行います。申請後は、市区町村の職員による聞き取り調査が行われ、その後、主治医による心身状態に関する意見書が作成されます。その結果に基づき、コンピュータと介護認定審査会による判定が行われ、要介護度が決まります。そして、要介護認定を受けると、介護サービスに介護保険が適用されるのです。
介護保険の申請については、こちらもチェックしてみてください。
ケアマネジャーとケアプランを作成
要介護認定を受けたら、各都道府県の知事の指定を受けた居宅介護支援事業者（ケアプラン作成事業者／通称ケアマネジャーまたはケアマネ）に、介護サービスの計画書「ケアプラン」を作成してもらいます。これは、介護を受ける方一人ひとりに適切なサービスを提供するうえで欠かせない大切な書類で、利用者となる高齢者の介護度や支援の必要性に応じて作成されます。
作成の流れとしては、ケアマネジャーと利用者、そして家族が面談をして、今の状態や今後どのような生活を望んでいるかなどをヒアリングしたうえで作成します。ケアマネジャーが作成したあと、利用者と家族が確認して問題なければ、ケアプランは完成です。
ケアマネジャーについてはこちらもチェックしてみてください。
在宅介護サービスの事業所と契約を結ぶ
ケアプランに基づいた各サービスは、在宅介護サービスを提供している事業者と契約を結ぶことで利用できるようになります。契約時には、サービス内容や利用回数、初回の利用日程、事業者を変更する場合の解約方法などについてしっかりと確認しておくことが大切です。
こんなときにおすすめ。在宅介護の大変なこと
便利な在宅介護サービスですが、メリット・デメリットの両方があります。利用する前には良し悪しをよく確認しておきましょう。
知っておきたい在宅介護サービスのメリット
住み慣れた自宅での生活できる
利用者が住み慣れた環境で介護サービスを受けられることは、体力的にも精神的にも大きなメリット。家族とも毎日顔を合わせられるため、お互いの安心感にもつながります。
必要なサービスを選択できる
幅広い種類から、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選択できるのもポイント。ケアマネジャーと相談しながら、現状に必要なサービスだけを利用したり、状態の変化に合わせてサービスを追加したり、柔軟な姿勢で介護サービスが受けられるのはうれしいことです。
施設入居よりもコストを抑えられる
介護施設への入居には、敷金・礼金、家賃、管理費、食費などが発生し、選ぶ施設によってはさらに高額な費用がかかることも。しかし、在宅介護サービスなら、基本的には介護保険における自己負担額分の介護サービス費しかかからないので、施設への入居に比べて費用を抑えることもできます。
家族の介護負担を軽減できる
家族といえども、介護にかかりきりでは心身共に疲弊してしまいます。仕事や家庭があるなかで介護を続けていくには、休息時間の確保も必要です。在宅介護サービスを活用して介護に充てる時間を減らすことができれば、家族の気持ちにもゆとりが生まれ、より良い介護生活を送ることができるでしょう。
知っておきたい在宅介護サービスのデメリット
施設のように24時間サービスを受けられない
利用する在宅介護サービスの種類にもよりますが、施設と違って24時間いつでもサービスを受けられるわけではありません。そのため、早朝や夜間など急に介護が必要になったときには、家族の対応が必要な場合もあります。
緊急時の対応が遅れてしまうリスクも
施設に入居していれば、本人の容体に急変があった際などの緊急時でもスタッフがすぐに対応してくれますが、在宅介護は迅速な対応ができない場合があります。万が一不足の事態が起きたときには、家族や訪問介護スタッフなど、少人数で対応しなければならないこともあるので注意が必要です。
在宅介護サービスの種類
在宅介護サービスには様々な種類があり、利用者の状態によって選ぶべきサービスが変わってきます。下の一覧表に示すとおり、訪問計、通所系、宿泊系の他、それらを組み合わせた在宅介護サービスなどもあります。それぞれのサービスを詳しく見ていきましょう。
居宅介護支援について
ケアマネジャーがケアプランの作成や見直しを行うサービスを居宅介護支援といいます。介護保険を利用するにはケアプランが必要となるため、居宅介護支援は在宅介護を行う要ともいえますね。
居宅介護支援では、高齢者や家族の希望を考慮したうえで、ケアマネジャーが最適なケアプランを作成します。ケアプランが作成されたあとも、高齢者の心身の状況、身の回りの環境などを考慮しながら継続的に見直しを行い、在宅生活が継続できるように支援します。また、介護保険を利用するための手続きの代行や介護サービス全般における相談も、ケアマネジャーの役割の一つです。
ケアマネジャーについてはこちらもチェックしてみてください。
在宅介護サービスの種類～訪問系～
訪問介護
介護福祉士、介護職員初任者研修の修了者など、資格を持ったホームヘルパー（ケアスタッフ）が自宅を訪問し、身体に直接触れて介助を行う「身体介護」や家事などの「生活支援」を行う介護保険サービスです。
身体介護には、食事や排泄、入浴、着替えなどの介助や見守りなどが含まれており、通院や生活上必要な外出の付き添いなども対象です。
生活支援の内容は、掃除や洗濯、食事の調理などです。ゴミ出しや日用品の買い物なども含まれます。また、高齢者の通院時に介護タクシーなど車の乗り降りを介助する「通院等乗降介助」も訪問介護の仕事の一つです。
