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成年後見制度

成年後見制度の手続きや費用、法定後見制度や任意後見制度との違いとは

カイゴさん

成年後見制度とは、判断能力に支障がある方にも、将来判断能力に支障が出たときに備えたい方にも頼りになる制度。親御さんに代わって様々な手続きを行うためにも、内容や手続きの方法などを理解しておくと安心です。

成年後見制度とは?

認知症や知的・精神的障害などで判断能力が不十分な方の後見人などを決めて、本人の代わりに様々な手続きを行うための制度です。成年後見制度は、申請される方の判断能力に応じて「法定後見制度」と「任意後見制度」の二つに分かれます。

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成年後見制度の種類を示した図。図に続いて詳細。

法定後見制度

すでに判断能力が不十分な方の後見人などを家庭裁判所が選任する制度。申し立てができるのは、本人や配偶者、四親等内の親族や市区町村長などです。法定後見制度には、後見人保佐人補助人の3種類があり、どれが適用されるかは本人の判断能力に応じて家庭裁判所が判断します。

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法定後見制度の後見人・保佐人・補助人3種類それぞれ概要解説図。図に続いて詳細。
成年後見人などが取り消すことができる行為には、日用品の購入などの日常生活に関わる行為は含まれません。また、本人の居住用不動産の処分について、成年後見人などが代理する場合には、家庭裁判所の許可が必要となります。

任意後見制度

本人の判断能力が十分なうちにあらかじめ任意後見人を選んでおく制度です。将来的にご本人の判断能力が低下しても、任意後見人を選んでおけばご本人の意思に沿った適切な保護や支援が可能となります。

成年後見制度の利用者はどのくらい?

成年後見制度の利用者合計数は、2023年時点で約25万人です。その割合を見てみると、あらかじめ後見人を選定しておく「任意後見制度」よりも、ご本人の判断能力が不十分になってから申請する「法定後見制度」の利用が多いようです。

成年後見人は何ができるのか

法定後見制度、任意後見制度それぞれの違いを見てみましょう。

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法廷後見制度では、成年後見人を法廷後見人と呼び、申し立てができるのはご本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長となっており、後見人に支払う報酬は裁判所が決めた額となります。任意後見制度では、成年後見人を任意後見人と呼び、申し立てが出来るのはご本人、ご本人の判断能力があるうちに結ぶ任意後見契約を交わした配偶者、四親等内の親族、任意後見人となる人(任意後見受任者)で、後見人に支払う報酬は契約で決めた金額となります。
※後見人に支払う報酬について
東京家庭裁判所が公表した「成年後見人などの報酬額のめやす」では月2万円前後が平均的な目安です。

後見人に任せることができる内容は以下のとおりです。

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本人名義の預貯金の管理、不動産の管理、保険金の受取、相続の手続き、病院や施設の手続きは出来ますが、身の回りの世話・介護、株の運用は出来ません。

このように、成年後見人は本人の財産に関する法律行為などを代理できます。法律に関係のない身の回りの世話などは含まれていない点が特徴です。

動機などから見る成年後見制度の利用状況

成年後見制度の申し立ての動機や件数、親の年齢や性別について、最高裁判所が公開しているデータ(2020年)を元にまとめて見てみましょう。

申し立ての動機は「預貯金の管理・解約」が多数

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申し立ての内訳は、預貯金等の管理・解約が37,531件(31.1%)、身上保護29,330件(24.3%)、介護保険契約17,293件(14.3%)、不動産の処分14,235件(11.8%)、相続手続10,300件(8.5%)、保険金受取6,690件(5.5%)、訴訟手続きなど2,235件(1.9%)、その他2,945件(2.4%)となっています。
参照:最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況―令和5年1月~12月―

申し立ての動機は「預貯金などの管理・解約」「身上保護」などの目的が多いようです。

件数の内訳を見ると、本人の判断能力が不十分になってから申請する「法定後見制度」の利用が9割以上です。このうち、開始原因は、ご本人の認知症がきっかけになるケースが62%を超えることがわかっています。

申立人の割合は「市区町村長」が多数

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申立人割合の内訳は本人9,033(22.2%)、親族20,653(50.7%)、親族以外11,031(27.1%)となっています。また親族の内訳は配偶者1,699(4.2%)、親2,018(5.0%)、子8,132(20.0%)、兄弟姉妹4,491(11.0%)、その他親族4,313(10.6%)となっており、親族以外の内訳は法廷後見人等731(1.8%)、任意後見人等731(1.7%)、検察官0(0.0%)、市区町村長9,607(23.6%)となっています。
参照:最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況―令和5年1月~12月 ―

実際に申し立てを行ったのは、「市区町村長」が最も多く23.6%でした。本人や家族が申し立てできなかったり、申立経費や後見人の報酬を負担できなかったりなど、様々な理由で利用できない方に代わって、成年後見制度の利用を公的に支援する制度があります。このデータでは、実際にそうしたケースが最も多いということを示しています。
※法定後見制度・任意後見制度あわせた集計データです。

本人の男女別・年齢別で見ると

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本人の男女別・年齢別の割合は、男性の場合20歳未満0.9%、20歳代2.1%、30歳代2.6%、40歳代5.5%、50歳代11.0%、60歳以上65歳未満6.2%、65歳以上70歳未満8.5%、70歳以上27.6%、80歳以上35.5%となっています。女性の場合20歳未満0.5%、20歳代1.1%、30歳代1.2%、40歳代2.7%、50歳代5.5%、60歳以上65歳未満2.8%、65歳以上70歳未満3.7%、70歳以上18.7%、80歳以上63.7%となっています。
参照:最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況―令和5年1月~12月 ―

