親の希望と子の希望は異なることが多い
親の施設入居を検討するとき、その立地は大きな問題です。特に、親と子が遠居している場合は、親の自宅の近くか、子の自宅の近くか、難しい選択になりますよね。
もしきょうだいなど子が複数いて、住んでいる場所が異なる場合はなおさらです。例えば、親は愛知在住、長男は東京在住、長女は大阪在住の場合、子の近辺といっても、東京と大阪で迷うことになるでしょう。
また、施設の立地は、親の希望と子の希望が異なることが少なくありません。あなたの立場からすると、自分の自宅の近くであれば何かのときにはすぐに駆け付けることができるし、「親は自分のそばにいたいだろう」と思うかもしれません。
しかし、親の気持ちはそうとも限らないのです。子の自宅の近くは暮らしたことのない土地であり、方言や食事の味付けも異なるでしょう。親しい友人やかかりつけ医師、ケアマネジャーともお別れとなります。つまり、親にとって慣れない土地での生活は、想像以上に不安なものなのです。地元に馴染んでいる親ほど、「行きたくない」と考えることは、無理もないこととも言えます。
施設によっては親の自宅近くの方が入居しやすい
高齢者施設のなかには、その地域に住民票のある人のみ受け入れる施設があります。
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 地域密着型介護老人福祉施設(小規模な特別養護老人ホーム)
- 小規模多機能居宅介護施設
子の自宅の近くにあるこれらの施設への入居を検討した場合、「一定期間、住民票をこちらに置いてから申し込んでください」と言われます。また、一般的な特別養護老人ホームは全国どこでも申し込めますが、住民登録している人を優先して入居させているところもあります。
メリット・デメリットをよく考えて検討
とはいっても、様々な事情で、「自分の自宅の近くで」と考えることもあるでしょう。
例えば、こんな人がいました。親の自宅近所の施設に入居したものの、入居後に、誤嚥性肺炎で度々入院することに。その度に駆け付けなければならず、負担過多となり、子の自宅の近所の施設に移動してもらいました。移動時は、親の心身が弱っており、寝た体制のままで乗れる介護タクシーを利用したそうですが、「心身への負担は大きかったと思う」とのことでした。
高齢者施設の立地によるメリット・デメリット
親の自宅の近く
〇 親にとって馴染みやすい(方言、味付け、風景など)
〇 介護保険で入る施設は 優先順位が高い
× 子が通うのに負担(特に入退院時など)
子の自宅の近く
〇 子は通いやすい
× 親にとって環境の変化が大きい
△ 子が複数の場合、誰の近くかもポイント
入居後の状況は変化するものであり、先読みすることがむずかしいものです。
正解はありませんので、それぞれのケースでメリットとデメリットをよく検討し、家族みんなで話し合って、納得のいく結論を出せるようにしましょう。