数は少ないが2人で入れる居室もある
両親揃って有料老人ホームに入居する場合、2通りの選択肢があります。1つはそれぞれが個室に入る方法。もう1つは、夫婦で過ごせる2人部屋に入る方法です。公的な特別養護老人ホームでは夫婦で入れる個室を見つけることは難しいですが、有料老人ホームであれば2人部屋を用意しているところもあります。料金的にも、1人部屋を2室借りるよりも、2人部屋を1室借りるほうが割安です。
ただし、2人部屋はもともとの数が少ないので、空室があってもすぐに埋まってしまうことが多いようです。
2人部屋が良いとは限らない
両親が2人部屋に入るときは注意が必要です。
2人部屋でも、1LD(キッチン付きなら1LK)くらいのコンパクトな空間だと思います。入居後、「四六時中、顔を突き合わせることになり息が詰まる」という不満の声を聞くことがあります。
ある夫婦のケースでは、在宅で妻が夫を介護していました。介護疲れによる共倒れを心配し、夫婦で介護付き有料老人ホームの2人部屋に入居しました。妻は「これで介護から解放される」と考えましたが、現実はそうではありませんでした。24時間体制の介護と言っても、居室にスタッフが常駐しているわけではありません。夫はトイレの度に妻に介助を求めます。呼べば施設のスタッフは来てくれますが、度々は呼びづらく結局妻が介助を行うことに。しかも、妻が共用スペースに行こうとすると夫は不機嫌になるため居室を出ていくこともできません。さらに、「入居者の多くは、要介護度の重い方なので友達ができない」とため息……。妻は入居したことを後悔していました。
2人部屋に入居するメリットとデメリット
両親揃って2人部屋に入居することは、メリットとデメリットを理解したうえで慎重に検討する必要があります。
メリット
- すぐそばにいられる安心感
- 個室を2部屋借りるよりも費用的に割安
デメリット
- 夫婦部屋のある施設が少ないため、選択肢が狭まる
- 元気な親が、要介護の親の世話を続けることになるかもしれない
- 元気な親が、馴染めない可能性がある
もちろん、すべてのケースに当てはまるわけではなく、快適に2人部屋を利用するケースも多いと思います。しかし、後から後悔しないように、入居後の生活を両親にあてはめてシミュレーションしてみることが大切です。
「介護の必要な親だけ入居」も選択肢
1人部屋と2人部屋のどちらがいいか、正解はありませんが、両親のどちらかが介護を要する場合、その親だけ施設に入居してもらうのも選択肢です。自宅に残る親が面会に行きやすい立地を選べば、引き離すことにもなりません。
恐らく、元気な方の親は「お父さんだけ(お母さんだけ)施設に入ってもらいたい」とは、追い出すようで言い出しにくいと思います。施設入居を検討する際には、介護する側の親の本音も確認し、じっくり考えたいものです。
入居後の生活については、施設介護に詳しい窓口で相談してみるのも良いでしょう。専門家のアドバイスを受けることで、より安心できる選択ができるはずです。