訪問介護は、あくまで“本人が日常生活を送れるようにするための支援”なので、本人以外の家族に対する食事の用意やペットの世話、庭木の水やりなどはサービスに含まれません。
訪問看護
自宅に看護スタッフが訪問し、主治医の指示に沿って療養上のケアや診療の補助を行う介護保険サービスです。
血圧や体温の測定だけでなく、在宅酸素やカテーテルなどの管理や床ずれの処置、痰の吸引なども行います。
訪問看護を提供するのは、病院や診療所、訪問看護ステーションなどです。病院や診療所の訪問看護は看護スタッフに限られますが、訪問看護ステーションには、看護スタッフだけでなく理学療法士や作業療法士、言語聴覚士も在籍しているため、リハビリテーションの提供もできます。
訪問入浴介護
本人の自宅に訪問し、専用の浴槽で入浴介助をする介護保険サービスです。
心身の状況や浴室の環境などにより、自宅で一人での入浴や、家族の介助を受けながらの入浴が難しい方が利用します。看護スタッフ１名とケアスタッフ２名の計３名によるサービスを基本とし、入浴前後には看護スタッフが体温・血圧・脈拍などの体調チェックもしてくれるので、安心して入浴できます。
訪問リハビリテーション
理学療法士と作業療法士、言語聴覚士のいずれかが高齢者の自宅を訪問し、リハビリを行う介護保険サービスです。
サービスを提供するのは、病院や診療所、介護老人保健施設です。自宅内や外での歩行練習やトレーニング指導などをするため、高齢者の生活に合わせた実践的なリハビリができるのがポイント。また、福祉用具や自助具の提案、住宅改修の助言なども訪問リハビリテーションのサービスに含まれます。
居宅療養管理指導
通院が難しい利用者の自宅に医師や薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などが訪問し、療養上の指導や栄養管理、アドバイスなどをする介護保険サービスです。
薬剤師が薬の一包化や薬カレンダーの管理をしたり、歯科衛生士が口腔ケアを指導したりします。
夜間対応型訪問介護
18時から翌朝８時までの時間帯に受けられる介護サービスです。
ケアプランに基づいて、夜間に30分程度の訪問介護を定期的に受けることができます。また、貸し出されたケアコール端末（緊急コールボタンなど）を使えば、ベッドから転落してしまったり、体調が悪くなったりしたときなどに駆けつけてもらうこともできます。状況によっては、救急車を手配することも可能です。
高齢者の異変を察知する方法については、こちらもチェックしましょう。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
１日に複数回の介助を要する、医療ニーズが高い方向けの在宅介護サービスです。
高齢者の心身状態に合わせて、必要なサービスを24時間・365日受けられます。介護のケアスタッフだけでなく、看護などの医療スタッフとも連携しているため、介護サービスと看護サービスをトータルで受けられます。
訪問系の在宅介護サービスについては、こちらもチェックしてみてください。
在宅介護サービスの種類～通所系～
デイサービス（通所介護）
日帰りで施設などに通い、趣味活動や機能訓練、入浴などの支援が受けられる介護保険サービスです。
レクリエーション活動に力を入れていたり、豪華な食事を提供していたりと、事業所によって様々な特徴があります。高齢者の社会参加だけでなく、家族の介護負担の軽減（レスパイトケア）にもつながります。
認知症対応型通所介護（認知症デイサービス）
認知症の方を対象とした介護保険サービスです。
利用者の心身機能の向上やご家族の介護負担軽減などを目的とし、入浴や排泄など日常生活上の支援や機能訓練を日帰りで行います。認知症に特化した専門的なケアを提供するため、一般的なデイサービスに比べると定員が少ないことが特徴です。
通所リハビリテーション（デイケア）
利用者が日帰りで病院や診療所、老人保健施設などに通い、医師の指導のもと、専門スタッフによるリハビリテーションを受けるための介護保険サービスです。
デイサービスは主に日常生活の支援を行いますが、デイケアは生活支援だけでなくリハビリテーションなども担うのが特徴。デイケアのスタッフには、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師などが在籍しており、それぞれの専門性を活かしたサービスを受けることができます。
療養通所介護（療養型デイサービス）
難病や認知症、末期がん、脳血管疾患後遺症など、重度の要介護者を対象としたデイサービスです。
高齢者が施設に通うことで、食事や入浴などの日常生活支援だけでなく、機能訓練や口腔機能向上のためのサポートが受けられます。送迎サービスもあり、介護度の高い方でも自宅の外でご家族以外とのコミュニケーションを取れるなど、大きなメリットがあります。
通所系の在宅介護サービスについては、こちらもチェックしてみてください。
在宅介護サービスの種類～宿泊系～
短期入所生活介護（ショートステイ）
施設に短期間入所し、入浴や排泄、食事など、利用者に必要な介護を24時間体制で受けることができる介護保険サービスです。
１泊２日から利用でき、30日間まで連続利用することができます。日常生活上の支援だけでなく、機能訓練も受けられるため、生活機能の維持が期待できるのも魅力です。また、本人の社会的孤立の予防やご家族の介護負担の軽減といったメリットもあります。
短期入所療養介護（医療型ショートステイ）
