離職しても状況は好転せずストレスが増すことも
ニュースなどで、家族の介護のために仕事を辞める「介護離職」の話を見聞きすることがあると思います。総務省の2022年調査によると、「介護・看護のため」に離職した人は年間10万6千人も。いつか、「自分もそうなるのでは」と不安になる気持ちはとても理解できます。
しかし、仕事を辞めてしまうと、経済的に困窮する可能性も出てきます。さらに、介護に専念しても、親の心身の状況が必ずしも好転するとは限りません。むしろ、介護にすべてを注ぎ込むことで、毎日が介護一色になると子のストレスは増し、「経済的」にはもちろん、「精神的」、「肉体的」にも負担が増加するという調査報告もあります。


(令和5年度厚生労働省委託調査,三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
辞めないために大切なことは「今からの決意」
「そうは言っても、介護離職している人が10万人もいる」という声が聞こえてきそうです。しかし、その数十倍の人が離職していないのも事実です。介護のために仕事を辞める人は多いですが、辞めないで仕事と介護を両立している人もたくさんいます。
仕事と介護を両立させたいと考えるなら、親が元気なうちから、「もし、親が要介護になっても自分の生活スタイルは大きくは変えない」と決意しておくことが大切だと思います。できれば、そのことは親にも伝えておきましょう。そうすれば、親も「介護が必要になったらサービスを利用する」という気持ちの準備ができます。
実際に介護が必要になったときは、ケアマネジャーという介護の専門家に、どのようなサービスをどれくらい利用するかという計画書「ケアプラン」を作成してもらうことになります。そのときに、「仕事は辞めません」「親の介護のために、親の家に通ってこられるのは月に〇回ほどです」とはっきりと自分の事情を伝えましょう。そうすれば、あなたの事情を勘案したプランを作成してくれます。「もっと世話をしてください」とか、「あなたの家族なのですよ」などと言われることはありません。「介護離職する」という選択肢をなくしておくことで、親の介護はその方向で進んでいくことになります。
もちろん、一時的に傍にいてあげなければ介護がうまくまわらないような期間もあるかもしれません。そんなときは、職場にある介護休業制度を上手に活用することで、乗り切ることができるはずです。
介護休業制度については、こちらもチェックしてみてください。