レビュー
著者の中尾隆聖氏は、アニメや声優に詳しくない人でも名前を聞いたことがあるかもしれない。それもそのはず、『それいけ!アンパンマン』のばいきんまん役、『ドラゴンボールZ』のフリーザ役という、2つのご長寿アニメで長年声を務めている業界のレジェンド的存在であるからだ。幼少期にこれらのアニメを観て育ち、その独特な声・セリフの真似をしたこともある方もいらっしゃるのではないだろうか。
そんな中尾氏は、芸能界に足を踏み入れてから声優一筋かと思いきや、キャリアのスタートは児童劇団であり、子ども時代はテレビ番組などにも出演していたという。声の仕事もしていたが、どちらかというと舞台やドラマの仕事をしたいと思っていた時期も長らくあったという。10代のときには、学業の傍ら夜の酒場でギター弾き語りのアルバイトをしたり、新宿二丁目でお店を経営していたりと、なんとも濃い人生を送っている方である。でも、とても楽しそうなのだ。ずっと演じることが好きで、そのまま続けてきたのだということが伝わってくる。
現在は俳優、声優、そして若い世代の声優の養成にも携わっている著者の役者人生と、その経験と絡めて、声優とはどのようなものなのかが、たっぷりと語られている本書。声優という職業に関心がある人にとっては良き入門書、そして声優を目指す人にとっては必読書となるだろう。また、好きなことで身を立てていきたいという人にとっても、本書はひとつの道しるべとなってくれるに違いない。