介護認定調査とは
介護認定調査は、高齢者や障害のある方が介護保険サービスを利用するために必要な手続きの一つです。この調査は、申請者の心身の状態や日常生活の様子を専門の調査員が確認し、介護の必要度を判断するために行われます。
調査では、申請者の自宅や入院先を訪問し、本人や家族から聞き取りを行いながら、決められた74項目のチェックリストに沿って評価を行います。この調査結果は、後に専門家による審査会で検討され、要介護度の判定に使用されます。
介護認定調査は、公平かつ客観的な評価を目指して設計されており、全国共通の基準で実施されています。この調査を通じて、個々の高齢者に適した介護サービスを提供するための重要な情報が収集されるのです。
要介護認定
要介護認定は、介護保険制度において、どの程度の介護サービスが必要かを判断するプロセスです。この認定は、先ほど説明した介護認定調査の結果を基に行われます。
認定のプロセスは以下の通りです。
- 本人または家族が市区町村の窓口に申請を行う
- 認定調査員が自宅や施設を訪問し、調査を実施
- 主治医の意見書を取得
- 調査結果と主治医の意見書を基に、介護認定審査会で審査
- 審査結果に基づき、市区町村が要介護度を決定
- 要介護認定の結果は、「非該当(自立)」「要支援1・2」「要介護1〜5」の8段階に分類されます。この認定結果によって、利用できる介護サービスの種類や量が決まります
認定の有効期間は原則として12カ月ですが、状態に応じて3〜24カ月の範囲で設定されることもあります。また、有効期間が終了する前に更新の手続きを行う必要があります。
要介護度
要介護度は、介護の必要性の程度を表す指標です。先ほど触れたように、「非該当(自立)」「要支援1・2」「要介護1〜5」の8段階に分かれています。それぞれの段階について、簡単に説明しましょう。
非該当(自立)
日常生活は自立しており、介護保険サービスの対象外です。
要支援1
日常生活に少し支援が必要ですが、介護予防サービスで自立した生活の維持が可能です。
要支援2
要支援1よりも支援の必要性が高く、より手厚い介護予防サービスが必要です。
要介護1
日常生活に部分的な介護が必要です。例えば、入浴や着替えの一部に介助が必要な状態です。
要介護2
要介護1よりも介護の必要性が高く、日常生活の多くの場面で介助が必要です。
要介護3
日常生活のほとんどに介護が必要で、自力での移動が困難な状態です。
要介護4
日常生活全般に介護が必要で、自力での移動はほぼ不可能です。
要介護5
最も介護の必要性が高く、寝たきりに近い状態で、日常生活のすべてに介護が必要です。
要介護度が上がるほど、利用できる介護サービスの種類や量が増えます。ただし、介護保険制度の目的は自立支援にあるため、過剰なサービス利用は避け、適切な介護と自立支援のバランスを取ることが重要です。
要介護認定やその申請方法などは、こちらもチェックしてみてください。
要支援と要介護で利用できる介護保険サービス
要支援・要介護の認定を受けた方が利用できる介護保険サービスは、その必要度に応じて異なります。ここでは、それぞれの区分で利用できる主なサービスについて説明します。
介護予防サービス
介護予防サービスは、要支援1・2と認定された方を対象に、心身の機能低下を予防し、自立した日常生活を送れるようサポートするサービスです。主に自宅で生活しながら利用するサービスで、専門職による支援を受けられます。例えば、理学療法士による運動指導や、栄養士による食事指導などがあります。これらのサービスを通じて、高齢者の方々が自立した生活を維持し、要介護状態への進行を防ぐことを目指しています。
要支援1・2の方を対象にしたサービス
地域密着型介護予防サービス
地域密着型介護予防サービスは、住み慣れた地域での生活を継続できるよう支援するサービスです。小規模な通所介護施設での運動や趣味活動、認知症予防プログラムなどが含まれます。これらのサービスは、地域の特性に合わせて提供され、高齢者の社会参加や交流を促進し、心身の機能低下を予防する役割を果たしています。
介護予防・生活支援サービス事業
介護予防・生活支援サービス事業は、事業対象者(基本チェックリストで支援が必要と判断された方)も対象としています。この事業では、地域の実情に応じて、ボランティアや民間企業など多様な主体が参加し、介護予防や日常生活の支援を行います。例えば、体操教室や配食サービス、買い物支援などがあり、高齢者の自立した生活を地域全体で支える仕組みとなっています。
その他のサービス例
一般介護予防事業
一般介護予防事業は、65歳以上のすべての高齢者と、その支援のための活動に関わる人を対象とした事業です。介護認定の有無に関わらず利用でき、介護予防に関する知識の普及や、地域における自主的な介護予防活動の育成・支援を目的としています。具体的には、介護予防教室の開催、地域サロンの運営支援、介護予防ボランティアの養成などが行われます。この事業を通じて、地域全体で介護予防の意識を高め、健康的な高齢社会の実現を目指しています。
施設介護サービス
施設介護サービスは、要介護1~5と認定された方を対象に、24時間体制で介護を提供する入所型のサービスです。主な施設には、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設があります。これらの施設では、食事、入浴、排せつなどの日常生活全般の介護に加え、機能訓練や療養上の世話が提供されます。自宅での生活が困難な高齢者に対し、専門的なケアと安全な生活環境を提供する重要な役割を果たしています。
施設介護サービスの選び方やできる介護サービスの種類と特徴などについては、こちらもチェックしてみてください。
居宅サービス
