著者
鈴木 大介(すずき だいすけ)
1973年千葉県生まれ。「犯罪する側の論理」「犯罪現場の貧困問題」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心とした取材活動を続けるルポライター。著書に『家のない少女たち』『援デリの少女たち』『振り込め犯罪結社』 (いずれも宝島社)、『出会い系のシングルマザーたち』 (朝日新聞出版)、『家のない少年たち』 (太田出版)、『最貧困女子』 (幻冬舎新書)など。
【要点1】
詐欺の店舗兼事務所は、徹底的に統制され、そのやり方はテンプレート化されている。加えて、高齢者詐欺に使うための名簿には様々な情報が記載されており、「騙す側」の手口は非常に洗練されている。
【要点2】
詐欺組織は、末端の「集金役」が逮捕されても、資本金を供出する「金主」たちに警察の手が及ぶことがないという組織構造になっている。
【要点3】
現場プレイヤーたちはとびぬけた優秀さと高いモチベーションをもって働いている。彼らは研修によって選別され、そのように育て上げられている。
レビュー
本書は、テレビドラマ『スカム』(2019年6月末より放送。MBS/TBS)の原案にもなっている話題書である。タイトルどおり、現代日本では「老人が喰いものにされている」といえる。詐欺犯罪や悪質商法の被害者の多くが、高齢者なのだ。「加害者は血も涙もないやつらなんだな」「弱者につけこむなんて卑怯だ」と、そんなふうに思うだろうか。その認識をがらりと覆すのが、本書である。
著者は、特殊詐欺犯罪の代表格である「オレオレ詐欺」に手を染める何人もの若者たちと接触し、肉声を拾ってきた。彼らの理屈は、大まかにまとめるとこうなる。「平均して3000万円もの資産を残して死ぬ老人たちは、なぜ金を使わないのか。自分たち若者は、真面目に働いても貧しい。彼らが金を使えば、若い世代にも金が回ってくるのに。そんなケチな老人たちから数百万円奪うのに、罪悪感は感じない」
もちろん詐欺は犯罪である。が、どうだろう。部分的に正論を含むこの理屈を知ると、罪を犯す若者ばかりを責めきれない気持ちがわいてくる。
本書の優れた点のひとつは、詳細なレポートを提示するのみならず、取材した実在の人物をモデルにして、犯人組織のありさま、詐欺店舗の運営や研修のようすを物語仕立てで描いているところだ。そのため、まるで自分もその場にいるかのように明瞭に理解することができる。要約では、詐欺店舗の店長の「毒川(どくがわ)」という男を中心に物語の主だったところを再構成し、適宜挿入した。
著者は本書で「老人喰いはなくならない」と何度も強調する。そのわけは、ぜひ本書を開いて確かめてみてほしい。
鈴木 大介(すずき だいすけ)
1973年千葉県生まれ。「犯罪する側の論理」「犯罪現場の貧困問題」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心とした取材活動を続けるルポライター。著書に『家のない少女たち』『援デリの少女たち』『振り込め犯罪結社』 (いずれも宝島社)、『出会い系のシングルマザーたち』 (朝日新聞出版)、『家のない少年たち』 (太田出版)、『最貧困女子』 (幻冬舎新書)など。
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