ご本人の年齢別に見てみると、女性は平均寿命が長いため、80代以上の割合が男性に比べると多い傾向でした。また、男女共に70歳以上であるケースが多いようです。

成年後見制度を利用するときの流れ

法定後見制度の手続き

まずは、本人の住所地にある家庭裁判所に審判などを申し立てます。申し立てから後見人が決定するまでの期間は事案によって異なりますが、1カ月から数カ月を要します。鑑定手続きや後見人の候補となっている方の適正調査や、本人の陳述聴取などに時間を要します。

任意後見人制度の手続き

公証役場で任意後見契約を結ぶのが原則です。任意後見人制度では、本人の意思を確認し、契約の内容が法律に沿ったものになっているか公証人が確認し、契約に進みます。

成年後見制度の申し立てに必要な費用

成年後見人への報酬は別途発生します。
家庭裁判所が設定する目安に基づいて決定しますが、被後見人が持つ財産の総額や地域によっても異なります。

一般的な目安としては、被後見人の財産が1,000万円以下の場合は月額報酬が約2万円、財産が1,000万円以上~5,000万円以下の場合は月額報酬が約3〜4万円、財産が5,000万円を超える場合は月額報酬が5〜6万円とされています。気になった際は、住んでいる地域の家庭裁判所が示す報酬相場を調べてみるのがおすすめです。

※申し立てには、戸籍謄本、登記事項証明書、診断書などの発効に別途費用が必要です。
※補助及び任意後見については、鑑定を要しないものとされ、医師の診断書で足りるとされています。

参照:成年後見制度利用促進のご案内│厚生労働省
参照:成年後見制度・成年後見登記制度│法務省

成年後見制度の利用促進ポータルサイト

成年後見制度は、認知症や障害によって判断能力が十分でない方にとって有益な制度です。その利用促進のためにオープンしたポータルサイトでは、定期的に「成年後見制度利用促進ニュースレター」が発行されており、成年後見制度を利用された方の動画インタビューなどを公開中。ぜひチェックしてみてください。

「成年後見はやわかり」を見る

成年後見登記制度とは

東京法務局の後見登録課が管理するシステムに、成年後見人の権限や、任意後見契約の中身を登記する制度です。登記事項などが記載されている証明書の発行ができます。

成年後見人の登記が必要なケース

登記は、後見開始の審判が行われたときや、任意後見契約の公正証書が作成されたときなどに必要です。登記は、家庭裁判所または公証人の嘱託で行われますが、登記後に内容の変更が発生した場合や、後見が終了した場合は、ご本人や親族などが行います。

成年後見登記の申請方法

登記を行っている東京法務局の後見登録課では、全国の登記事務を取り扱っています(各地にある法務局・地方法務局戸籍課)。登記事項の証明書を請求できるのは、本人や配偶者、四親等内の親族成年後見人の方などです。

日常生活自立支援事業とは

成年後見制度に似たものに、日常生活自立支援事業があります。これは、認知症の高齢者や知的・精神障害をもつ方など、判断能力が十分でない方でも、自立した生活ができるよう援助する事業です。

日常生活自立支援事業で支援できること

  • 福祉サービスや苦情解決制度の利用の援助
  • 住居の賃借や住民票の届け出などの手続き
  • 日常的な金銭の管理

日常生活自立支援事業の窓口は、市区町村の社会福祉協議会などです。初期相談などの申請手続きは無料となっていますが、サービスの利用時には、参考金額として訪問1回につき平均1,200円の利用料が発生します。

成年後見制度との違い

成年後見制度は法務省が管轄する民法に定められた制度であるのに対し、日常生活自立支援事業は、厚生労働省が管轄する社会福祉法で定められた事業です。

これらの制度には、以下のような違いがあります。もし支援が必要と判断された場合は、どちらの制度も併用できる場合があります。

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成年後見制度は法務省が管轄する民法で定められた制度で、財産管理や病院の入退院、福祉施設への入隊所などや身上監護(生活全般の支援)に関する契約等の法律行為の援助を目的とし、申請は申立人が費用を負担します。厚生労働省が管轄する社会福祉法で定められた事業である日常生活自立支援事業は、本人との契約に基づく福祉サービスの利用援助や日常的な金銭等の管理などの日常生活支援を目的としており申請は無料となっています。

親や兄弟だけでなく、自分や家族の将来を考えても、あらかじめ成年後見制度を理解しておくことがおすすめです。いつ何かがあっても慌てず対応できるように、事前知識を備えておきましょう。

ウェルビオでは、介護のお悩みに対するアドバイスを行っているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

監修:理学療法士、未病栄養コンサルタント

黒山大輔

医療・介護の専門家。整形外科クリニックに14年間勤続し、医療・介護分野でのリハビリテーション業務や従業員教育、法廷研修・BCPなどの管理に従事する。地域事業として高齢者を対象とした健康講座の企画・運営、ヘルスリテラシー向上に資する書籍の出版やセミナー開催など、介護予防や健康寿命延伸に向けて多方面で活躍している。

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