著者
チョ・ナムジュ
1978年ソウル生まれ。「耳をすませば」で文学トンネ小説賞に入賞。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』で第41回今日の作家賞を受賞(2017年)、ミリオンセラーとなる。著書に『彼女の名前は』(小山内園子、すんみ訳)、『サハマンション』(斎藤真理子訳)、『私たちが記したもの』(小山内園子、すんみ訳)いずれも筑摩書房刊、『ミカンの味』(矢島暁子訳、朝日新聞出版)。
【要点1】
女性が人生で経験する、女性であることを理由としたささやかな理不尽を暴いた、韓国の話題作。本国ではベストセラー街道を驀進し、多くの国での翻訳刊行が決定している。
【要点2】
1982年生まれのキム・ジヨン氏は33歳。夫は仕事が忙しく、どちらの実家も頼れないため、一人で子育てを担当している。キム・ジヨン氏は、あるときから、身近な女性が憑依したかのような言動をするという奇妙な症状を発症し、精神科のカウンセリングを受けることになった。キム・ジヨン氏のこれまでの人生が明らかにされる。
レビュー
「社会現象」と呼ばれ、異例の大ヒットとなる作品はときどきある。この小説は、まさにそれだ。書店で平積みされているのを見かけた方も多いかもしれないが、日本で、外国文学、とくにアジア圏の文学がこれほど注目を集める事態は類がない。原書が刊行された韓国では136万部の売れ行きを突破した(ちなみに、韓国の全人口はおよそ5千万人だ)。本作は世界32カ国・地域での翻訳出版も決定し、映画化もされた。
これほど支持を集める理由は、本を開けば明らかである。女として生まれ落ちたキム・ジヨン氏は、一見、それなりに幸せな人生を歩んでいるように見える。けれどそこには、ふつうの日常にうずもれた、小さな理不尽がたくさんある。女性であるということだけを理由にした理不尽が。読者は自分の体験や、言葉にならなかった気持ちを思い出し、怒りに心をざわつかせながら読み進めずにいられなくなる。
昔と比べれば、もちろん女性は生きやすくなった。けれど、進学、就職、結婚、育児といったさまざまなライフステージを見渡してみてほしい。わたしたちの社会には、まだまだ男女が同じようには幸せになれない慣習や構造が残っている。
韓国では、そうしたつらい思いを自分の娘にはさせたくないと考えた父親ら、多くの男性たちも本書を手に取っているという。この本を300冊買って、手紙とともにすべての国会議員に贈った男性国会議員もいるそうだ。次世代がより幸せに生きることができるように、性別にかかわらず、たくさんの方がご一読くださることを心から願う。
※本要約は、過去に作成した要約を最新版に合わせて一部再編集したものです。
チョ・ナムジュ
1978年ソウル生まれ。「耳をすませば」で文学トンネ小説賞に入賞。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』で第41回今日の作家賞を受賞(2017年)、ミリオンセラーとなる。著書に『彼女の名前は』(小山内園子、すんみ訳)、『サハマンション』(斎藤真理子訳)、『私たちが記したもの』(小山内園子、すんみ訳)いずれも筑摩書房刊、『ミカンの味』(矢島暁子訳、朝日新聞出版)。
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