著者
波頭 亮(はとう りょう)
経営コンサルタント。1957年、愛媛県生まれ。東京大学経済学部(マクロ経済理論及び経営戦略論専攻)を卒業後、マッキンゼー&カンパニー入社。1988年独立、経営コンサルティング会社(株)XEEDを設立。
幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍する一方、明快で斬新なビジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。
【要点1】
BIは、格差・貧困問題の解決策として前向きに検討すべきである。
【要点2】
導入の懸念点である「フリーライダー」や「財源確保」といった問題も解決可能だ。
【要点3】
AIが生産活動のほとんどを担う時代においては、「再分配」が重要となる。再分配施策のなかで、最も民主主義的で経済合理性があるのがBIである。
【要点4】
BIの導入によって、人々は「生きるための労働」から解放され、純粋に豊かさを求める活動に従事できるようになる。
レビュー
未来を左右する2大キーワード、AI(人工知能)とBI(ベーシック・インカム)。両者がどのように関連し合い、人間の生き方、経済・社会構造を変革していくのか。その壮大な見取り図を、ここまで鮮やかに描き出した一級の書に出合えたことに、ただただ幸運を感じる。
もしもAIが人間の知識・頭脳労働を圧倒的に凌駕し、ほぼすべての生産活動を担うようになったら? そのとき、大多数の人間はやることがなくなり、所得を失う。さらには、AIを所有する資本家だけが富を独占し、社会を支配する――。こんなディストピアのシナリオを避けるために、救世主的な存在となるのがBIだという。BIには社会保障政策、景気政策としても大きなメリットがある。しかし、財源はどこに求められるのか。フリーライダーが増えるのではないか。こうした懸念点をどう解決していくかについても、著者は明快なロジックと根拠を積み上げ、論を展開していく。説得力ある提言には、BIの実現可能性がここまで高いものかと驚かされる。同時に、導入のネックになっている最たるものは、「働かざる者、食うべからず」という、豊かな現代においてもなお人間の心に根づく社会規範ではないかと思わされる。
もはや働く必要がない世界は、本来の自由と心の豊かさを、私たちにもたらしてくれるのか。はたまた、新たな苦難を生むのか――。どんな未来が待つにせよ、ルネサンスに匹敵するインパクトをもった歴史的転換に立ち会えると思うと、心躍らずにいられない。
AIとBIの社会で人間はどう生きるのか。究極のテーマに真正面から向き合った意欲作を読み、新たな世界の地平を駈けていただきたい。
波頭 亮(はとう りょう)
経営コンサルタント。1957年、愛媛県生まれ。東京大学経済学部(マクロ経済理論及び経営戦略論専攻)を卒業後、マッキンゼー&カンパニー入社。1988年独立、経営コンサルティング会社(株)XEEDを設立。
幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍する一方、明快で斬新なビジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。
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