専門家によるドライブコラム

車内の子どもの安全(3) -装着する時のポイント

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ユニバーサルタイプ(シートベルトで固定するタイプ)について話しましょう。日本の事故統計によれば、交通事故の重傷・死亡者の約80%は、首から上の「頚部・顔面・頭部」が車内の構造物と激突することで被害が発生しています。子供の場合は頭部が重く、首そのものがまだ弱いため、その危険性はさらに増します。衝突時に車内の構造物とぶつからないよう、しっかりと拘束することがなによりも大切です。

乳児用シート(後ろ向き)では事故の際に乳児は背中で衝撃を分散してリスクを低減します。乳児の脳はお豆腐のように柔らかく、頭蓋骨もまだ完全には形成されていないのでダメージを受けやすく、1歳半頃まではちょっとした衝突でも脳挫傷を起こしやすいと言われています。また乳児は、大人を小さくしたのとは異なり骨格やそれを支える筋肉も未発達なので、衝撃からハーネスで体を拘束することが難しくなります。そこで「後ろ向きのチャイルドシート」が考えられました。

これはアメリカで宇宙飛行士が着陸時に背面で衝撃を分散させていることにヒントを得て考案されたもので、衝突時の頭を揺すらないよう衝撃を背中の広い面で衝撃を受け止めるのです。首がすわっていない乳児は自分の頭の重さを支えることが難しいため、呼吸も楽にでき、衝突時の衝撃も受け止められるよう「45度の背もたれ角度」で取り付けをします。エアバッグのついている座席(助手席)では絶対に使用しないでください。また横向きベッド型もありますが、事故時には横からの衝撃も受けやすいので、背面拘束の確実性からみても「後ろ向き」の方が安全性は高くなると言えます。

乳児用(後ろ向き)のミスユースとチェックポイント

チャイルドシートの使用状況を調査するといくつかのミスユースが見られます。例えば台座固定ベルトの締め付け不足はなんと68.3%にも及びます。チャイルドシートがグラつかなくなるまでシートベルトの緩みを取ります。乳・幼児兼用タイプは、乳児期の後向きと幼児期の前向きがあり、それぞれベルトガイドの位置が異なるので注意が必要です。

次に気になるミスユースはお子さんの体を拘束するチャイルドシートのハーネスの締め付け不足が56.2%と少なくありません。せっかくチャイルドシートを使っていても、体を拘束するハーネスが緩んでいては事故のときには乳児の柔らかい身体はハーネスからすり抜けてしまいます。お子さんと肩のハーネスの間に大人の指が1~2本入る程度までシッカリと締めましょう。

三つ目に多い問題はハーネスの高さ調整不足で20.2%あります。後向きシートの場合はお子さんの肩と同じか少し低めのスロットに調整します。

背もたれ角度の調整ミスは5.9%と少ないですが、呼吸を妨げないよう背もたれが45度に保たれているかは重要なチェックポイントです。台座を固定せずシートベルトをチャイルドシート背面に通すタイプは、シートベルトの固定機能(ALR)に切り替わっていないか確認ください。ALR機能を作用させると、走行中の振動などでシートベルトが巻戻ることにより、チャイルドシートの背もたれが徐々に立ち上がってしまうことがあります。(平成21年全国調査より)

幼児用シート(前向き)のミスユース

幼児期ともなるとそろそろ自意識が芽生え活動的になり、長時間シートに座っているのが難しくなる年頃です。ともすれば大人も根負けしてチャイルドシートに座らせるのが面倒になることもありますが、事故は何時、何処で遭遇するかわかりません。また、習慣づけられた子供が自分から進んでチャイルドシートに乗るようになるのもこの時期です。泣く前に休憩をとり、チャイルドシートから降ろして休ませてあげるのもチャイルドシートを嫌がらないようにする秘訣です。

車への取り付けでは、腰ベルトの締め付け不足が60.7%と最も多いミスです。お子さんの体重も増えてシートも重くなっているため、事故の時に衝撃で移動しないよう車にしっかりと固定します。確実に固定するコツは自分の体重を利用すると、女性でも確実に固定できます。シートベルトをバックルにとめたら、チャイルドシート座面にヒザで乗り全体に体重をかけクルマのシートの沈み込みを利用してシートベルトの肩ベルト側を、思いっきり締め上げながら固定していきます。そしてシッカリと固定されているかチャイルドシートの上端部を前方向に思いっきり引っ張り、座席の背もたれから3cm以上のグラつきがないか確認しておきましょう。

次に多いミスはシートベルトの通しで18.1%。シートベルトがベルトガイドに正しく通されているか確認しましょう。乳・幼児兼用タイプは後向きと前向き取付けではベルトのガイドが異なります。切り替え時に混乱しないよう取扱説明書は必ず保管しておきましょう。

着座状況のミスユース

お子さんがチャイルドシートに座るときのミスではハーネスの締め付け不足が60.3%と多いです。幼児期はチャイルドシートに座っていても自分で肩をハーネスから抜いてしまうケースが多く定期的にハーネスの緩みをチェックしましょう。座らせる時はシート座面の奥にお尻が納まるように着座させ、子どもの身体と肩ハーネスの間に大人の指が1~2本やっと入る程度にまでハーネスを締めましょう。

ハーネスの高さ不調整は15.4%。前向き幼児用シートの場合は、乳児用とは異なり、子どもの肩と同じか少し高めのスロットに調整します。

体格不適合は6.6%です。乳児・幼児兼用タイプは首がすわり、自分でお座りできるようになる1歳すぎから前向きの幼児用シートとして使用します。その他の注意点としては衝突時に前席とぶつからないようにするために、前席との間を充分に空けておきます。

ドライブ専門家一覧

※上記の専門家コラムに関するご質問、お問合せは、原則受付けておりませんのであらかじめご了承ください。

コラムニスト 鹿口恵子

車内でお子様の安全を守るアドバイスをいたします。

女性または母親としての視点から車社会を見つめ『妊婦のシートべルト着用』『車内における子供の安全』『乳幼児の救急救命』『ドライバーの救急救命』と、お母さんのお腹のなかにいるときから大人の安全までアドバイスをおこないます。

【資格】 財団法人 日本交通安全普及協会 チャイルドシート認定指導員 東京都消防庁認定 応急手当普及員ファーストエイド・インストラクター など
【メディア】 「ホリデーオート」「Fase」などコラム連載多数。

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