「同居」には様々なハードルがある
親に介護が必要になり、「同居しなければ!」と慌てる方から相談を受けることがよくあります。けれども、ずっと別居してきた親子が同居するのは、そんなに簡単なことではありません。
仕事や家庭の事情により子が実家に戻る「Uターン」は、難しい場合が多いです 。そうなると、親に子の家に来てもらう「呼び寄せ」が第一候補となりますが、親の部屋を用意することが難しかったり、配偶者など同居している家族から反対意見が出たりすることもあるかもしれません。
そもそも、親に提案しても「住み慣れた家を離れるつもりはない」と一蹴されるケースが多いのです。引っ越してしまえば 友人や知人とも別れることになり、新たに医師やケアマネジャーを探して関係構築することが必要となります。その上、子が仕事で忙しい場合、同居しても日中は親1人となり、かえって孤独を感じてしまうケースもあります。
遠距離介護のメリット・デメリット
このように同居が難しい場合は、子が定期的に実家へ通う「遠距離介護」という方法もあります。遠距離介護の場合、移動に時間とお金がかかるというデメリットがあるのですが、実家に行かないときは自分の生活に集中できるというメリットもあります。また、頻繁に会わないことで、親子ともに相手に優しく接することができる傾向があります。
さらに、高齢者だけの世帯だと、介護保険や自治体のサービスを使いやすいのもメリットです。メニューは自治体ごとに異なりますが、高齢者世帯向けに、緊急時に通報できる緊急通報システムや、食事の宅配サービスなどを用意する自治体も多くあります。
緊急通報システムについては、こちらもチェックしてみてください。
介護保険にも、高齢者世帯に有利なサービスがあります。ホームヘルプサービスには、料理や洗濯、掃除などをサポートしてもらえる「生活援助」があって、通常は高齢者世帯の場合に利用可能です(現役世代の子と同居している場合はたいてい利用不可)。
将来的に、費用の安い特別養護老人ホームへの入居を検討している場合も、遠距離介護がベター。高齢者世帯は、特別養護老人ホームへの入居の優先順位が高くなることが一般的だからです。
遠距離介護のメリット
距離があるので気持ちを切り替えやすい
- 仕事に専念しやすい。
- 親子、互いにやさしくできる。
- 腹が立っても気持ちをリセットできる。
サービスを利用しやすい
- 自治体には高齢者世帯向けサービスがある。
- 介護保険のホームヘルプサービスで生活援助も利用可能。
- 特別養護老人ホームへの入居の優先順位は高い。
遠距離介護のデメリット
移動に時間とお金がかかる
このように、遠距離介護は同居よりも大変な面もある一方、メリットもあります。介護保険サービスや自治体サービス、民間サービスも利用すれば、別居のままで遠距離介護をすることもできるので、親の状況や家庭の事情に合わせて、より良い方法を検討しましょう。