介護が必要になるきっかけとは
きっかけは、突然始まる場合と、生活機能の低下がゆるやかに進行する場合とがあります。脳梗塞のような脳血管疾患は、ある日突然始まる介護のきっかけの一つ。しかし、その他は関節疾患や認知症、高齢による衰弱など、不活発な生活による生活機能の低下が原因によるものがほとんどで、ゆるやかに進行します。


認知症
認知症は、介護が必要となる主要な原因の一つです。認知症とは、脳の器質的な障害により、記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。代表的な症状には以下のようなものがあります。
記憶障害:新しい出来事を覚えられない
見当識障害:時間や場所がわからなくなる
実行機能障害:計画を立てて実行することが難しくなる
言語障害:言葉の理解や表現が困難になる
認知症の主な原因疾患には、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症などがあります。早期発見・早期治療が重要であり、適切な医療とケアにより、症状の進行を遅らせた事例があります。
フレイル
フレイルは、日本語で「虚弱」を意味し、健康な状態と要介護状態の中間に位置する概念です。加齢に伴い心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が低下した状態を指します。フレイルの特徴には以下のようなものがあります。
身体的フレイル:筋力低下、歩行速度の低下
精神的フレイル:認知機能の低下、うつ傾向
社会的フレイル:閉じこもり、社会参加の減少
フレイルは可逆的な状態であり、適切な介入により健康な状態に戻すことができます。予防や改善には、適度な運動、バランスの取れた栄養摂取、社会参加が重要です。
図で見るとわかりやすい介護の流れ
介護サービスを受けるまでの流れを図で示すと、以下のようになります。


この流れは一般的なものですが、個々の状況によって多少の違いがある場合もあります。
介護保険申請とは
介護保険申請は、介護サービスを受けるために必要な最初のステップです。これは、介護が必要な状態であることを公的に認定してもらい、介護保険制度のサービスを利用する権利を得るための手続きです。申請の主な流れは以下の通りです。
- 申請書類の準備:介護保険申請書、被保険者証など
- 市区町村の窓口に申請書類を提出
- 認定調査員による訪問調査
- 主治医意見書の作成
- 介護認定審査会による審査
- 要介護度の決定と通知
介護保険申請の詳しい情報については、こちらもチェックしてみてください。
申請できる人
介護保険の申請ができるのは、原則として65歳以上の方です。ただし、40歳から64歳の方でも、特定疾病(がんや脳血管疾患など)により介護が必要になった場合は申請が可能です。また、本人だけでなく、家族や成年後見人、地域包括支援センターの職員なども、本人の同意があれば申請を代行することができます。
申請のタイミング
介護保険の申請は、介護が必要だと感じた時点で行うことができます。具体的には、日常生活に支障が出始めたとき、病気やけがの回復期に在宅での介護が必要になったとき、認知症の症状が現れ始めたときなどが適切なタイミングです。早めの申請が望ましく、これらの症状が気になったらかかりつけ医などに相談しましょう。
どこに相談する?
