レビュー
「雑草」に対して、どんなイメージを持っているだろうか。「邪魔者」「生命力が強く図々しく生える草」、それとも「踏まれてもへこたれない不屈の精神」などを想起するだろうか? 雑草には、とにかく「たくましい」という印象を持っている人が多いのではないだろうか。しかし、それはリアルな雑草の姿ではないのだ。
雑草は、じつは植物の世界の中では、生存競争に負けてしまう弱者なのだという。けれど、競争力のある植物たちが集まる森から逃げ出して、道端や畑などの人間がいる場所で居場所を見つけて繁栄している。本書は、種子の発芽、変異体の出現、花の生殖のしくみなどの雑草に特徴的な性質を紹介しながら、雑草がいかにして現在の繁栄を手にしたのかを語る。雑草の真の姿を知ると、道端に生えている雑草が、特別な植物のように思えてくるから不思議である。その草丈にも、生えている場所にも、生き抜くための深い意味があるのだ。
本書は、中高生向けの『植物はなぜ動かないのか?』の続編で、あくまでも植物学の本である。ただし、驚くべきことに、本書はそれだけでは終わらない。著者は雑草の姿から、現代の人間社会を生き抜く知恵をも汲み取ろうとしている。読む人によっては、自己啓発書のようだと感じるかもしれない。しなやかに生きる雑草には、それほど学ぶべきものがあるのだ。植物好きな方だけでなく、組織の中の自分の在り方について悩んでいる方々にも、ぜひ本書を読んでみていただきたい。自分らしい生き方のヒントを、得られるかもしれない。