著者
楠木 建(くすのき けん)
一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻(ICS)教授。1964年、東京生まれ。89年、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部助教授、同大イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専門は競争戦略。『ストーリーとしての競争戦略』 が20万部超のベストセラーとなる。他の著書に『「好き嫌い」と才能』『好きなようにしてください』『戦略読書日記』 などがある。
【要点1】
世の人々は「良し悪し族」と「好き嫌い族」に分かれる。物事の「良し悪し」は氷山の一角であり、水面下には無数の「好き嫌い」が広がっている。
【要点2】
努力を続けるためには、それを「努力と思わない」状態に持ちこむのが一番である。努力を「娯楽化」すれば、客観的に見たらものすごい努力でも、本人にとってそれは努力ではなくなる。
【要点3】
出過ぎた杭も、杭は杭。他と比べることのできない「余人をもって代えがたい」存在こそが本物のプロである。
レビュー
人は何かを決めたり判断したりするとき、「好き嫌い」と「良し悪し」を同時に考えるのではないだろうか。「好きだけど身体に悪いからやめておく」「嫌だけどやらないと」。誰しもが2つの価値観の間で揺れ、バランスを取りながら生きている。しかし面白いのは、好きや嫌いの後には必ず「でも……」と続くことだ。まるで「好き嫌い<良し悪し」という構図が出来上がっているようだ。
しかし、その良し悪しは本当に「良い」のだろうか? 今、あちこちで頻発している「炎上」や「公開処刑」は、人々の思う「良し悪し(正義感・倫理観)」を基準に、そこから逸脱した者を断罪し祭り上げる偏った現象ではないだろうか。人の好み(好き嫌い)の問題と捉えたら、このような過激なことにはならないはずだ。
著者は、あくまで「個人的な好みの話」と前置きをしながら、多様なエピソードをネタに「好き嫌いで判断してもいいんじゃない?」と投げかける。その内容は「ケーキのイチゴはいつ食べるか」というような身近な話題から、企業改革や資本主義まで幅広い。そしてその一見感覚的な「好き嫌い」の中に、筋の通った理屈が潜んでいるのだ。
本書は「文春オンライン」の連載に加筆修正を加えた、23のエピソードによって構成されている。一話完結の人気コラムだから、どこからどう読んでも面白い。自由なはずなのに自由でないような、今の社会にそこはかとない窮屈さを感じているならば、ぜひお読みいただきたい。「好き嫌いで生きてもいいんだ」と心が軽くなること請け合いだ。
楠木 建(くすのき けん)
一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻(ICS)教授。1964年、東京生まれ。89年、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部助教授、同大イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専門は競争戦略。『ストーリーとしての競争戦略』 が20万部超のベストセラーとなる。他の著書に『「好き嫌い」と才能』『好きなようにしてください』『戦略読書日記』 などがある。
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