居宅サービスは、要介護1~5と認定された方が自宅で生活しながら利用できるサービスです。訪問介護(ホームヘルプ)、訪問看護、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)などが含まれます。これらのサービスは、高齢者の日常生活を支援し、家族の介護負担を軽減する役割を果たします。利用者のニーズに合わせて複数のサービスを組み合わせることで、自宅での生活を可能な限り継続できるよう支援しています。
デイサービスについては、こちらもチェックしてみてください。
地域密着型サービス
地域密着型サービスは、要介護1~5の方を対象に、住み慣れた地域での生活を継続できるよう支援するサービスです。小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などがあります。これらのサービスは、利用者の住む市町村内でのみ提供され、地域の特性に応じたきめ細かなケアを行います。高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう支援する「地域包括ケアシステム」の重要な要素となっています。
介護保険サービスの選び方や種類、特徴などについては、こちらもチェックしてみてください。
介護認定の判断基準
介護認定の判断基準は、主に二つの要素から成り立っています。一つは介護認定調査の結果、もう一つは主治医の意見書です。これらの情報を基に、コンピュータによる一次判定が行われ、その後、保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会で二次判定が行われます。判断基準には、日常生活動作(ADL)の自立度、認知症の程度、医療・看護の必要性などが含まれ、これらを総合的に評価して要介護度が決定されます。この基準は全国共通であり、公平性と客観性の確保を目指しています。
チェックシート
介護認定調査で使用されるチェックシートは、74項目から構成されています。これらの項目は、申請者の心身の状態や日常生活の様子を詳細に把握するために設計されています。主な項目は以下の通りです。
身体機能・起居動作に関する項目(13項目)
例:寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、歩行、立位保持など
生活機能に関する項目(12項目)
例:移乗、移動、えん下、食事摂取、排尿、排便など
認知機能に関する項目(9項目)
例:短期記憶、日常の意思決定、自分の名前の理解、今の季節の理解など
精神・行動障害に関する項目(15項目)
例:ひどい物忘れ、幻視・幻聴、昼夜逆転、暴言暴行、介護への抵抗など
社会生活への適応に関する項目(6項目)
例:薬の内服、金銭の管理、日常の意思決定など
特別な医療に関する項目(12項目)
例:点滴の管理、中心静脈栄養、透析、ストーマの処置など
日常生活自立度に関する項目(2項目)
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)、認知症高齢者の日常生活自立度など
過去14日間に受けた特別な医療の有無(5項目)
これらの項目を通じて、申請者の状態を多角的に評価し、適切な要介護度の判定につなげています。
もし結果に不服があったときは
介護認定の結果に不服がある場合、申請者には不服申立ての権利が保障されています。具体的には、認定結果の通知を受けてから3カ月以内に、市区町村の介護保険担当窓口に「審査請求」を行うことができます。審査請求では、第三者機関である介護保険審査会が再度審査を行い、結果を判断します。この過程で、申請者は自身の状況について詳しく説明する機会が与えられます。
知っておきたい介護認定調査の知識
介護認定調査について知っておくべき重要なポイントがいくつかあります。まず、調査は訪問調査員が行いますが、家族や介護サービス提供者も同席できます。また、調査時の状態だけでなく、普段の状態も考慮されます。調査員は中立的な立場で調査を行い、申請者の状態を正確に把握することが求められます。さらに、調査結果は開示請求することができ、自身の状態がどのように評価されたかを確認することができます。
何年ごとに調査するのか
介護認定の有効期間は原則として12カ月です。ただし、状態に応じて3〜24カ月の範囲で設定されることもあります。有効期間が終了する前に更新の手続きを行う必要があり、その際に再度調査が行われます。また、心身の状態が大きく変化した場合は、有効期間内でも「区分変更申請」を行うことで、新たな調査を受けることができます。定期的な調査により、適切な介護サービスの提供を継続的に行うことが可能となります。
調査のときにお茶を出すべきか
介護認定調査の際、認定調査員にお茶を出すべきかどうかを悩んでしまう方がいます。これは個人の判断に委ねられますが、基本的には不要です。調査員は公務として訪問しており、中立的な立場で調査を行う必要があります。お茶を出すことで調査員に気を遣わせたり、調査の進行を妨げたりする可能性もありますので、それよりも調査にスムーズに協力し、普段の生活状況を正確に伝えることに集中することが大切です。調査員との関係は、礼儀正しく、かつ公平な立場を保つことが望ましいでしょう。
要介護度を悪化させないためにできること
要介護度の悪化を防ぐためには、日常生活の中でできる取り組みがいくつかあります。まず、規則正しい生活リズムを保ち、バランスの良い食事と適度な運動を心がけることが重要です。また、趣味や社会活動を通じて、心身の活性化を図ることも効果的です。介護サービスを利用している場合は、リハビリテーションなどのプログラムに積極的に参加し、専門家のアドバイスを生活に取り入れることで、自立した生活の維持につながります。家族や周囲の支援も大切で、コミュニケーションを大切にし、必要に応じて適切な介護を受けることが、要介護度を高めないことに役立ちます。
まずは、日頃からできる範囲の心がけで悪化の防止に努めましょう。
ウェルビオでは、介護予防や健康維持のお悩みに対するアドバイスを行っています。わからないことや不安なことがあったときは、ぜひお気軽にお問い合わせください。