レビュー
フェイクニュースと聞けば、ほとんどの人はねつ造されたニュースや情報を思い浮かべるだろう。そしてそういうものがSNSを通して拡散し、社会に悪影響を及ぼしていると想像するはずだ。
しかし著者によると、フェイクニュースのなかには世論操作のために、組織的に仕掛けられているものも多いという。実際にフェイクニュースを使ったネット世論操作は、世界48カ国でおこなわれている――思わず「本当?」と疑ってしまうような数字ではないだろうか。
著者はあらゆる面からフェイクニュース及びネット世論操作を考察し、豊富な最新事例を取り上げつつ、警鐘を鳴らしている。なかでもフェイクニュースを理解するうえで欠かせない概念として、「ハイブリッド戦」が取り上げられていることに注目したい。本書で紹介されるさまざまな事例を読んでいると、世のなかの変化は想像を超える速さで進んでおり、「民主主義はすでに危機的状況にあるのかもしれない」と思わされること必至だ。
著者は「これからの社会がどのようなものになるかを予想することもできますが、考えなければならないのはどのような社会にすべきかなのだと思います」と述べる。要約では本書の中核に当たる第1章および第2章を中心に取り上げたが、ぜひご自身で本書を手に取って内容を吟味し、将来暮らしたい世界を考える際の助けとしてほしい。