介護保険の申請や介護サービスについての相談は、主に以下の窓口で受け付けています。
- 市区町村の介護保険担当窓口
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業所(ケアマネジャーがいる事業所)
特に地域包括支援センターは、介護に関する総合的な相談窓口として、専門的なアドバイスを提供しています。まずはお住まいの地域の窓口に相談してみることをおすすめします。
要介護認定とは
要介護認定は、介護保険制度において、申請者の介護の必要度を判定するプロセスです。この認定により、介護サービスを受けられる範囲や利用限度額が決まります。要介護認定の流れは、こちらもチェックしてみてください。
要介護認定が下りるまで
要介護認定の申請から結果が通知されるまでには、通常1~2カ月程度かかります。この間、認定調査や主治医意見書の作成、審査会での判定などの手続きが行われます。急を要する場合は、暫定的なサービス利用が可能な場合もありますので、市区町村の窓口に相談することをおすすめします。
介護認定証が届いたら
介護認定証(介護保険被保険者証)が届いたら、まずその内容を確認しましょう。認定証には、要介護度や認定の有効期間が記載されています。次のステップとして、ケアマネジャーを選び、ケアプランの作成を依頼します。ケアプランに基づいて、具体的な介護サービスの利用を開始することができます。
成年後見制度とは
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方を法律的に保護し、支援する制度です。主に以下の3つのタイプがあります。
- 法定後見制度:すでに判断能力が不十分な方のための制度
- 任意後見制度:将来の判断能力低下に備えて事前に契約を結ぶ制度
- 補助・保佐:判断能力が不十分ではあるが、完全に失われていない方のための制度
成年後見人は、本人の財産管理や契約行為を代行し、本人の権利を守ります。介護サービスの契約や施設入所の手続きなども、成年後見人が行うことができます。成年後見制度については、こちらもチェックしてみてください。
ケアプランとは
ケアプランは、介護を必要とする人が自立した日常生活を送れるよう、介護サービスの利用計画を立てたものです。要介護者の状態や希望に応じて、適切なサービスを組み合わせて作成します。ケアプランには主に以下の内容が含まれます。
- 利用者の心身の状況や生活環境
- 介護に関する短期・長期目標
- 具体的なサービス内容と頻度
- サービス提供事業者の情報
ケアプランは定期的に見直され、必要に応じて修正されます。利用者の状態の変化や希望に柔軟に対応することが重要です。
ケアマネジャーの存在
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護者やその家族の相談に応じ、適切な介護サービスを利用できるよう支援する専門職です。主な役割には、ケアプランの作成、サービス事業者との連絡調整、介護保険制度に関する情報提供などがあります。ケアマネジャーは、利用者の生活の質を向上させるために重要な役割を果たしています。
ケアマネジャーについては、こちらもチェックしてみてください。
介護保険サービスとは
介護保険サービスは、要介護認定を受けた方が利用できる公的なサービスです。利用者は原則として費用の1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)を負担し、残りは介護保険から給付されます。サービスは大きく分けて、在宅介護サービスと施設介護サービスがあります。
在宅介護サービス
在宅介護サービスは、自宅で生活しながら利用できるサービスです。主なものには、訪問介護(ホームヘルプ)、訪問看護、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)などがあります。これらのサービスを組み合わせることで、自宅での生活を継続しながら必要な介護を受けることができます。
施設介護サービス
施設介護サービスは、介護施設に入所して受けるサービスです。主な施設には、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設があります。それぞれ、入所者の状態や目的に応じて選択します。施設では24時間体制で介護や医療のケアを受けることができますが、入所には一定の条件があります。
介護保険サービスについては、こちらもチェックしてみてください。
SOMPOケアの在宅介護サービス、施設介護サービスについて、知りたい方はこちらをチェックしてみてください。
介護生活でよくあるトラブル
介護生活では様々なトラブルが発生する可能性があります。以下に代表的なものをいくつか紹介します。
介護疲れ
介護者の身体的・精神的負担が大きくなり、疲労が蓄積することがあります。定期的な休息や介護の分担、レスパイトケアの利用などが対策として挙げられます。
経済的負担
介護にかかる費用が予想以上に高額になることがあります。介護保険サービスの適切な利用や各種助成制度の活用が重要です。
家族間の意見の相違
介護の方針や負担の分担について、家族間で意見が対立することがあります。定期的な話し合いや第三者(ケアマネジャーなど)の介入が解決の糸口になることがあります。
介護サービスへの不満
提供されるサービスの質や量に不満を感じることがあります。ケアマネジャーや事業所との率直な話し合いが大切です。
認知症に伴う問題行動
徘徊や妄想などの行動に対応に苦慮することがあります。専門医への相談や適切な環境整備が必要です。
これらのトラブルに直面した際は、一人で抱え込まず、ケアマネジャーや地域包括支援センター、医療機関などに相談することが重要です。また、介護者自身のケアも忘れずに行うことが、長期的な介護生活を続ける上で大切です。まずは、身近なサービスを頼ることからスタートしましょう。
介護は、ときに予想外の困難に直面することもあります。一人で抱え込みがちな悩みや不安を、誰かと共有してみませんか? ウェルビオでは、介護予防や健康維持のお悩みに対するアドバイスを行っています。わからないことや不安なことがあったときは、ぜひお気軽にお問い合わせください。