様々な事情から自宅での介護が難しい方が、一時的に介護や医療のサポートを受けられる介護保険サービスです。
利用対象者は、要介護１～５の方。短期入所生活介護は生活面での介護が主なサービスですが、短期入所療養介護では通常の介護サービスに加え、医師や看護師による医療サポートが受けられます。介護を担うご家族に急な用事ができた場合や休息を取る場合などに利用できるため、家族の負担軽減にもつながるサービスです。
各要素を組み合わせた在宅介護サービスも
在宅介護サービスには、ここまでご紹介したサービスの要素を複数組み合わせたものもあります。
小規模多機能型居宅介護
通所サービスに自宅への訪問や短期間の宿泊を自由に組み合わせ、24時間365日切れ間なく介護を受けられる介護保険サービスです。
小規模という名前のとおり定員が少ないですが、認知症のある方や少人数の落ち着いた環境でサービスを受けたい方でも安心して過ごせるのがポイント。高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう、生活支援や機能訓練のサポートを行います。
看護小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護に訪問看護を加えた介護保険サービスです。
介護と看護のサービスを一体的に受けられるため、医療ニーズが高い方や、退院したばかりで身体の状態が不安定な方などのサポートが可能です。また、高齢者の状況に応じて「通所」「訪問介護」「訪問看護」「泊まり」のサービスを柔軟に選択できるため、サービスごとに介護事業者を探す手間が省けるのも大きなメリットといえます。
在宅介護で福祉用具が必要になったら
自宅で生活する高齢者のなかには、車いすや介護ベッドなどの福祉用具を必要としている方がいます。こうした福祉用具に関する相談やレンタル・購入も、介護保険で受けられる在宅介護サービスです。
では、福祉用具の対象となる用具とはなにか、レンタルする場合や購入する場合の負担額はどうなっているのでしょうか。
福祉用具をレンタルする場合
レンタル費用の１～３割を自己負担することになります。レンタルできる品目は次の11種類と決められており、要介護度によって介護保険給付の対象とならないものもあります（※）。
- 特殊寝台（介護ベッド）および付属品
- 床ずれ防止用具
- 体位変換機
- 手すり
- スロープ
- 車いすおよび付属品
- 歩行器
- 歩行補助杖
- 移動用リフト
- 徘徊感知機器
- 自動排泄処理装置
実際にレンタルする場合には、担当ケアマネジャーや福祉用具専門相談員とよく相談するようにしましょう。
※要支援１・２、要介護１の方に介護保険給付とならない用具
…特殊寝台および付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、車いすおよび付属品、移動用リフト、徘徊感知器
※要支援１・２、要介護１・２・３の方に介護保険給付とならない用具
…排便機能を有する自動排泄処理装置
福祉用具を購入する場合
福祉用具のうち、排泄や入浴に使用するものは購入することになります。購入するときには、一度全額を支払ったうえで申請を行い、あとから費用の７～９割を返還してもらう方式が取られています。購入の対象となる福祉用具は次のとおりで、購入額の上限は一年度につき10万円までです。
- 腰掛便座
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
- 移動用リフトの吊り具部分
福祉用具については、こちらもチェックしてみてください。
在宅介護で大変だと感じたことランキング
ところで、実際の在宅介護において介護経験者はどんなことに大変さを感じているのでしょうか。40〜50代の介護経験者1,100名（男女）を対象としたあるアンケート調査（※）によると、ほとんどの方が何かしらの理由で大変さを感じていることがわかります。
コミュニケーション問題に続いて、排泄や食事、入浴に関する悩みは誰しもが抱えることのようです。これから介護を経験する方にとって、一つのヒントになるかもしれませんね。
ＳＯＭＰＯケアの在宅介護サービスで家族の負担を減らそう
在宅介護サービスには、たくさんのメリットがあります。多くの高齢者は住み慣れた自宅で暮らし続けながら介護を受けたいと考えており、上手に活用することでその思いを叶えつつ、自分にとっても家族にとってもいい介護生活を送ることができるでしょう。
しかし忘れてはならないのが、在宅介護サービスを利用しても早朝や夜間は基本的に家族が介護を担うということです。仕事や家事と並行して無理に介護を続けると、いずれ家族のほうが疲弊してしまう可能性があるので、決して無理をせず早めに対処するのがおすすめです。ＳＯＭＰＯケアでは在宅介護サービスを提供しています。
もし在宅での介護が難しいと感じたら、高齢者向け住まい（老人ホームなど）への入居を検討することも選択肢の一つとして考えましょう。高齢者施設（老人ホームなど）についてはこちらもチェックしてみてください。
在宅介護サービスについて、継続するほうがいいのか、他の在宅介護サービスを利用したりしたほうがいいのかなど、悩んだときには遠慮せずプロに相談しましょう。
ウェルビオでは、介護のお悩みに対するアドバイスを行っているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
